簡単な3ステップでWEB小説を投稿したらボクの現実が狂いはじめた
石田和夫
第1話 岸団長殺し
……タケル 起きなさい タケル……
――天の声が聞こえる
俺の名はタケル、特別な力を持っている。
特別な力――そうだな。
それはまず、未成年ってことだ。未成年なら何でもできる。
どの程度の逸脱が、どういったリスクと結末に繋がるか――そんなの、みんな良い子で気付いちゃいないが、検索すればわかることだし、問題のない範囲で自由にやればいい……
すこし試してもみた。
(大人はみんな怖がりだ。ちょろいぜ)
俺はタケル。先程も名乗ったような気がするが、どうでもいい事だ。
――天の声? ああ、問題ない。
……その声は俺が自分で呟いた。
以前、自分の生まれた世界はどういう構造になっているのか……この大きな問いについて俺なりに調査した。
結果、アカシックレコードの存在に辿り着いた。
……奇妙だ。近似している。何を隠そう、俺の意識の中にも「天の声バンク」というものがあり、高揚感のある言葉の数々がコレクションされていたのだ。
多少のコンディションには左右されるが、いつでも恍惚感のあるシチュエーションを演じることができる。
朝は誰だって苦手だが、それも考え方ひとつだ。
天の声バンクの啓示により、今の俺は、選ばれし運命を背負ったサイコソルジャーとして生まれ変わったばかりだ――
……
――N高に入学してからというもの、毎日が辛くてたまらない。
元を辿れば俺が悪いのかもしれないが、格闘ゲームにハマっていた。
周囲が射幸心を煽るスマホゲーやイカのゲームに熱を上げていたころ、自分はただただ格闘ゲームをしていた。
きっかけは、伝説とよばれる格闘ゲーマーの神動画を見たからだ。どうして“オススメ”に出てきたのかは分からない。ただ自分はその動画の中の、時間が止まったかような浮遊感と熱狂するオーディエンスにあてられて……俺は格闘家にならないといけない。そういう運命を感じたんだ。
とりとめ無くなってきただろ? ……まとめよう。
俺の名は磯野、健。格闘家。サイコソルジャー。
今年から、地元の最っ低な私立高であるところの生半高校普通科に入学した。
格闘家への道を邁進するあまり、学生としての本分を怠っていた。
真の格闘家への道に比べれば、中学程度の学問などたかが知れている……
(本心は今も変わっていない)
――にせよ、この結末には激しく後悔している。毎日が辛い。
何がって、最低すぎるんだよ本当に。
教師どもは俺たちを金づるとしか見ていない。
目に光はなく、あからさまに見下し、生気を削いでくる。
クラスの治安さえ家畜の世話程度にしか思っていないようだ。
俺のクラスは岸田という男が締めていて、元の中学から10余人の取り巻きを引き連れている。なにかのバンドに由来しているようだが、奴らは岸田のことを「団長」と呼んで崇拝しており、ひとりぼっちの俺は、何かと邪魔者として扱われた。
時には同じクラスに居るのに“侵入者”扱いを受けた。教室から締め出された。
イジメかよ……本当に幼稚である。
ボクは岸田を許さない。
担任はアテにならない。
いつからそうなったのか、若輩のボクにはわからないけれど、少なくともボクを守るべき大人は、小学校時代からずっと、未成年とは戦えない。
ボクですら、卑劣な手段でもって大人を消してしまえる。本気を出せばね。向こうもそれは分かってるかもしれない、きっと。
だから究極、未成年の敵は未成年なのだ。
大人というギャラリーに囲まれて、殺しあう。
ただし、技を出すところを見つかってはいけない。
未成年同士のバトルは潜水艦戦だ。
お互い、有利な時と場所で攻撃を仕掛けるのさ。
――ところで、一人称が変わったのはわざとじゃない。
中二病かと思った? ……笑止。
ボクの発した天の声は、10分しか保たないんだ。
――
いいとも、やってやるぜ。
岸団長殺しだ!
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