第29話-葉奈ちゃん

 時は少し過ぎ、今は授業が終わって、放課後になった。

 帰る準備をする人や、おしゃべりをする人、そして部活に行く人。

 それぞれがそれぞれの行動をとる。


 そんな中、俺は知幸と一緒に帰る準備をしている。


「亮一。今日は妹さんの迎えあるのか?」


 今日は妹達の迎えに行かなくていい日だ。お母さんが仕事早く終わるから、お母さんが迎えに行くのだ。


「ううん。今日は迎えに行かないよ」


 すると知幸は提案をしてくる。


「よかったらうち、寄ってかないか? 久しぶりにゲームしようぜー」


 思えば知幸のお家にはしばらく遊びに行ってなかった。

 遅くならなければ寄っても良さそうだ。


「じゃあちょっとだけお邪魔させてもらおうかな」


 こうして俺は知幸のお家に向かうのだった。


 知幸のお家は、飲食店をしていて、昔はよく食べに行っていた。

 料理の腕が上がったのも、料理を作っているところを見学させてもらって、作り方など見てきたから、何てこともある。


 表が飲食店で、裏に回ると玄関になっている。家と一体型になっているのだ。


 しばらく会っていない知幸のお父さま、お母さまに挨拶をしたいので、家に上がる前に、表の飲食店側に入ることにする。

 (知幸のお父さま、お母さまはここで働いているから)


 お店のドアを開ける。


「いらっしゃいませー」


 店内を見渡すと、コーヒーを飲みながら、パソコンをいじっている人や、学生さんなどがいる。


「何名様でしょうか……って…亮一さん?!」


 迎えてくれたのは知幸の妹、葉奈はなちゃん。今は中学二年生で、よくなついてくれている。


「久しぶり葉奈ちゃん」


 葉奈ちゃんは俺の顔を見るなり急にもじもじしながら話してくれる


「久しぶりです亮一さん。今日はどうされたんですか?」


 少し上目遣いで聞いて来る。


「今日は知幸にゲームをやらないか誘われて来たんだ」


「そうだったんですね。久しぶりに会えてうれしいです」


 久しぶりに見る葉奈ちゃんは少し背が伸びているように見えた。

 けどそんなことは口にはしない。背とかって、思春期だと気になるでしょ?


「俺も久しぶりに葉奈ちゃんに会えてうれしいよ。葉奈ちゃんはお店のお手伝い?」


「そうです! でも亮一さんが来るならこんなエプロン姿じゃなくて、可愛い服が良かったです」


「エプロン姿、似合ってるよ。可愛い服とか気にしなくても十分可愛いと思うよ」


 葉奈ちゃんは顔を少し赤くした。


「やっぱり亮一さんはずるいなぁ」


 と、ここでずっと黙っていた知幸がつぶやく。


「おまえ亮一の前だといい子っぽいのにな……」


 その一言で、葉奈ちゃんの様子が変わり、葉奈ちゃんの後ろからメラメラと鬼が出てきそうな雰囲気で、


「兄さん。後でお話しましょうね」


 と、怖い笑顔で言った。

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