7.16.通訳係
翌日となり、俺と鳳炎、アレナは冒険者ギルドにいた。
バディット討伐依頼を既に確保しているので、後はあいつが来るのを待つばかりなのではあるが……。
なっかなか来ない。
だがこれは予想していたことである。
向こうでの段取りに手間取っているのだろう。
「鳳炎、昨日どうだったの?」
「話自体は滞りなくできたのだが、ちょっとした事情で依頼を共に受けることになったのだ。今はそいつを待っているところである」
「へー」
アレナは俺たちのことを知っているので、昨日のことは大体理解してもらっている。
リゼが俺たちと同じ魔物であるということも話してはいるのだが、そもそも初めて見た姿が魔物なので全く驚くということはしなかったな。
しかし今回、鳳炎は同行しない。
それによって通訳が居なくなるので、アレナには常に俺たちの様子を見てもらって行動をしてもらわなければならなくなった。
一緒に行ってもいいのかもしれないが、万が一にも反射で使われたら洒落にならないので、今日は本当にお留守番をしてもらう。
なので、鳳炎にはできる限りの情報収集を努めてもらうことにした。
過去の文献、お伽噺でもなんでもいいので、悪魔と先代白蛇などの情報をかき集めてもらう。
暫くはこの布陣で問題はないだろう。
待っていると、一人の女性がこちらに向かって一直線に歩いてきた。
誰だろうと確認してみると、その人物は長く青い髪をしていて、ゆったりとした白い服に身を包んでいる。
明らかに戦闘服ではないのでこの冒険者ギルドでは浮いた存在になってしまっているのだが、どこか強者のオーラを放っている気がした。
優しそうな表情の中に鋭く強い何かが籠っている。
「遅れてごめんなさい」
「『……はっ!?』」
「リゼよ」
いや普通に人の姿とるんかーーーーい!!
羨ましいなおい!!
ていうかこれだったら俺と意思疎通できるか、アレナの心配する必要なかったじゃねぇか。
人の姿で来るんだったらそう言ってくれよなー……。
「そんなに驚くことかしら?」
「いや、いやいやいやいや、驚くであろう」
「鳳炎、このおばさん誰?」
「ブッフォ!!」
「お、嬢、ちゃん? お姉さんでしょ? 私お姉さんだよ?」
「あ、ごめんなさい」
うーん無邪気さゆえの鋭い攻撃でしたね。
「よろしい。私はリゼ。貴方は?」
「アレナです。えーと、リゼさんも鳳炎と応錬と同じなんですよね?」
「あら? 知っているの?」
「はい」
『アレナは特別だから』
マジで特別……っていうか特殊だから。
まぁ人数も揃ったことだし、そろそろ出発したいのだが……。
そう言えばリゼの冒険者ランクはいくつなんだ?
「持ってないわ」
「なに?」
「だから貴方たちに勝手についていくわ」
あー、そういうことね……。
まぁ別に問題ないんじゃないかな?
とりあえず一般人とされているリゼだけど、最終進化先まで言っているというし力量はとんでもないほどあるだろう。
だが鳳炎は苦い顔を浮かべる。
どうやらあまりよろしくない行動のようで、どうするか悩んでいたらしい。
「ここで話すのはマズいか。とりあえず依頼を受けて外に出るぞ」
ということだったので、まずは依頼を受けて外に。
アレナが依頼を受けたので、受付自体は問題なく終了した。
外に出た俺たちは、小さな話し声で周囲に声が聞こえないように配慮する。
とは言っても俺は関係なのだが。
『鳳炎、どうしたんだ?』
「いや、流石に一般人を冒険者が連れまわして依頼を共に受けるというのは良くないのだ」
「私強いから大丈夫よ?」
「そういう問題ではない。パーティー同士の協力は問題ない。だが今回の場合報酬などはもらえないし、パーティー外メンバーが協力しての討伐となれば、ランク昇格に関わってくる問題が発生するのだ」
あー……そういうことね。
つまり三人のパーティーで討伐が難しいCランクの仕事があったとして、それを四人で討伐したとする。
そうなれば報酬は貰え、ランク昇格の足掛かりになるが、Bランクの仕事はその三人では絶対に不可能。
運よく昇格試験を突破したとしても、待っているのは危険極まりない仕事ばかりとなるわけか。
登録外の協力者と依頼を達成することは、非常に簡単に依頼を達成できるが、次を見据えてみると穴だらけになる。
それを鳳炎は危惧しているのだろう。
勿論発見された場合、それに対する罰金なども課せられることがあるらしい。
それは不名誉な事だ。
「めんっど臭いわね冒険者って……。もっとお気楽なものじゃないの?」
「常に死と隣り合わせなのだ。こういうことに関しては厳しいのだよ」
「分かったわ。じゃあ別の方法で行くわね」
「は? おい待て! 何処に行くって速いなおい!!」
凄い速度で走って行ってしまった……。
これどうなるんだ?
ま、まぁ……とりあえず俺たちのやることは変わらないし、洞窟に向かうとするか……。
『鳳炎、情報収集頼む』
「……期待するなよ……」
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