ヤンキーゲーム実況者はお嬢様のゲーム教師にされました
ありんす
#1 実況者 桧山U1
第1話 プロローグ
「さて……いよいよゲームの中に入るわけだが……。この前出した宿題はやったな?」
祐一は自宅に集まった三人の少女を見て顔をしかめる。
六畳間のちゃぶ台を囲むのは、皆どこに出しても恥ずかしくないご令嬢で、左から理知的な学級委員長、学園の帝王と名高い生徒会長、若干天然入ってるが育ちの良い風紀委員長。
こと勉強に関しては右に出るものがいない猛者たち。
机に置かれた分厚い参考書に、ノートを広げる姿は天才たちの勉強会のようにも思える。
しかし参考書と思われた書物の背表紙には【ドラゴンファンタジー完全攻略ガイド――ファミ●】と書かれており、教鞭をとっているのは教師ではなく目つきの悪いヤンキーだった。
「当然ですわ」
「やったわ」
「任せてほしい」
「じゃあ行くぞ……この黄色い丸の中にギザギザが入ったアイコン。これは何属性をあらわしている?」
「簡単よ、はい」
「委員長」
「感電注意よ」
「惜しい違う」
「はい!」
「アンジェ」
「工事注意ですわ!」
「違う、遠ざかった。スマホとかにたまに映るときあるだろ」
「はい」
「生徒会長」
「電気タイプ」
「正解!」
「フッ、この程度造作もない」
「嬉しいけど、そこまでどや顔するもんじゃない。じゃあ次、状態異常、バッドステータス。ゲーム内ではデバフと呼ばれる、このハートアイコンがキャラクターに付与された時どういう効果が起きる?」
「はい!」
「アンジェ」
「恋に落ちる」
「素敵な回答だけど違う」
「はい」
「委員長」
「子供ができた」
「それをデバフと言わないで」
「はい」
「生徒会長」
「愛してる」
「突然告白しないでください。違います。これは魅了効果で、付与されると行動が出来なくなる」
「……難しすぎではありませんの?」
「普通ハートは良好な効果ではないのか?」
「そもそもなぜ魅了されて動けなくなるのかしら?」
「はい、システム自体に突っ込むのはやめて下さい。とりあえず今日は座学を1時間延長したいと思います」
「「「えぇ~」」」
露骨に顔をしかめる少女達。
「今の状態でゲームをしても100%最初の段階でゲームオーバーになります」
「我々こんなに勉強してもまだゲームに触れないんですの?」
「あなたたちにはゲームの蓄積と言うのがありません。ゲームというのは当たり前のように、先ほどの雷アイコンのようなものが出てきます。あれはゲームをしている人にとっては信号と同レベルです」
「そ、そこまでなの?」
「ちなみに上級編として、これはFPSのゲーム画面です」
祐一がスマホからゲームのスクリーンショットを見せると、少女達は戦慄する。
「な、なぜこんなに数字が多いの?」
「体力ゲージと言う奴ではありませんの?」
「体力は下にある緑のバーです。左下のはスコアゲージ、戦力ゲージ、残り敵数、上のは自分のキル数とデス数、右下のはメインウェポン、セカンダリウェポンの弾数、特殊ウェポンの残り使用時間、スコアストリーク報酬、うっすら映っているのはスタミナゲージ――」
「もうやめて! 難しい言葉の洪水を一気に投げかけないで!」
「こんなの人間ができる範囲を超えていますわ!」
「FPSはこのゲージ全てを管理しながら敵を倒してもらいます」
「拷問じゃないか!」
三人の少女は耳から煙を吹いていた。
「では初級編に戻ります。この赤、青、緑、茶、黒、白のカードを並べ替えて6属性の相関図を作って下さい。ゲームやったことある人なら3秒でできます」
「簡単だ。黒を混ぜれば全て黒になる。よって黒が一番強い」
「色の話はしてません。やりなおしでーす」
「赤が情熱的で人気があるから赤が一番強いですわ!」
「陽キャの話もしてませーん。やりなおしでーす」
「ぐぅ、なんて腹の立つ顔なのかしら……」
「間違える度にひょっとこみたいな顔するわね……」
「ちなみに属性の話なので一番強い色とかありません」
「嘘でしょ……ないの?」
真剣な顔をしてカードを見る少女達を見て、祐一はこらまだしばらくゲームは無理そうだなと思う。
「もうねこんなんでゲーム実況やろうとかね、ヘソで茶を沸かすレベルよ。多分猫がやった方がまだ視聴数稼げる」
「わ、わかってますわ! だからあなたに”指導”を頼んでいるのでしょう!」
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