第9話【スピリタス、お前もか】

今回飛ばされたのは入学式から少し過ぎた頃である。

前回は半身不随だったので久々に自由に動く体を満喫した後に

学院の中庭に寝転がって考え事をする。


「・・・・・さて如何するかな・・・」


一人、 策を練るピーマン。


「おい、 コラァスピリタス!! 何だこれァ!!」


怒声が聞こえる。

何かと思い顔を上げるピーマン。


「俺が頼んだのはコロッケパンだぞァ、 これはグラタンパンじゃねァか!!」

「すいません!! コーラ先輩!!」


如何やら先輩が後輩をいびっているらしい。

ガタイの良い男がひょろい男に頭を下げている。


「・・・!!」


閃いたピーマン。

早速行動に移す。


「何をしているんだい?」

「ん? あ!! ピ、 ピーマン王子!!」

「お、 王子!?」


頭を下げる二人。


「良い、 良い、 そんなに畏まらなくても」

「は、 恐縮です」

「それで何をしていたんだい?」

「パンを買って来てくれる様に頼んだら違う物を買って来たので・・・」

「そうか、 そんな下らない事でぎゃーぎゃー言うなみっともない」

「す、 すみません」

「・・・行きたまえ」

「はっ」


ひょろい男とガタイの良い男が立ち去ろうとする。


「あ、 大柄な君、 ちょっと待ちたまえ」

「わ、 私ですか?」

「君だよ、 君、 名前は?」

「す、 スピリタスです」


こうしてスピリタスと交流を持ち仲良くなったピーマン。

スピリタスは男爵の息子で身分も低かったがそんな事は気にせずにピーマンは接した。

無論、 何の打算も無しに交流を持っている訳では無い。

ピーマンに卒業パーティの時に守って貰おうと言う腹積もりなのだ。


だが、 ピーマンに予想もしなかった出来事が起こる。

それはピーマンがカラシナと一緒にお茶を飲んでいる時の事だった。

カラシナが自分が送った物では無いイヤリングを着けていた。


「ん? カラシナ、 そのイヤリングは?」

「これですか? スピリタス様から送られました」


スピリタスにはカラシナの事を紹介してあるので変では無い。

しかしピーマンは何かとんでもない取り返しの付かない事をした気分になった。






そして季節は流れ、 王立学院を卒業する事になったピーマン。

寮の自室で天井に吊り下げられた縄を前にするピーマン。


「・・・・・」


スピリタスとカラシナが交際を始めた事によりピーマンの計画は全て御破算となった。

無理矢理カラシナを手籠めにしようとした際も

スピリタスに殴り飛ばされナスに報告されこっぴどく注意を受けた。

王になる事は難しいと言われた。

しかしピーマンにはそんな事は如何でも良かった。

カラシナの愛を受けられなければ無意味である。


ピーマンは縄に首をかけた。


【死因:自殺】

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