7 私の話

 私は、いやヒビキは少女を見つけた。さらに、遺体も見つけた。


 少女はぎゅっと猫を抱いている。猫は逃げる様子もない。まるで、体の一部のようにひしとくっついている。ただ、ヒビキの吠えた声に覚醒したように話し始める。

「ジャーマン・シェパード、推定三歳ですね」

 この寒さのなか、泣き言も言わずヒビキの年齢を言い当てた。私はヒビキを落ち着かせ、暗闇で少女の顔写真と浮く層を確認した。おかっぱ頭に水色のダウンジャケット。そして、『変わった子』だ。


「お嬢ちゃんは、野口ありさちゃん。十歳かい?」

「おじさんは人間で、四十五歳ですか?」

「まだ三十代だよ」

 私が困ったように笑うと、少女はやっと年齢らしいことを告げた。

「お腹が減ったわ」

「まずは水分を取りなさい」

 私が開けていない水のペットボトルを渡すと、礼を言い口にした。

 その間、私は無線で上に報告した。


「二月十五日午後二十三時三十六分、少女を発見。場所は…… 」

「よくやった。そちらへ急行する」

「それと」

「どうした?」

「身長約一六〇センチ、女性のご遺体を発見しました」

 捜索班のざわつきが聞こえ、私はまた遺体に目をやる。泥で汚れ、獣に喰われた跡が見て取れる。少女が第一発見者ですと伝えながら、私は力が抜けていく感覚がした。


「やっと見つけました」

 ぽそりと呟くと、上官の声が遠くに感じられた。

 足元の猫が、私にすり寄りニャーと鳴いた。

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