第11話【牛刀を持った女】

「・・・・・」


今度は子供の頃に戻ったピーマン。

一人でテラスに座っていた。


「うーん・・・さっきのは死に際の幻と言う奴だろうか」


夢を見ている時は夢を見ていると分からないが

後になって夢だと分かる物である。

先の出来事が死に際の幻だと分かったピーマン。


「だとすると今回も何とかしなければならない・・・か」


何かの試行錯誤をするべきだと判断したピーマン。


「ん?」


ピーマンは何かに気が付いた、 それは名簿の様な物だった。


「これは・・・」


そこにはミンチの名や他の名も有った。

そうだ、 これは婚約者を決める際の名簿だ。

基本的には王族の婚約者は王や大臣が決めるが本人の意向も聞く事になっている。

意向が100%通る、 と言う事は無いがそれでも言って何かが変わるかもしれない

赤ん坊の頃から戻った時は筋トレ三昧の日々だったので

この事をすっかり失念していた。


「とはいうものの・・・」


ミンチの他にも名を連ねる伯爵や侯爵の令嬢

しかしミンチ以外の名は聞いた事も無い名前だった。


「まぁどんな女でも構わないか、 どうせ婚約破棄するんだし」


そう考えたピーマンはニウ侯爵令嬢と婚約を結ぶ事にしたのだった。




早々に婚約を破棄したかったピーマンだったが、 そもそもニウと接点が無かった。

ミンチとは婚約者だからと何度か茶会を開いたがニウはそんな事をしなかった。

故に話をする事も出来なかった。

婚約を破棄したいと父のナスにピーマンが言っても

「何もしていない落ち度のない令嬢との婚約は破棄出来ない」と拒絶された。

話すら出来ない相手を如何やって好きになれと言うのかと言う問いも

「自分が選んだ婚約者なのに文句を言うな」と返された。




「一体如何すれば良いんだ・・・」


何もせずに学院に入学したピーマン。

そしてカラシナと出会い交流を深め相思相愛になった。

が。


「申し訳ありませんピーマン様、 今後はお付き合いを控えさせて頂きます」

「な、 何故だカラシナ!?」

「実は実家にピーマン様の婚約者のニウ様が苦情が入れて来た様でして・・・」

「苦情だと!?」

「えぇ・・・それで父が私を修道院に入れると・・・」

「何を馬鹿な!! それならば二人で何処かに逃げよう!!」

「いえ・・・逃げられません・・・」


ピーマンの後ろを指差すカラシナ。

ピーマンが振り返るとそこには・・・牛刀を持った女が・・・


「分かりますでしょう? もう私は貴方と別れるしか無いのです・・・」

「くっ・・・脅しか・・・」




その後、 ピーマンはニウと結婚し不幸せに暮らしましたとさ




【死因:老衰】

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