9.10.馬車
スターホースを引き取ったは良かったが、流石にこいつに合う馬車がない。
普通の馬の三倍くらいの大きさがあるのだ。
馬車も少し特注じゃないと引くことができなさそうである。
だが騎竜に使う馬車は大きいものらしいので、それであれば問題ないのではないだろうという結論に至った。
騎竜の引く馬車は二匹で引くタイプのものであるので、バトルホースの体格であれば一匹で引けるらしい。
横一杯になるだろうが、これであれば一緒に行くことができるだろう。
「で、応錬? めちゃくちゃ目立つけどこれ」
「あー……騎竜も似たようなもんだろ」
「確かにそうだけど……はぁ。これだとバルパン王国には入らずに何処かで野営したほうが良さそうね。これで入ったら完全に目立って隠密作戦どころじゃないわ」
「なんかあっても問題なさそうだな。こいつなら」
「それは……確かに……」
冒険者や兵士に見つかっても、こいつであれば逆に蹴散らしてくれそうだな。
多分騎竜で向かうってことを考慮している時点で、バルパン王国に入ることは考えていないだろうしね。
中で滞在するのもいいんだろうけど、警備もえぐいことになってるだろうしなぁ……。
というかまだどうしてあいつらがクライス王子を誘拐したのか良く分かってないんだよな。
救出しに行くからもう理由とかどうでもいいだけどさ。
「とりあえず馬車はマリアギルドマスターが用意してくれるわ」
「でもこのままだと騎竜一台分しか用意しないよな?」
「多分そうね。じゃあローズのところに戻って合流しましょうか」
そうするか。
これは確かに準備に二時間必要だわ。
あ、その前に道中の食料とか買っておかないとなぁ。
◆
「と、いうことなの」
「ええー……」
「へー。久しぶりに見たわ、バトルホース。結構いい子なのね、頭がいいわ」
「ブルルルッ」
バトルホースであるスターホースの報告をする為に、ローズのところに戻って来た俺とユリーは、まずはこいつを持って帰ってきた成り行きを説明した。
俺と初めて一緒に旅をした馬なんだよなこいつ。
まさかこんなことになって戻ってくるとは思っていなかったけど。
でも強くなって帰ってきてくれたぞ。
これは普通に嬉しい。
というか今の今まで放っておいてマジですまんかった……許してくれ。
しかしスターホースは怒っているそぶりはもうしておらず、逆に俺と旅をするのを楽しみにしているように感じる。
ここで置いて行ったらマジで怒りそうだし、できればこいつも連れて行ってやりたい。
「それくらいならいいわよー。どうせバルパン王国に入る予定はないし」
「あ、やっぱりそうなんだ」
「騎竜が出て来た時点で入ると目立つだろうし、まず私が有名人だからね」
「そうなのか?」
「そうなのよ?」
んーーーー、全然そんな風には見えない。
まぁギルドマスターやってるんだから、それなりに名前を知られていてもおかしくはないだろうけども。
とりあえず馬車は二台用意してもらうことになった。
今回は作戦に参加する人も多いので、これくらいの方が丁度いい。
ジグルに飛竜の世話を任せておくことにしているようなので、空けていても問題はないらしい。
「よーし、三匹共今回はよろしくなー!」
「「
「ブルルルッ」
「何で応錬は動物に懐かれるの? 騎竜とかなかなか懐かないわよ?」
「私もそれだけは分かりません……」
「体質なんじゃないかしら?」
聞こえてるぞー、そこの三人。
まぁ騎竜とは会話ができるし、なんなら魔物である俺と種族が近いしな。
会話もできるし、要するにそういうことだろう。
スターホースは、マジで成り行きです。
どうしてお前魔物の肉食ったんですか。
それが一番気になりすぎるわ。
さて、後は追加の馬車とウチカゲやシャドーアイの面々が集まるのを待つだけだ。
そんなに時間はかからないと思うので、あと一時間もあればここを出発することができるだろう。
「そういえば……マリア。俺たちが救出作戦をしに行くことは王とかに伝えたのか?」
「勿論。依頼達成報酬は期待しておいていいよ!」
「そんなのいいから零漸のことを気に掛けてくれ」
「じゃあ君たちの報酬はそっち方面で交渉してみるね。成功したらだけど」
「ああ、頼むわ」
どうなるか分かんないからな。
とにかく零漸のことは何とかしてやりたい。
だがその為にもあいつが誰に脅されているのか、しっかり調査してぶん殴ってやらないとな。
王族の方々には待ってもらうことになるけど……大丈夫かな。
俺たちが向こうに到着する前に変なことしないかな……。
でも普通に殺気立ってるだろうから、もし救助が成功したとしてもなんかヤバくなりそう。
この辺は全部マリアにぶん投げよ……。
俺そういうのわかんないし。
とりあえず今は零漸のことを何とかしよう。
俺の第一目標はそれで、第二目標がクライス王子の救出だ。
零漸を何とかすれば、戻ってきてくれるだろうからな!
……信じてるぞ、零漸。
お前が俺たちに拳を向けるってことは、何か深いわけがあるはずだ。
それを、何とかしてやるからな。
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