第3話 初めての魔法
見えた光に向かって、思わず一歩踏み出す。
完全な闇の中、ちらりとだけでも見えた光。それはあがらえない魅力に満ちていた。
足元が悪い。
転ばないようにして、慎重に。しかし急いた気持ちに押されるように、足を進める。
──数時間後
完全に光を見失ってしまった俺は地面に座り込んでいた。
「お腹すいたし、何より喉乾いた……」
思えば、属性検査の前から、何も飲んでいない。
どれくらい気絶していたかはわからないが、光都の光が届かない場所まで運ぶとなると半日近く気絶したままだった可能性もある。
空腹具合から見ても、それぐらいはたってそうだ。
「記憶が落ち着くのに、それぐらいかかったってことか」
何より辛いのは、喉のかわき。立ち上がる気力も出ない。
レプリの記憶では、この世界は雨らしい雨はほとんど降らない。
つまり、ここで水を手に入れるのは絶望的ってこと。
「どうしよう、これ。つんだか……」
膝を抱えていた俺はふと思い立つ。
「そうだ、光都では水属性カーストが、水を供給していたんだ。カースト二位なのをかさにきて、偉そうでむかつく奴らだったっけ。俺、全属性魔法使えるんじゃん。水も出せるはずっ」
俺は必死に水よ出ろと念じてみる。
──何も起きない。
次は枯れた喉を酷使して、次々にそれっぽい呪文を唱えてみる。
──何も起きない。
「ケホッケホッ。余計喉乾いた。どうやって魔法、使うんだ……?」
俺はレプリの記憶を漁る。
どうやら養育院を出た人が魔法を使っている記憶はある。
「誰も呪文を唱えている様子はなかったよな。一体どうやるんだ……」
──数十時間後
意識が朦朧とする。
もう、喉が渇きすぎて、渇きすぎて。
水のことしか考えられない。
水水水水水水水水水水水水水水水水水……
その時だった。頭の中にあることを知らなかった扉が開くような感覚。
そこから溢れ出す、何か。それはチョロチョロとした流れとなって、乾きに悶え苦しむ俺の体を巡る。
次の瞬間だった。
じんわりと手のひらに湿り気を感じる。
──冷たい
その冷たさに引かれるように思わず手のひらを口に当てる。
じんわりと染み出す、水。
水水水水水水水水水水水水水水水水水……!
俺は無我夢中で、その水をすすった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます