ユウガタ・デイズ

坂井実

紅に染まる街

季節はもうすぐ12月、少し冷たい風が吹いていた。

風景はすっかり夕日に包まれていて、その中にハルヒと俺がうつっていた。

「すっかり寒くなったなぁ。」

と俺が言うと

「私だって寒いわよ。」

とそいつが言うのでとりあえずうどん屋に行く事にした。



此処は俺が良く通うところで、最近出来たのがウソのようだ。

「いらっしゃい。」

亭主が気前よく挨拶をする。

「かけうどん、二丁。」

と俺が指を二つ動かして言った。

「まいどあり。」

と言って即席のうどんが来た。

チュルル…

…うまい。

そして夕日が落ちていく様子を見る事なく…

「これでいいかしら?」

今日は何故かハルヒの奴が小銭を亭主に渡した。

「毎度ありがとうございやした。」

と言い、俺達は店を出た。

そしてハルヒは何故か手を握るよう求めて来た。

「…少しは暖かくなると思って」

…フフッ、何だかあの時みたいだな。

不意に手をつないだその時、初めてそいつが愛おしく思えた。

こういう事は、これから何度もあると考えたら、無性におかしくなってしまった。

またうどん屋行こうな、ハルヒ…


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ユウガタ・デイズ 坂井実 @aisyuusann8

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