第20話【旅路】

今回戻って来たのは子供時代、 婚約者を決める前の段階である。

年齢的に言うと五歳程度である。

こうなると婚約者を決める迄、 何もする事が無い。

何かやる事も無く暇を持て余すピーマンだった。

しかし六歳になる頃には。


「えん・・・ぜつ?」

「えぇ、 そうですピーマン王子」


大臣のチリが説明する。


「我が国では6と言う数字はとても重要な意味を持ちます

6歳になった男児は一人前、 では無いにせよ

自立した男として立たねばなりません」

「・・・・・?」

「分かり難いですかな、 ですが王子は将来国を背負うお方

演説の一つも出来なくてはなりませぬ」

「・・・・・演説って何?」

「演説と言うのは、 平たく言えば大勢の人の前で話す事ですかね」

「何を話すの?」

「こちらの原稿をお読みになって下さい」


そう言って原稿を渡すチリ。


「・・・・・」


原稿を眺めるピーマン、 そしてビリビリに破く。


「あぁ!! 何をなさるのですか王子!!」

「『神と共に歩む』と言う部分が気にくわなかった」

「はぁ!?」

「演説の内容は僕が考える!!」

「・・・・・恥をかいても知りませんからね!!」


チリは怒って立ち去って行った。

国王のナスは『失敗も一つの経験、 恥をかいてなんぼだ』

とこの出来事を見逃した。



そして演説当日。

ピーマンが大勢の民衆に対して演説を行った。


「私は神に祈らない。 神は私達を助けてくれる

だがしかし自分で動かなくては駄目だ、 私は人生でそれを感じた

神に祈るだけでは駄目なのだ、 自分の意志で立ち上がり努力して

始めて神の後押しが活きるのだ、 神に祈らず立ち上がろう、 皆」


たどたどしい言葉だった、 演説としては百点には行かない物だった。

しかしそれでも自分の意志を持って語った言葉だった。

民衆からは拍手が鳴り響いた。





だがしかし。

彼の演説は思わぬ所で思わぬ展開を呼んだ。

ヴィーガン教国の会議室にて重役達が話し合っていた。


「ベジタブル王国のピーマン王子の演説、 アレは神への不敬では無いのかね?」

「如何でしょうか、 我々ヴィーガン教国への牽制の為に

ナス王が言わせたと言う可能性も・・・」

「何れにせよ看過出来ないな・・・ピーマン王子には天の国に旅立って貰おうか」

「はい、 了解しました、 支給刺客を送ります」


【暗殺END】

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