道標は今こそ指し示す


 この『デーヴァ神族』は、あまりに荒ぶる一族で、争いを好んだが、しかし急速に進化発展を始めた。

 そして『消滅』も早かった……


 『与える』ほうの『デーヴァ』、つまり雄は力をなくしていくのである。

 『時』が、『デーヴァ』を許容しないのである。

 『受ける』雌の『デーヴィー』は、許容されたのか、何事もないのだが、『デーヴァ』は減少の一途をたどった。


 ついに『与える』がいなくなり、『デーヴィー』も『受ける』ことができなくなり、『デーヴァ神族』は滅亡した。


 この『人』は、『下天』を乗り越えられる潜在能力を示した、唯一の存在である。

 しかし『時』の影響で、必ず『消滅』することが分かった……


 造化三神は困惑したが、あることに気付いた。


 『デーヴァ神族』の雌体である、『受ける』個体『デーヴィー』は、種族としては存続可能なのである。


 つまり、高度に発展した時点で、雄体は衰退を始めるが、この時点で、雌体だけで子孫を残せれば、もともと大人しく非破壊的な性質である雌体なら、進化は期待できないが存続繁栄はできる……


 苦い失敗の分析を完了して、造化三神は再び『下天』に介入、各地で『人』が発生進化する環境を準備する。

 さらにその中の、最有望な惑星世界に直接介入した。

 それが『アスラ』であった……


 それは順調に発展した……かなりの宇宙を行き来し、造化三神を神と崇め、世界を守護する者との、自覚を持ち始めた……その時である。

 『アスラ』が衰退を始めたのである……


 造化三神はあわてた……そして原因を探した……


「精神の活力が失われている……『受ける』だけでは精神の活力が維持できない……繁栄を望まなくなるのだ……」

「『下天』を超えもせずに、『消滅』を望むとは……」

 いろいろ話し合った結果、『与える』の精神についてだけなら、『時』は許容するらしいと判明した……

 ここで造化三神は愁眉を開いた。

 解決策が初めて見つかったのだ。


 『神』といえども、次の『神』にする、任せる存在を誕生させるには苦労するらしい。

 行く道は明らかになった……道標を今こそ指し示す時かもしれぬ……

 『天之御中主(あめのみなかぬし)』 神はそう決意した。


 造化三神は、ここでさらなる介入に出ることにした……

 神の息子の精神で、神の娘を作るのである……


 『高御産巣日(たかみむすび)』神、『神産巣日(かみむすび)』神、の二柱は『まぐわい』をし、再び融合を実感した。


『神産巣日(かみむすび)』神の、神の体の遺伝子に、『高御産巣日(たかみむすび)』神の、心の遺伝子を生み出した。

 そして再び『分離』した……


 『天之御中主(あめのみなかぬし)』神は、その生まれた娘?の為に、ありとあらゆる手段にうったえ、『下天』に介入した。


 『天之御中主(あめのみなかぬし)』神から見ると、神の娘は、予想以上に成果を上げ始めた。

 ただ不思議なことが起こった。


 『高御産巣日(たかみむすび)』神、『神産巣日(かみむすび)』神の二柱が、この神の娘に対して愛情を示した。

 まるで『人』の世界の父母のような……


 もっとも驚いたことは、自らがこの娘に対して、『親しみ』を持ったことである。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る