そして
窓の奥に見える空が、段々と曇り始めているゴールデンウィークの初日。
私、音山美桜は街、いや日本でもトップクラスとも言えるであろう規模のショッピングモールである、星空モールで私の友達の真彩ちゃんと一緒に買い物をしている最中でした。
「美桜ー、次はどこに行く?」
真彩ちゃんは、スマホをポチポチと操作しながら私に言ってきました。
「私、ちょっと休憩したいかな、ちょっとお腹も空いてきたし」
私はてへへと笑いながら言います。
それを聞いた真彩ちゃんは、そうだねーと笑顔で言い、どこかへと電話をかけていて。スマホを耳にやるときに、チラッと見えた画面には天谷と表示されていました。
真彩ちゃんと天谷くんって幼馴染なんだよねー、ちょっと羨ましいな……。
そんなことを考えていると、真彩ちゃんの電話の話し声がうっすらと聞こえてきます。
「だぁかぁらぁ、フードコートに来てって言ってるでしょ!?ねえ、馬鹿なの?耳ないの?」
よく聞こえないけど、な、なんか凄く怒ってるよー。
その時、聞いた真彩ちゃんの声は私や一ノ瀬さんと話すときの、何倍も声色が怖かったです。
や、やっぱ幼馴染とかより、普通が一番かも……。
そんなことを思っていると、真彩ちゃんは一つ大きなため息を吐き、電話を切りました。
「な、なんだって?天谷くん」
「ん?いや、今から向かうって」
そして、もう一回大きなため息を吐く。
その姿には、さっきまでの真彩ちゃんの面影は全くなく、不機嫌そうな顔をしていて一つ一つの行動が、苛立っているように見えます。
「ま、真彩ちゃんって、天谷くんのことになると、なんかいつもと変わるよね」
私は恐る恐る、あくまでも自然に、それとなく聞いてみた。
「え?別にそんなことないよー」
真彩ちゃんは明らかに上の空を見ながら、両手を思いっきり左右に振って言いました。
あれれ?真彩ちゃんってもしかして、嘘つくの下手?
意外な弱点見つけたと少し優越感に浸っていると、真彩ちゃんが一気にマウントを取り返すべく、私に言ってきました。
「そう言う美桜も、天谷のことが好きなんでしょ?」
「え?」
ニヤニヤからかうように言ってくる真彩ちゃんに、私は、間の抜けた声を出してしまいます。
って言うかなんで知ってるのおおおお!?天谷くんが言ったとか?いや、でも天谷くんは多分そんな人じゃないし、じゃあ、え?私そんなに顔に出てた?やばい、やばいよー、あれ?これってもしかして、恋のライバル現る的なやつ?宣戦布告されちゃうやつ?ダメだよ!真彩ちゃんに勝てるわけないじゃん!と、そんな風にあたふたしている私を見て、真彩ちゃんはフフフと一つ上品に笑う。
「美桜ってほんと可愛いね」
やだ、真彩ちゃん可愛すぎる。勝てない。
「それと、私は天谷のことはなんとも思ってないからね?」
「へ?」
まるで、私の考えていることを見透かされているように真彩ちゃんは言ってきます。
「そうなの?」
「当たり前でしょ、幼馴染よ?昔から知ってるのよ?そんなのもう家族みたいなもんよ」
やっぱり、天谷くんの話になると少し怖くなる。
でも、良かったー。真彩ちゃんは敵じゃなかったんだ!そうだよね、幼馴染同士の恋愛なんて二次元にしか存在しないよね。
ただ、私はその時の真彩ちゃんの表情や仕草を見てこう言った。
「真彩ちゃんも可愛いね!」
そして、私は天谷くんへ一通のメッセージを送る。
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