交差する仲間達
樹海において大族長パールの出産を介助したアルトリアは、産まれた彼女の子供に父親と同じ
しかしその子供が
それから二日ほどが経過し、アルトリアは出産後のパールと
同時に子供に
「――……状態は良し。でも、やっぱり
「すまないな。当てが外れたようで」
「なんで
「そうか? なら気にしない」
甥であるラインの様子を診てながらも渋い表情を浮かべるアルトリアに、パールがそうした言葉を向けて話す。
そうして話す二人を傍で見ていたケイル、パールに顔を向けながら尋ねた。
「
「私も全て把握しているわけではないが、探せば他の部族に居るとは思うぞ」
「なら結局、
樹海の部族で生まれた子供が
しかしその一方でもう一つの可能性を呟くと、アルトリアが反応しながら問い掛けた。
「どういうこと?」
「
「……その可能性は、あり得るわね。でもこの子が生まれた時期と
「
「そうなるわね。……でもそれらしい
「……エリク以外には思い当たらないな。もっと王国に詳しい奴なら、心当たりがあるかもしれないけどよ」
「ならまた、アルフレッドに聞くしかないかしら。一応、国王をやってたわけだし」
「どうだろうな。前に聞いて心当たりがないなら、結局はまた空回りってことになるぜ」
「んー……
「どうした?」
二人は話しながら悩む様子を浮かべていると、そこで
それに視線を向けるケイルに、アルトリアは自信に満ちた表情を向けて答えた。
「一人だけ、心当たりがあるわ」
「へぇ、誰だよ」
「マシラ王ウルクルスよ」
「え?」
「あの
「……そういえば、言ってたな」
「元『
「……どっちにしても、確かめなきゃ分からないか」
「そういうことね」
別未来で死にながらも
そんな二人の話を聞いていたパールは、アルトリアに向けて話し掛けた。
「もう行ってしまうのか?」
「ごめんなさいね、ちゃんと責任を持って診ててあげたいんだけど……」
「いや、お前のおかげでまた助かった。感謝している」
「私が出来る、当たり前の事をしただけよ」
「そうか、お前らしいな。……またいつでも
「ありがと。色々と用事を片付けたら、また来るわ」
そう言いながら二人は以前のような握手を交わし、互いに友情の挨拶を向ける
しかし二人の握手が離れた瞬間、それを見ていたケイルが建物の外に意識を向けながら驚愕の声を漏らした。
「……なんだ、この気配っ!?」
「ケイル?」
「かなり大きな
「えっ!? ――……パールはここに居て、私達で見て来るから!」
「あっ、それは――……」
ケイルは外に大きな気配が向かって来ることを感じ取り、急ぐように建物の中から出て行く。
それを追うようにアルトリアも走り出し、何かを言い掛けたパールの言葉を全て聞かなかった。
そして建物から
するとそこには、二人が今まで見た事の無い魔獣が飛んでいた。
「――……おいおい、なんだありゃ……!?」
「あの姿、もしかして
「
「『青』の話は本当だったのね。まさか
二人は
すると
「あっちは確か……決闘場がある場所だわ!」
「どうするっ!?」
「貴重な
「チッ、
「私が何とかするわ。もしもの場合は、貴方はパール達を連れて避難を」
「分かったよ」
二人は
そして
するとそこで、二人は驚くべき光景を目にする。
「――……えっ!?」
「……こりゃ、もしかして……巣なのか……!?」
二人が見たのは、決闘場の中央に数多くの草や
そこに降りながら四本の脚で着地した
するとそこには、鳥の卵の数十倍はあるであろう巨大な卵が三つも存在している。
それを見た二人は、
そうして驚きを見せる二人に、降り立った
そこで鋭い眼光と唸り声を向けながら、二人に対して威嚇を向け始めた。
「ガァルル……ッ!!」
「お、おい。なんでここに、
「そんなの、私も知らないわよ。……
「……これじゃあ、追い払うのは無理だろ」
「そうよね。でも、どうしたものかしら……」
かと言って自分の
そうして対処に困る状況に陥った二人だったが、その背後から声が掛かった。
「――……二人とも、ちょっと待て!」
「パールッ!? 貴方、追ってきちゃったのっ!?」
「おいおい、まだ動いたら……!!」
「それより、今ここに近付いたら駄目だ。アイツもピリピリしてる」
「アイツって、
「ああ。――……すまなかったな! 私の友と客なんだ、許せっ!!」
「……ガゥ……ッ」
「!?」
出産を終えたばかりにも関わらず追いかけてきたパールに、二人は慌てる様子を見せる。
しかしそんなパールは二人より更に前に歩み出て、
すると威嚇していた
そして自分の卵を囲むように座り、眠るように瞳を閉じた。
まるで
「パ、パール……貴方……」
「もうすぐ、アイツも子供が生まれる。それまでは
「そ、そうなの。……でも、なんで
「私が手懐けて、巣も
「えっ」
「……
「前に
「……じゃあ、危険は無いの?」
「今は私以外が近付くと、ああして威嚇するんだ。もっと近付くと火も吐くから、
「え、ええ」
「……どうなってんだよ、ここの
そうして決闘場から出るよう伝えるパールに、二人は従いながら歩み出る。
そして改めて
「……慣れてるのね。ここの人達も」
「最初は驚いていたが、もう慣れたものだ」
「そ、そう。……パールは、やっぱり凄いわね」
「そうか?」
「でも出産後なんだから、一ヶ月は安静にするのよ。走ったり跳んだりは勿論、鍛錬も狩猟もダメ。いい?」
「ああ、分かったよ」
釘を刺すように安静にするよう伝えるアルトリアに、パールは微笑みを向ける。
すると
「……なんだよ?」
「アリスとエリオを頼む」
「!」
「二人は私にとって、大事な
「……お前に言われなくて、そのつもりだよ」
「そうか」
パールの差し出した右手に応じるように、ケイルも右手を差し出して握手を交わす。
互いに暮らした場所や部族こそ別ながらも、同じ族長家系に生まれた二人には奇妙な感覚で繋がりが生まれていた。
そうして二人が握手を離して別れの挨拶を終えたのを確認したアルトリアは、改めてケイルに近付きながらパールに声を向ける。
「じゃあ、私達は行くわ。子供や皆と一緒に、元気でね」
「ああ、お前達もな。エリオにはよろしく言っておいてくれ」
「伝えるわ。じゃあね――……」
ケイルの右腕に触れたアルトリアは別れの挨拶を見せた次の瞬間に、その場から二人で姿を消す
それを見送るパールは僅かに寂し気な微笑みを浮かべた後、自分の子供が待つ建物の中へ戻っていった。
こうしてパールと再会しその子供の出産に立ち合った二人は、次の可能性となるマシラ王ウルクルスが居るマシラ共和国へ転移する。
しかし彼女達が赴く二日前には、エリクとマギルスも
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