第27話 お嬢VR世界へ
「さて、ついにこの時が来たな……」
祐一は六畳間に並ぶ三人の少女を見やる。
普段学校ではアイドル的な人気を誇る生徒会役員の少女達。しかしことゲームに関しての知識は小学生以下、全くの0と言っても良いほどのポンコツ共である。
だがこの一か月、彼女達は様々なレトロゲームに挑戦し、時にゲーセンへ足を運び、時にお泊りで徹夜ゲーを経験した。
その目は初めてゲーム実況をやりたいと言っていた時の、年相応の少女の物ではない。
ドラゴンファンタジーのような王道ゲームから、スペラ○カーのような鬼畜ゲー、浦太郎電鉄99年耐久、果ては乙女ゲーを本名プレイでクリアした猛者達。
この短期間でポケットボーイからPSJOYの名作を次々にクリアしてきた。
――面構えが違う。
元よりクールな表情をしたいろは、アンジェ、レオの三人の目に光はなく、瞳の奥深くに飢えた狼のような獰猛なゲーマーの本性が垣間見える。
今の彼女達に以前のようなゲームをなめたような思考は一切ない。
ゲームはやるかやられるか。楽しむか楽しまれるか。そのどちらかしかないのだ――。
祐一は三白眼気味の鋭い眼光で、VRJOYのヘッドセットを握る。
「今まで経験してきたレトロゲームは”コイツ”が出る前の旧時代の作品だ。据え置き機を駆逐したと言っても良い次世代型ゲームハードVRJOY……。現在
祐一はヘッドセットのゴーグル部分を撫でる。
「VRJOYのスペックがいかに優れているかというのは、様々なハードのゲームを経験してきた君たちに細かく伝える必要はないだろう。演算機能も物理メモリも一昔前にNASAが使っていたスパコンと同レベル。クラウド機能によるほぼ無尽蔵な保存領域。ドットゲームから3D、3DからフルHD、そして4K8Kと重ね、いくつものVRもどきを量産した後に出来上がった完成品……。もうモニター前でゲームをプレイする時代は終わりを告げた……。そう……ゲームはゲームの中に入って楽しむというドライもんの想像する未来がやって来――」
祐一がVRについて熱弁を振るっていると、響風が彼の脇腹にエルボーを入れた。
「おごぉ……何を」
「兄者長い。お前は
「ゲームを楽しむにはまずゲームの歴史から。これから脳科学史編の説明とTcpipV11の新たな伝送方式がもたらした技術革新の――」
「ゲーオタキモイ」
「テメェにだけは言われたくねぇわ!」
「ってか、このメンバーで初めて潜るんでしょ? ゲーム外で長々と説明してどうすんのさ」
「むぅ、初見のリアクションも大切か。それじゃ皆ヘッドセットを被ってくれ」
そう言うといろはが手を挙げて質問をする。
「どうした委員長?」
「このゴーグルの横に、何かカードを差し込む場所があるんだけど、これは何も挿さなくていいのかしら」
「いい質問だ。アンジェなんだと思う?」
「わかりましたわ! そこはきっとクレジットカードを差し込むのですわ!」
「そんな露骨なモノつけんだろ」
アンジェの解答にレオが呆れるが、祐一は首を振った。
「いや、実はクレジットカードのスロットであってるんだ」
「あ、当たった」
「クレジットカードっていうより、ゲームマネーカードを挿すスロットで、ウェブマネーとかを入金したカードを挿入できるんだ」
「クレジットカードは入らないの?」
「いや、入る。ただ紛失したとか、入れっぱなしにしてしまったとかを防ぐために普通はゲームマネーカードを使う。後子供はそもそもクレジットカードなんか持ってない」
「なるほど」
「今回は別に課金とかしないから挿さなくて大丈夫だ」
全員が理解してヘッドセットを被る。
「さて今回やるゲームだが、皆の希望で【ギャングorヒーロー】になった。俺や響風の配信見てた奴はわかると思うが、ギャング側とヒーロー側に分かれて対戦を行うオンラインマルチプレイ型のバトルアクションゲームだ。今更オンラインマルチについての説明はしないが、ようは不特定多数のユーザーとネットを介して一緒にゲームをする。マナーを守ってゲームを楽しんでくれ」
用語などに関しては頭に入れているお嬢様三人はコクリと頷く。
祐一もヘッドセットを自分の頭に被る。
「ゲームが始まったらいきなり対話形式のキャラクターメイクが始まる。それが終わったらゲームロビーに転送されるから、俺はそこで待ってる。後のことは
そう言って祐一は側頭部にあるVR装置の電源を入れる。するとヘッドセットにグリーンのLEDの光が灯る。
祐一が仮想世界に入ったのを確認すると、三人のお嬢は示し合わせたかのようにヘッドセットを外し、カードスロットルに黒塗りのカードを挿入する。
それを見ていた響風は笑ってしまう。
「容赦なく課金する気でわろた」
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