5.13.謝罪
えーと、応錬です。
今はギルドに戻ってきて椅子に座っています。
俺の隣には先程ボコボコにされたツァールが座っている……。
え、死んでないよね?
色抜けてない?
どうしたんさっきまでの威勢は……。
「応錬君と言ったね。先程はすまなかった」
「えーっと……こいつの弟さんだったっけ? そんな会話してたからそうかなとは思ったけど……」
「ああ。私は騎士団長のロイガー・カーフェードだ。君の隣にいる人物こそ、私の兄……。クズだが……根は良い奴なのだ。許してやって欲しい」
「お、おう」
騎士団長……?
弟が団長で、兄が副団長なんだ。
なんかわかりにくいっていうか、面倒くさいんだけど……。
普通兄が騎士団長じゃね?
いやまぁこんな団長嫌だけどさ。
てかクズって。
兄に向けて放って良い言葉じゃない気がするぞ……。
「で? なんか用があって私の所に来たのよね? さっさと話なさいよ騎士・団・長・殿?」
「わ、分かりましたからその剣幕を引っ込めてくれませんか……」
あれ、マリアの方が立場上なのか。
意外だ……。
マリアはそう言われて、殺気とも言えないその雰囲気をかき消した。
大きくため息をついてから、ロイガーは話を進める。
「今回の件についてです。私どもはこの戦いに参戦することが出来ないのです」
「なんでよ。国を守る為の騎士団でしょうが。それなのにどうして私は門前払いされたわけ?」
「これは一部の者しか知らない事なのですが……。今王が不在なのです」
「王が? それの何が関係あるの?」
え、ちょっとまってマリアてめぇ。
「お前王に謁見するっつって会ってねぇのかよ!!」
「仕方ないじゃない! 頼んだけど本当に門前払いされたんだから! それにはっきり言われたわよ! 俺たち騎士団は出兵しませんってね! ていうかロイガー!? 貴方の部下でしょどうなってんの!!」
「いやだからそれを説明するために来たのです……」
そう言えばそうでしたね。
とりあえず聞きたいことはあるけど、まずは言い分を聞くとしよう。
「王は今お忍びでバルパン王国にいるのです。その理由は私たちにも知らされていません。そして私は団長を務めさせていただいておりますが、軍を動かす権限はありません。騎士団は国の物。国は王の物。なので王かその代理の指示が無ければ動くことが出来ないのです」
「流石に代理はいるのよね?」
「います」
「そいつは何をしているの?」
「…………あの……えーっと……」
ん?
ロイガーの奴なんか言いにくそうにしているな。
流石に王の代わりになる人物はいるだろう?
まぁ側近とか、国を管理している人とか……政務をこなしている人とかいるはずだけど……。
え、なんで言いにくそうにするんだ?
「はっきりしなさい」
「……実は……それが王子でして……」
「「ん?」」
ごめん待って。
「え、王子って何歳?」
「こ、今年十二歳になるかと……」
「社交デビューすら終わってないじゃない!! 何を考えているの!!?」
んな子供に騎士団を動かす権限をやるなよ!!
マジで何考えてんだ!!
てか誰だこんなこと考えたやつ!!
あれ、でも子供がこんな危機を目の前にして黙っている訳ないよな……。
外から魔物が来てますよ。
騎士団使いますか?
どうしますか?
って言われたら使うって言うに決まってるじゃん。
子供は単純で純粋だからな。
で、どうしてそうなった。
「何故そうなったのかは分かりません……。王が王子に甘いだけなのか……誰かの陰謀なのか……。なんにせよ王子が行けと言うまでは動くことが出来ず、城の守備に当たるしかないのです」
「じゃあ王子に直接言えばいいじゃないの」
「それができたら苦労しません……。王子に取り付こうとする貴族がどれだけいると思っているのですか……」
ああー、そういうのあるのね……。
全然そう言うのわからないから何とも言えないけど、邪魔になりそうな奴は接触すらさせようとしない魂胆かな。
ていうか勝手に動いちゃいけないの?
とりあえず国のピンチですよ?
「勝手に動いたらまず私は団長を辞めることになる」
「うわぁ……めんどくせぇなぁ……」
「歯痒い事この上ない……」
騎士団長的にはやっぱり動きたかったのね。
よかった。
とりあえず悪意は無かったようだな。
でも滅茶苦茶ぶっ飛んでんなぁ……。
騎士団は国の物、国は王の物ってなんかすごいんだけど。
こういうのって普通あるのか……?
まぁあるからこんなことが起きているんだろうけど。
俺の知ってる騎士団とは随分違うな。
まぁそっち系の知識は無いけど……。
いやだとしても王子に任せるってのはおかしな話だ。
子供だろう?
普通王の側近とか、軍事職に就いている奴に任せるのが妥当なんじゃないか?
それこそロイガーとか適任じゃん。
なのに王子……何で……?
それは誰が認めて、誰が提案したんだ……?
んー、わからん。
でも防衛には流石に参加するでしょ。
じゃないと俺たちも困るし。
まぁ冒険者からはよくみられないだろうけどね。
問題は王子の説得……になるのかなぁ?
俺は国の事とかよく分からんし、騎士団や貴族の立場もよく分からん。
俺から言えることは殆どないなぁ。
「私もこれから王子に謁見できるように取り計らい、この事を直接耳に入れていただくようにしてみます」
「本当に頼むわよ。せめて防衛だけは来なさい」
「ですが準備にどれだけかかるか……」
「そんなこと知ったこっちゃないわよ! 来いったら来い! いいわね!」
「わ、分かりました……」
……ん?
「あれ、ロイガー? 王子ってこの現状のこと知らないの? 魔物の軍が来てるのに」
「え? いや……そんなことは無いはずだが……。私からはまだ報告はしていない。私もマリアギルドマスターが帰ってからその事実を知ったのだ。私からは報告していないが、他の者が報告しているはずだ」
「……本当に?」
「え、いや……。私からはこれ以上言えないが……」
魔物が来ているという事は冒険者は勿論、他の住民も知っている事だ。
マリアが城にこのことを伝えに行ったし、その情報が衛兵から流れていてもおかしくはないと思う。
となると……。
「本当に王子はこのこと知らないんじゃ……ない?」
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