2-1
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「お前、採用だ」
そう言ったのは、ベースの宵闇だな。確かリーダーだ。よいやみ、って変な名前。何だそれ、名前か?
髪下ろしててスッピンだけど、写真とそこまで顔変わんねーな。キツネみたいなこえー顔。
ていうか。
「は?」
「入って来い」
「あ、ああ…」
何だこいつ偉そうに。俺と二つくらいしか変わんねーはずだぞ。
持って来たペダルやらスネアやらの荷物を運び込んで、ドラムセットに向かおうとすると、宵闇が手招きをする。
「あ?」
「荷物その辺置いといて、こっちに座れ」
「はぁー?」
見ると、宵闇が足と腕を組んでそっくり返ってる向かいにパイプ椅子がある。
周りには残りのメンバーと、スタッフが何人か。
荷物をおろして、パイプ椅子に座る。
「髪、染めろ」
「はい?」
宵闇は俺の金髪をじろじろ眺めながら言う。
「紫が良い」
「イヤだね」
何だよ紫って。人の髪に好き勝手言うなよ。
「いや、紫にしろ」
「しねぇし」
「紫だ」
「断る」
俺がキッパリとそう言うと、宵闇は唇の端を僅かに上げた。
笑ったのか?
「それと、ステージネームは夕だ。夕方の夕」
「待て、何でそこまで決まってんだ」
「今決めた」
「あー!?」
どういうことだ。っていうか、髪の色といいステージネームといい、加入が決まったみたいな話じゃねぇか。
「来週からレコーディングする新曲のデモはこれだ」
宵闇は手元の資料らしい紙束と、一緒に持っていたCDロムを俺の前に差し出す。
「タイトルはHate or Fate」
「おい、まだ加入するって決まったわけじゃ」
ほぼ冷やかしと付き合いで来たんだ。加入する可能性なんか、少しも考えてない。
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