第二幕 小さな旅路

序章 全てが壊れて




 ……何故。

 ……どうして。


 世界は私を裏切った。私は世界に裏切られた。

 私をとりまく世界は、手の平をひっくり返すように変わってしまった。

 あっさりと、唐突に。

 黒が白に変わるように、白から……黒へと変わる様に。

 まるで、正反対に。


 砂でできた城のようだった。とても脆くて儚い存在。

 水面に浮かんだ月のようだった。とても弱くて、頼りない。


 あれだけ、長い時間をかけて築いてきた物が、積み上げた全ての物を無視して、あっさりと壊れてしまう。

 その様子を見て。

 みすぼらしい姿を晒すのみとなってしまった残骸を見て。


 私がしてきた事は何だったのかと思う。

 絆は無意味で、作り上げてきた物は簡単に壊れる。

 全て無駄な事だった。


 私は思う……。

 私は……。


 …………だから世界を壊そうと。

 その時、そう思ったのだ。


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