第93話 異界亀裂内追撃戦2 RGE(レヴェネイトジェムエクステンダー)発動!
「この私をここまで追ってくるとはな。命知らずにもほどがあるぞ」
「悪いが、薬の売人を逃すわけにはいかないのでね。さあ吐いてもらおうか、その薬の出所を」
「誰が、そうおめおめと話すか!全員消えなっ!」
ゴモスはそう叫ぶと体を大きく変化させ、醜い魔物の姿となり手足から無数の触手を生やすと即座に襲い掛かる。
それは周囲にある物全てを巻き込まんとする勢いで前進し、一気に仕留めようという算段であった。
「魔界人とは、こんなに姿形を変えて攻撃できるものかのう?っと、危ないな貴様」
「いきなり変化させてきたか、全員散開!」
「こやつ、やはり格が違うな。恐らく本物の部下だぞ」
「ぬぅ、何という気迫!」
予想以上の怒涛攻撃に数の少ないハーネイトたちはなかなか攻撃の機会を得られない。迂闊に近づくと大きく吹き飛ばされそうであり、しかもどういうわけかヴィダールの気、つまり霊量子をわずかに感知し全員に注意を促す。
「っ!相手がヴィダール絡みだと、迂闊にダメージをもらえないのですよね?ハーネイト様?」
「何じゃこ奴は、魔界人にしては霊量子まで操るのか」
「どうにか動きを止めないと一撃を当てられんか」
「この違和感はまるで、中に誰かいるような感じだぞ」
「ハーネイトよ、この魔物何かが変じゃぞ!気を付けい!」
ハーネイトは果敢に攻め込むが、触手に当たり吹き飛ばされる。空中で受け身を取り姿勢を制御するも、受けた部分が少し痛みを覚え間合いを取る。
ミロクも剣先をゴモスへの方に突き出し、影を弾丸のように射出し攻撃するが思っていたよりも与えたダメージが少なく若干困惑する。
「やらせはしない!碧緑孔雀、祓風よ!」
「まずは行動力を削ぐのじゃハンゾウ!忍術・五月雨手裏剣っ!」
「私は腕をやる、蒼紅瞬閃斬っ!」
そんなハーネイトとミロクを援護する形で、亜里沙たち3人は同時にゴモスに対し攻撃を行う。だがその攻撃はどれも触手を全部使用不能にするまでに至らず、逆に相手の怒りを買う結果となる。
「っ、意外と硬いですわね」
「再生能力も持つとは、うーむ」
「再生力を上回る攻撃が必要じゃな」
「……こうなったら、試作型だがあれを全員に!アップデートオン!限定解除だ、RGE(レヴェネイトジェムエクステンダー)!」
変身したゴモスの力は予想以上であり、3人の同時攻撃でも倒れる気配は全くない。
そこでついにこれを使う時が来たと、ハーネイトはCデパイサーを素早く操作し、全員のCデパイサーに対しアップデートデータを転送した。すると響たちの装備していたそれが光りだした。
「何だこれは、腕の装置が!」
「先生、これがもしかして新たな強化システム!」
五丈厳たちは突然のことに驚くも響は冷静に何が起きたかを理解し、彩音にも確認する。
「何だろう、力がすごくあふれてくるわ!」
「ええ、これは明らかに先ほどと違います。ですが嫌な予感がします。一気に全て片付けましょう!」
光の影響を受けた全員が、今までと違う力を感じていた。まるで、強制的に内側から力を引き出しているようだ、そう感じつつもそれを利用し制圧チームは一気に大攻勢を仕掛ける。
「ぶっ潰す!!」
「邪魔者は失せろ!」
「流石相棒、あれが新たな強化プログラムかよ。へへへ、んじゃ俺様も切り札使うかね」
伯爵がそう構えたその時、突然地面が地震の如く激しい揺れに襲われる。
「地中から何か来るぞ!」
「すごく地面ぐらぐらする!」
「んだよ、邪魔してんのは誰なんだ」
「落ち着け九龍、一旦間合いを取れ」
慌てる九龍達に五丈厳は後方に跳べと言い、全員が指示に従う。すると先ほどまでいた場所の地下から巨大な何かが出現したのであった。
「これは、蛇?だけどトカゲ?」
「キメラってやつか?」
「魂食獣、じゃないわ。あの嫌な感じとは違う何かが、あれを覆っている」
「奴が口を開けた!射線から逃げろ」
響たちが突然現れたキメラへの対応に追われた中、ハーネイトたちは例の売人相手に攻撃を仕掛けていた。
「くっ、ここまで力を出せるとは驚きだ。どういう手品だ」
「そうじゃ、お主等にある物を渡そうと思っておった」
「何ですかルべオラ」
「これじゃ!どうよ、この霊量子を膨大に秘めておる美しい宝石を」
ハーネイトたちは触手の激しい攻撃に攻めあぐねていたが、それをルべオラは全て観察しあるアイテムをハーネイトたちに渡すことを決めた。
それを見たハーネイトは驚いて思わず叫ぶのであった。
「それは、霊宝石(れいほうぎょく)っ!」
「そういう名なのか、ほうほう。これを使えば、お主等の体の呪い、もとい封印を少しは解くことができるはずじゃ」
ルべオラが手にしているそれは、絶えず輝きを放ち色彩も変える丸い宝石のような物であった。その名は「霊宝玉」と言い、ごくまれに自然発生するとされる貴重なアイテムである。
「どこでそれを手に入れ……ってうわっと!邪魔をするな!創金剣術・剣弾!」
ハーネイトはルべオラに対しその宝石の入手方法を問おうとするが、ゴモスの攻撃にそれを阻まれ、回避してから手元から創金剣を連射して怯ませる。
「それは!何故貴様が持っておる、早くそいつをあの2人に渡せ小娘!」
「なーにーがーじゃ!このじじい!分かっとるわ、U=ONE化の礼じゃ、受け取れお主らぁ!」
ミロクは霊宝玉を見ると血相を変えて2人に渡すように言い、少しキレながらもルべオラは2人に対し霊宝玉を1個ずつ投げ渡すのであった。それを受け取る2人は、自身の中にそれを取り込む形で霊量子を獲得し、その内側からあふれる力で呪いを解こうとする。
「まさか、これの世話になるとはなっ。だが、これであの力を使えるかもしれない!」
「複雑な心境だが、それはそれだ!アーーーアハハハハ!!!力が滾ってくる!U=ONEだからか俺もよ!」
「早うそいつをボコってしまえ、世話のかかる奴等じゃのう」
こうして、力の一部を取り戻した2人はそれぞれ大技を発動しようとする。
「女神代行の名に懸けて、やってやるさ!封印開放!創金術発動・魔本変身(ファイナルアームズ)=機鎧・セブンブレイドナイト!」
「儂もやるか、影を食め!影斬!」
「何だと、それは!!!」
ハーネイトは魔本変身により7本の剣を身に纏う機鎧に変身し、ミロクが敵の動きを止めるように影人間を召還しながら敵の影を刀で斬りダメージを与える。
それに合わせ上空から、ハーネイトは7本の剣を巧みに扱い強烈な一撃を食らわせた。
「落ちろ!七刃武斬(しちじんぶざん)だぁ!」
「ぐがああああああ!ごふぇ、ぐっ」
「醸せ、死菌覇装(フルデッド・アームズ)・災菌魔龍(ヴァイラス・ドラガーン)!!!」
「何だと?あの龍に変身する力を」
「まだ完全とはいかねえが、腕か脚ならこうやってな!醸しつくしてやる、災菌爪牙!」
「何ぃいい?グォオオオ!!!馬鹿な、こんな所でっ、がはあっ!、な、再生ができぬっ、馬鹿なあっ!」
ハーネイトは伯爵の変貌する姿に驚くが彼曰く、まだ完全な変身はできないけれど、今の状態のように腕とか足を黒竜に変え攻撃できるぐらいは行けそうだと説明し、ゴモスの足部分の触手をその変化した右腕で薙ぎ払いつつ醸し削ることで、再び触手が生えるのを阻止したのであった。
これによりゴモスは戦闘不能に陥り、その場で行動を停止したのであった。
「何という、力なの」
「おおお、2人とも少し調子が戻ってきたか」
「ほう、まだあの2人には隠された力があるのかもしれんのう」
亜里沙と文次郎は、2人の新たな攻撃技に目が離せず、ただただ驚嘆していた。
シノブレードは彼らの持つ本来の力の一部を見て、少し安心しつつもまだ全盛期には全く遠いと見た感想を述べるのであった。
「フッ、こんなところにそ奴の仲間がおったわ。捕らえたぞ魔界人」
「何故だ、何故っ、あれは何なのだ!俺の長年の友人が、化け物にぃいい!」
「でかしたミロクおじさん!しかし反応がおかしい、亜里沙さんとシノブレード、ミロクはその魔界人を絶対に逃さないように!」
霊宝玉を取り込んだ2人が戦闘中に、ミロクは別の者の気配を感じ、影を利用し探索すると魔界人を見つけ、拘束したのであった。
ハーネイトは彼に感謝しつつ、魔界人の怯えた表情と反応がおかしいと思い、亜里沙たち3人に指示を出す。
その後速やかにリシェルたちに連絡を取ったが、現場である異変が起きていたのを知り急いできた道を引き返すのであった。
その間に、ルべオラと伯爵はゴモスの体の破片を回収していた。それは、この魔界人が血徒に感染していないかを調べるためであった。
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