第3話
「ういーっす。お邪魔〜!!」
学校が終わって一度家に帰った後、インターホンも鳴らさず、凛花の家のスペアキーで扉を開いて中に入った。
すると、中からドタドタと足音が響き渡り、凛花が玄関に来ると、人1人殺せそうな目つきで睨んでくる。
「アンタねぇ…!学校では秘密にしろって言ってたのになんで自分からヒントあげるみたいな事するわけ!?」
彼氏が居る、とは言ったが、具体的に誰のことなのかはうやむやにして誤魔化した。それは凛花も同じか、もしくは居ないと否定したのかどちらかだろう。そうじゃなきゃこんな言い方はしない。
「だってお前に彼氏が居るって分かったら、ちょっかい出す奴とか少なくなるかもだろ?」
「まぁそうだけど…」
「これで凛花の負担が減るかもしれないだろ?なら良いじゃねぇか」
俺は作り笑いを浮かべてそれを告げるが、凛花は何処か納得してない様だ。
「嘘をつく時に右上を見る癖、まだ治ってないのね」
「…あっれぇ…?バレた?」
やっぱり凛花は凄い。俺の事をよく見てる。だから直ぐに作り笑いを辞めて、観念する。
「本音は?」
「少しだけ怖かったんですよ。凛花様が他の男に惚れるんじゃ無いかってね〜」
俺だって1人の人間だ。独占欲というものは存在する。自分の恋人が他人から何度も告白されるのは、かなり胸が痛い。しかも俺なんかより頭が良くて、顔が良くて、性格がいい奴なんてごまんと居る。だから…‥怖かった。凛花が他の男に靡いて、そして俺が捨てられることが。
「子供ミテェな独占欲と、お前に捨てられたく無い一心で、ついやっちゃいました。申し訳ございませんでした」
これが俺の本音だ。
それを言った瞬間、凛花はスリッパを履いたまま俺に近づいてくる。徐々に後ずさる俺だったが、玄関の扉と背中がくっついて逃げ場がなくなる。
そして、ダンッ!と顔面の横の扉を叩く、いわゆる壁ドンだ。
「バカなの?私が?恭弥以外を?好きになるって?はっ!バッカじゃないの。私がアンタをどれだけ好きか分かった上で言ってんの?」
おっと、恥ずかしげもなく言いますねぇこの人。
「確かに恭弥以外のイケメンも、性格が良いのも、勉強が出来る人も知ってる。だけど、私は恭弥以外興味ないの。だから…」
「もういい。充分だっつの」
そのヒートアップしそうな凛花の声を一度中断する。じゃないと…俺は。
「何?まだ言い足りないんだけど」
「それ以上やると玄関先でお前を襲うことになるから辞めといたほうが良いって言ってんだけどさ、聞こえなかった?」
俺の事を好きだと言ってくる、そんな凛花はとても愛おしく、そして…欲望のままに蹂躙したくなる。
「……なら黙る…けど、夜になったらもっかいこれ言うからね?」
「そりゃどうぞご勝手に。だけど何されても文句は言うなよ?」
「ふふっ、残念。恭弥にされる事ならなんでもOKだから」
そんな会話をして、俺らの怒涛のお泊まり会が、幕を開けたのであった。
………
……
…
「うぉぉぉ!!ドッスン先輩〜!!」
「いっけぇ一位よ!!あっ!ちょっ!恭弥!赤甲羅投げたのアンタね!」
ドッスン先輩に踏み潰された後、即座に凛花に赤甲羅叩き込んで一位となった。
「はっはっは!俺の勝ちだ!」
「くぅぅっ…まだ時間はあ、いや…なかった…」
時刻は既に7時を差していた。こりゃもうじきめしの時間帯なので無理だろう。
「仕方ねぇな。取り敢えず飯にしようぜ」
「食べたら続きやるからね?」
「分かってるってばよ」
凛花は恨めしそうにしながらキッチンに向かって行った。
………
……
…
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした…」
凛花のハンバーグ超ウメェ。やっぱサイコーだわ俺の彼女。
そして食器を片付ける際、何故か凛花は俺の事をチラチラと見始めている。
そして目が合わされば、直ぐに別方向に向いてしまう。
「なんだよ凛花、言いたいことがあるんなら言えよ?」
「い、いや…なんでもないから」
「なんでもねぇわけねぇだろ。お前に隠し事されんの俺一番嫌なんだよ」
もう凛花に隠し事は通用しないので、とっとと白状してみる。すると、凛花はゴニョゴニョとどもりながら喋る。
「ぉ…ろ…」
「おろ?おろってなんだ?」
おろという日本語は聞いた事がない。まぁ俺が知らないだけであるのかもしれないけど。
「だから…お…」
後半は殆ど喋らずに、自分のスカートをギュッと握りしめ、顔を真っ赤にしながら黙ってしまった。だけど‥マジでわからん。俺は鈍感系でも難聴系でもないんだけど。
「なぁ凛花、悪りぃがもっとでかい声で頼む」
「だ、だから!!!お風呂はどうするのっていってるのよ!!私と入るの!?入らないの!?」
「是が非でも入らせてくださいお願いします」
「宜しい!!」
こうして、俺と凛花は一緒にお風呂に入る事が決定した。
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