鳩と生きる
すた
第1話 祖父
「そうだ、じいじがちっちゃなときに原爆が落とされた話しようか。」
夜、祖父が寝かしつけるために昔話をしてくれるのは、長崎の母の実家に帰ったときの楽しみの一つであった。ある時、祖父はこういった。
「げんばく?何それ。」
知らない単語が出てきたのでうーむと私は難しい顔をした。
「1発、たった1発の爆弾でたくさんの人を殺してしまう兵器なんだよ。」そして祖父は話し始めた。
確か3歳の頃だったかな。まあとにかくうーんと昔、まだ戦争が終わってない頃ね、じいじは長崎市の端っこに住んでたのね。そうそう、お盆にお参りに行くとこ。あそこはまだ埋め立てられてなくてね、海辺に住んでたんだよ。だから友だちと船に乗って魚釣りしてたよ、懐かしいなあ。え?ああごめん話がそれたね。
そこからじいじのお父さんは三菱造船所に通勤してたんだよ。でもその日はたまたま休みだった。だから、お昼寝しよう、って言って二人でお昼寝してたよ。
突然、だったんだ。窓ガラスがわれ、障子がこわれ、凄まじい風が吹き荒れた。
何もわからぬまま家の中をめちゃくちゃにする風を感じた。ただ恐ろしかった。
後に、原爆が落とされたことを知った。たった1発で爆心地から程遠いここでさえ爆風がきた。考えるだけでも恐ろしかった。
時々見かけたんだ。ひどいやけどを負ってる人。同じ人だと思えなくて、目が合わないうちに逃げた。
今でも忘れない、あの景色。
じいじはね、君に、そんな体験はしてほしくない。
だから平和な世界を私は望んでいるよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます