化物の夢
ホルツヴァーグ魔導国に身を寄せるアルトリアは、女生徒に扮する母メディアと幾度か話を交わす。
あの『
「――……結局は
「そうそう。私もあの時、『黒』に聞いた話なんだけどね」
「だとしたら、『黒』と『白』の間で
「実際、そうだと思うけどね。
「人間に対する憎悪ね。……どうして【
「うーん、話していいのかな? ……あっ、良いみたい。君になら」
依然と同じ場所で
アルトリアにとってそれはメディアと改めて対峙した際に有益な情報を得る為でもあったが、純粋に自分の知らない情報に興味を抱いていたからでもあった。
そして魂の回廊を通じて承諾を得たメディアは、【
「三千五百年前くらいに起きた第一次人魔大戦。それが二千五百年前に終息したってのは知ってるかな?」
「ええ。【
「実はその直前、人間側から
「!」
「人間側の
「ある人物?」
「【鬼神】フォウルの息子、フォルス」
「!」
「【
「【
「フォルスは人間を信じてたし、信じたかった。だから【勇者】と一緒に説得して、二人を連れて【大帝】と会う為に人間大陸へ向かった。……でも結局、それは罠だった」
「……」
「そういえば、第一次人魔大戦を起こした【大帝】の目的は知ってる?」
「……知らないわ」
「【大帝】の目的は、地上に在るマナの樹を全て破壊すること。そして、その大樹から生まれた
「!」
「千年の間に七本のマナの樹を全て破壊した【大帝】は、実から生命となった【
「……でもそれって、
「その影響を受けない方法も用意してたんだよ。自分自身の肉体を、全て機械にするという方法でね」
「!」
「生身の
「……まさか……」
「そう。ただ一人封じられなかったフォルスは、親友達を守る為に
「……」
「自分達を騙した上に
「!」
「
「……ッ」
「人間大陸が今でも残ってるのは、言わば
「……だから【
「そうそう。……今回の事態、
「……盟約を先に破ったのが、自分だから」
「正解。人間側が魔大陸に再侵攻した第二次人魔大戦を、監視者である
「【
「そうだね。例え
「彼って、あのゴブリン……【魔神王】のことよね。どうして【魔神王】だけが、【
「それは彼が――……あっ、それ以上は言っちゃ駄目みたい。それと、【
「そんなつもりは無いわ。……代わりに一つだけ、【
「……内容次第だって」
「そう、なら知ってたら答えて。――……七つの
「……」
「『黒』が私に教えた方法。
「……それだと欠片は一つに纏まらない。欠片を一つに戻すのは、欠片を持つ者を殺すのが大前提だってさ」
「そうね。……でも、目覚めさせるだけなら?」
「!」
「今も眠ってる女の子。
「……その為には全ての欠片を持つ者を集めて、寝ている女の子がいる場所まで連れていく必要があるね。でも
「なら、それを私がやるわ」
「!」
「私が欠片を持つ者を説得して、その子を目覚めさせるのを手伝わせる。だからアンタ達は、それを承諾して協力してくれるだけでいい」
「……その代わり、欠片を持つ者達や人間達に危害を加えるなってことね。しかも、
「ええ」
メディアを介して【
すると口を閉じたメディアは僅かに頭を頷かせ、答えを伝えた。
「――……やってみろってさ。私も邪魔しないし、人間も襲わないよ」
「言質、取ったわよ」
「その代わり、こっちも聞きたいことがあるって」
「なに?」
「どうしてそんなに人間を庇うんだ? だって」
「庇う?」
「君にあんな酷いことした
「!」
「
人間を守るようなアルトリアの言動を理解できないメディア達は、そうした問い掛けを向ける。
するとアルトリアは視線を落とし、影を宿す表情で本音を明かした。
「……別に、人間なんか滅びてもいいと思ってるわよ」
「へぇ」
「でも失敗したことをもう一回やっても面白くないし。だったら、別のことで楽しみたいと思うのは普通でしょ」
「別のことっていうのが、人間を助けること?」
「それは
「完成させたモノ?」
「そうよ。――……私達が命を賭けて育てた『
そう言いながら
その背中を見るメディアは、呆れるような微笑みと言葉を浮かべた。
「なんだ、君もちゃんと持ってるじゃない。――……自分の『
そう評すメディアは、アルトリアとログウェルの持っている『
こうして親子とは程遠い会話を交わしながらも、アルトリアとメディアは互いの理解を深めていった。
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