7.41.魔物の罠
レベルマックスになることが確定した俺は、ルンルン気分でダンジョン攻略を進めていた。
地面にいた魔物を殺したことで、遭遇率は一気になくなり、アレナもマップが作れるほどに落ち着いたのだ。
だが油断しているというわけではない。
操り霞を展開し、定期的に土地精霊を発動させて洞窟の中全体を索敵している。
というか洞窟の中での土地精霊が便利すぎる。
もうこれだけで洞窟制覇しちゃいそう。
でもあんまり大きくは動かせないんだよね。
なんでかっていうと、それはここが洞窟だから。
意外とギリギリな感じで保たれている洞窟とかもあったりするからね。
できる限りは壊さないでおくぞ。
まぁこの洞窟の狭さだったらあんまり問題ないんだろうけどね。
でも念には念を入れておかないとな。
生き埋めとか洒落にならんし……。
「んーっ『重力付与』! 『重力操作』!」
アレナの投げた手裏剣が、ずしんと地面に突き刺さる。
だがそれはすぐに勢いよく飛び上がり、目の前にいる対象へと突っ込んで貫通した。
手裏剣を重くし、それに重力の方向を指定させて敵に突っ込ませる……。
これ、本当に使いこなせるようになったらガチで強いんじゃないだろうか?
まだ三つほどしか一緒に操れないようだが……いやそれでも十分凄いな。
ストーバラッグという岩を体に纏って身を守る亀のような姿をした魔物が、一瞬で殺された。
Cランク帯が推奨されているダンジョンだけあってなかなか面白い魔物が多いが、アレナの技能には敵わないようだ。
「ムフフー。ぜっこーちょー!」
『今日はテンションが高いなぁ……』
まぁ、アレナはあまり戦闘に参加したことはなかったからな。
沢山技能を使えて、それが通用すると分かって嬉しいのだろう。
今度からはアレナもしっかり戦ってもらえるような陣形を考えないとな。
さて、今現在は二階層……。
そろそろ最深部へと到着するはずだ。
そういえば洞窟の通路の広さもだんだん広くなってきた。
二階層最深部の近くは、とても広くとられている場所だ。
……また何か、デカいのが出て来そうだな。
ここに来て一度土地精霊を発動させる。
地面の中を探ると、何か大きな魔物がいた。
すぐに倒してしまおうとしたのだが、それよりも先に敵は動き出す。
地面から出てきた魔物は、足がムカデのようにある蟹、と表現するのが一番良いだろうか。
明らかに必要のない場所にまで足があるが、それらは自らに敵を近づけさせないための武器にもなっている。
泡の代わりに岩をゴロゴロと吐き出しているが……あいつの体の中は一体どうなっているのだろうか。
だが俺たちのやることは変わらない。
芋虫の姿をしている敵でない限りアレナは錯乱しないし、あれだけの大きな図体をした魔物であれば攻撃を当てること自体は簡単。
このダンジョンのボスらしき魔物ではあるが、意外と早く方がつきそうだ。
だがその前に、アレナが俺に向かって叫ぶ。
「! 応錬! 水張って!」
『水?』
「早く!」
良く分からんが、水を出せばいいんだな?
では水流結界だな!
目の前に水流結界を張る。
だが暫くしても何も起こらない。
アレナは何を察知して、俺に水を張らせたのだろうか。
「よーし! 『重力操作』!」
アレナは技能を発動させた。
何に使用したのか分からず、周囲を観察しようとした時、水流結界が動いていった。
『!? お前それに使ったの!?』
水流結界はそのまま勢いをつけて蟹にぶつかった。
随分と強力な攻撃だったようで、大きな図体をしている蟹がぐわっと持ち上がる。
しかし倒れるまでは行かないようで、何とか体勢を立て直したようだ。
「おしい!」
『水にも使えるのかその技能……。便利だなぁ……』
っと感心している場合ではない。
まだ敵は倒れたわけではないからな。
って……ん?
え、えっ!?
おいちょっと待てなんで地面の中に魔物の反応が増えているんだ!?
さっきはいなかったのに!!
土地精霊を通して地面の中を探ると、先ほどまでいなかったはずの小さな蟹がわんさかいた。
小さいと言っても大型犬くらいの大きさだ。
本体にしては小さいが、この大きさの敵が数で攻めてきたら……!
『マズい!』
俺はすぐに自分に水を纏わせて、アレナにも同じことをする。
そして洞窟の天井付近まで上昇して様子を見る。
「わわっ! 応錬、私飛べるから……」
『ああ、そうだったな』
アレナは浮遊で宙を飛んで、下の様子を見る。
すると、そこには地面を埋め尽くさんばかりの蟹が溢れ出していた。
あのまま下にいたらどうなっていた事か……。
流石にアレナの技能でも、あれを一気に捌くのは難しい。
ここは俺がやってみるか?
ていうかあの小さな蟹どっから湧きやがった……。
親蟹を見てみると、腹の下で何かをしているということが分かる。
大量にある腕を動かして、先ほど口から吐いた石を砕いていたのだ。
そしてそこから……卵が出てきてまた子供が生まれていく。
そっからかよ!
あいつ俺たちと敵対した時から罠を張り始めていたのか!
こ、こりゃあ難儀だな!
天の声、あいつの情報を教えてくれ!
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―ロッグラブ―
洞窟の中に住む狂暴な蟹の仲間。
無数にある足は外敵から身を守る為に生えており、更には自らの子供を強制的に孵らせることを目的としている。
体内で高速に卵を生成し、固めて吐き出す。
強制的に孵らせた子供の寿命は短く、一時間ほどで死に至るが、大量繁殖をして外敵を殺せる程の力を持つ。
親蟹の肉は珍味。
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うーん最後の情報が要らなさすぎる……。
てかあのままだとずっと繁殖し続けるってことになるのか。
それは……面倒くさいぞ!?
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