裏と表
学校中に授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
午前の授業が終わりこれからみんな昼食へと移り、食べ終わり次第昼休みっていう感じだ。
俺は普段から昼食というのをとっておらず、昼は飲み物だけで乗り切っている。
乗り切っているって言うと、なんだか俺が空腹に耐えながら午後の授業を受けるみたいに見えるが別にそういうわけではない、ただ単純に昼にあんまりお腹が空かないというだけだ。
とまあそんなわけで、自販機で飲み物を買った俺は特にすることもないので教室に帰る途中にあった中庭のベンチに座り空をボケーっと眺めていた。
すると、少し遠くから聴き慣れた声が聞こえてくる。
いや、見慣れたやつが聴き馴染みのない声で誰かと喋っている。
その人とは長谷川真彩だ。
真彩は笑顔で可愛らしい声をしながら男三人と何かを話していた。
うわーでたよ真彩の愛想完璧外面モード。
しかも男というのは三人ともお世辞にはかっこいいとは言えず、どっちかっていうとクラスの隅っこにいるような地味目の人たちだった。
あいつって、結構抜かりないんだな。
真彩は男たちと話終わり、別れ際にバイバイと手を振り、ちゃんと男たちが曲がり角を曲がり見えなくなるまでちゃんと笑顔を保ち続け、男たちの姿が見えなくなった瞬間真顔になる。
うわー、なんかみちゃいけないものを見ちゃったような気がするな。
しかもなんかこっちに来てるし。
真彩は頭を抱えながら何かぶつぶつ呟きながらこっちに来る。
どうやら、俺がいることに気付いてないらしい。
「キモい、まじでキモいんだけど、なんなのよほんといっつも話しかけやがって、絶対あいつら私があいつらのこと好きだって思ってるでしょ、私がいないとこで三人で絶対俺のこと好きだよー、いやいや俺だろーとか言ってんだろまじキモい、こっちはあんたにさらさら興味ねーっつんの、現実見ろよ、いや鏡を見ろよ」
「相変わらず性格わりーな」
段々と近づくにつれ聞こえてくる真彩の呟きに割って入るように俺は話しかける。
「ひゃう!?」
「ひゃう?」
真彩のまるで猫のような驚きの反応に思わず繰り返してしまう。
「なんだ天谷かよ、びっくりした」
はあーと胸を撫で下ろす真彩。
「相変わらず外面だけは完璧だなお前」
「まあね、人脈は大事よ」
「俺にもさっきみたいな感じで対応してくれよ」
「嫌よ。あんたは私のストレス発散方法の一つなんだから」
「俺でストレス発散しないで」
「あんたしか愚痴言う人いないから、これからも頼むね」
そう言い、真彩は俺の肩をポンと叩き校舎の方へと戻って行った。
「分かったよ」
ヒューっと心地よい風が吹く昼下がり。
かんかん照りの日差しのなかで、俺は一人そう呟いた。
何故か、顔が微笑んでいた。
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