6 僕の話
僕を抱いて少女はうつらうつらとしていた。仕方ない、少女が起き続けるには夜が遅い。できるだけ、僕も寒くないように少女にぴったりとくっついていた。カラスやイタチやネズミの気配がすると、僕は威嚇した。蠅や蛆虫は仕方なかった。彼らの家は彼女で、彼らの食事も彼女だった。
ミャアと甘えたように僕が鳴くと、少女は鰹節をくれた。少女も鰹節をつまんでみたようだが、すぐに吐き出した。塩辛く、水分が取られる。しかし、少女は空腹を訴え泣くこともなかった。ただ、にこやかに僕を抱きしめて、冷たい地面に座っている。
ここを他の誰かに伝えてくれれば充分だった。けれども、少女は相当の変わり者なのか、帰り道がわからないのか、僕から離れることはなかった。きっと両方であり、そして、相当に優しい。僕の舌はざらついている。犬のように慰めることはできない。
カラスの言葉を思い出す。
――猫のお前に何ができる?
何もできない。僕は少女にもっと体を摺り寄せた。冷たくなってきている。
申し訳なさを感じていると、明かりに照らされた。ワンと大きな声が響いた。
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