第6話 ガッソ達の集落
「ようやく着いた……?」
目の前に広がるのは崖。道行きの途中から抱っこしていたリコのせいで腕が重たい。
立ち止まり崖を見下ろす俺の横を通って、三々五々、解散していく男達──ボソボソとガッソと何か短くやりとりをして。
「こっちから降りるぞ」と男達が皆行った後でガッソが声をかけてくる。
その指の先には崖に刻まれた下り階段。
いざなわれるままに、ガッソについて降りる。
腕の中でリコがキョロキョロする。そのその動きに合わせ、リコの瞳の照らす光の輪が左右に動く。
階段を降りていくと、壁に空いた穴が現れては過ぎていく。
扉のかわりだろうか、何かの布が入り口や窓とおぼしき穴にかけられている様子。
どうやらこの穴がガッソ達、闇属性カーストの家になるようだ。
リコが歩きたそうなので、ゆっくりと地面に下ろす。
「穴居住宅なのか? でもこの削り跡はいったい……」と俺は崖に指を這わせ呟く。
レプリの記憶──両親が見せてくれた地属性魔法による岩の形成材とは全く異なる壁。もっともっと、粗野で粗削りな感じが、指先に伝わってくる。
「ああ、そうか。余所から来ると珍しいかもな。それは当然、俺たちが自分等の魔法で削ったんだぜ」とガッソ。「ほらっ」
ガッソが腕を一振りすると、リコの照らす光の縁を、漆黒の何かが通りすぎていく。
「今の、なにっ?!」
「闇属性魔法に決まってんだろ? あれで何年も何十年もかけて大地を削って、こうやって家を作ってきたんだよ、俺たちの祖先がな」とガッソ。
そこで俺はようやく気がつく。単なる崖だと思っていたのが、巨大な穴の縁だったことに。
「さあ、ここが俺んちだ。入りな」
ガッソが入り口の布を捲る。
リコが真っ先に飛び込む。
落ちる暗闇。
俺は消えた光を追うようにリコに続く。
垂れた布に触れた感触からするとそれは一枚の何かの毛皮のようだ。
──かなり大型の何かが居るんだな。
そんなことを考えながら入ったガッソの家。穴居住宅として想像していたよりかはかなり広い。
一部屋だけではなく、奥にも部屋がありそうだ。
ただ、広さを感じさせない雑然とした雰囲気が漂う。
リコの照らす光で、そこら中に乱雑に積まれた雑多なものが散乱していた。
俺は後から入ってきたガッソを呆れたようにちらっと見る。
俺の視線に気がついたのか、やや決まり悪げに口を開くガッソ。
「あー。少し片付けるか。レプリはその間、風呂でも行ってろや」
「え、お風呂があるの?!」
「ああ、そりゃあるだろ。そこ出て階段を一番下まで行った所だ。なかなかの砂風呂だぜ。入り口にいる奴に、これを渡してくれ」
と、言うとおろした背嚢から取り出した物を手渡してくるガッソ。
小さく丸められた毛皮のようだ。
「じゃあ、行ってくる」
俺の声に軽く手をふって送り出すガッソ。
俺はリコを呼ぶと、いそいそと一緒に階段を下って行った。
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