第3話老朽橋渡り
歩き続ける勇者の視界に、とても長いつり橋が入ってきた。
木製なのだが、材料になっている樹木は所々に変色し、
風に叩きつけられると茶色い粉が舞い散っていた。
勇者はこの橋を渡るのは難しいと考えた。
渡りきる自信が無かったし、
今ここで災難に巻き込まれるわけにはいかなかったからだ。
勇者は、少々ためらったが、安全をとり、回り道をすることにした。
しかし、勇者がその場を立ち去ってから数時間後、
細身だが筋肉質の彼よりも、一回り図体のでかい男が、
何のためらいも見せずに、いとも簡単につり橋を渡りきっていった。
後にその事実をジャイコフという名の詩人から聞かされた勇者は、
時には大胆さも必要であることを覚えた。
全てを飲みこまんとする炎の中でも
分厚い炎の壁に取り囲まれた勇者は
生き残る道を必死に探していた
意識が遠のいていくのを感じながらも
心は平静を保つ事だけを考えていた。
生き延びる
危機的状況に陥ったとき
時に人の心は研ぎ澄まされる。
やがて全てを飲み込まんとする炎よりも
今の勇者の魂は熱く、誰にも触れる事などできない。
たとえ今ここで自分の身が滅びようとも
残してきた物が消える事など決してない
急激に迫り来る炎に向かって、勇者は力の限り叫んだ
やがて彼が取ったこの行動が
窮地を乗り切る意志を保ち
自らの命を救う為の平静さを取り戻させるのだった
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