第32話 物思い少女
兵士宿舎 私室
その日の夜
エアロは自分の部屋で、考え事をしていた。
人からもらったもの以外余計なものが存在しない簡素な部屋の中、
ベットに体を横にするエアロは枕に顔をうずめたまま、今朝の事を思いだす
それは一日が始まってすぐ、休憩寮を訪れた時の出来事だ。
エアロは子供達にじゃれつかれ遊び相手にさせられて、くたくたになっていたところをレフリーに助けられてお茶をご馳走になっていた。
そして、興味深い様子で戸の隙間からこちらを伺う子供達をにこやかに撃退した彼女は、神妙な顔をして話を切りだしたのだ。
エアロが使える主、コヨミについての話を。
レフリーの言葉を一つ一つ頭の中で並べていく。
「うちの娘のコヨミの事、エアロさんはどう思ってるのかしら?」
確か、その言葉には尊敬できる主だと答えたはずだ。
「あらあら、尊敬できる主……。あの子はそんな大層な事が務まる様な子じゃないわよ」
そんな事はない。エアロは言った。
「残念ねぇ、貴方なら良いお友達になれると思ったんだけどねぇ」
けれど、相手は顔を曇らせてそう返すのだ。
ここで私は首をひねったはずだ。
何かおかしな事を言っただろうか、と。
「ひょっとしたら貴方の存在は、あの子の負担となってるかもしれないわね。なんて、ただの一人事よ、気にしないでね」
気にしないで、といいつつも気になる風にってくれるのだからタチが悪い。
たおやかなのは見た目だけなのだ。この人は。
それなりの付き合いがあるので、分かっている。
「私は、姫様の迷惑になっているのでしょうか」
レフリーは適当な事をいう人間ではないという事をエアロは知っていた。
だから彼女の口から述べられた言葉はまったく事実からかけ離れた事ではないのだ。
「姫様の事を思うなら、態度を改めるべきだと思いますが……」
自然とそうしたくないと思うのだ。
それが彼女の為にもなるのだと
そう思いこんで……。
そこまで考えてエアロは気が付く。
「……何だかこれじゃあ、姫様のことを思ってるんじゃなくて……」
自分の為にしている行動ではないのか、と。
エアロは思えてきた。
自分が尊敬する人間は、尊敬に値する素晴らしい人間でいてほしい。
そんな願望が入り混じっているのではないか、と。
そうだとしたら……。
それが自分の本心だとしたら。
「なんて嫌な人間でしょう」
自分の事が酷く嫌いになりそうだった。
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