逃れられぬ運命
ウォーリスの魂を得ようとする悪魔ヴェルフェゴールと相対した未来のユグナリスだったが、真の
そして窮地に追い詰められた瞬間、悪魔達が崇拝し魂を献上する『
そうしてヴェルフェゴールが精神内部から去ったウォーリスは、全ての
そんなウォーリスに駆け寄るカリーナは、倒れ伏すウォーリスに寄り添いながら涙を流して呼び掛け続けた。
「ウォーリス様! ウォーリス様……っ!!」
「……」
カリーナの呼び掛けに対して、ウォーリスは瞼を閉じたまま意識を戻さない。
亀裂が入り崩れ欠けていた肉体の崩壊は止まっていたが、左腕を失いエリクから受けていた
そんなウォーリスとカリーナの姿を見ている周囲の者達だったが、最初に一人の人物が二人に歩み寄る。
それはエリクとケイルの傍に立っていた、アルトリアだった。
「――……アンタは、
「!」
「
「……ッ」
「それが自分の
カリーナを目の前にするアルトリアは、改めてウォーリスが犯して来た出来事を伝える。
それを鑑みて、ウォーリスを生かすべきか殺すべきかの成否を問い質した。
するとカリーナは言葉を詰まらせながら、ウォーリスの顔を改めて見る。
カリーナの記憶にあるウォーリスはまだ少年らしさが抜けない見た目だったが、今の彼は大人びた青年の姿でありながら、自分や多くの者達を傷付けながら歩み続けたボロボロの姿と成り果てていた。
そんなウォーリスを生き永らえさせたとしても、待っているのは重く圧し掛かる『罪』との戦い。
死を持ってすら贖い切れないであろう罪を背負わせてまでウォーリスを生かしたいのかと考えた時、カリーナはアルトリアへ視線を移しながら覚悟を決めた表情で答えた。
「私は、それでも彼に生きていて欲しいです……。……そして私も一緒に、彼の犯した事への償いを、一生を掛けて行います……!!」
「……それを、アンタ自身に誓える?」
「はい」
「そう。……だったら、誓ってもらうわ」
ウォーリスを生かし共に犯した出来事の償いを行うと伝えたカリーナに、アルトリアは冷たい視線で見下ろしながら右手を向ける。
そして
すると虚空に描かれた文字が粒子状に紐解け、カリーナの身体に注ぎ込まれる。
僅かに黄金色に輝くカリーナは驚きを浮かべると、アルトリアは改めて告げた。
「アンタに『誓約』を施した。条件はアンタが言った通り、アンタ達は一生を掛けて自分達がやった事の償いをする。……もしそれを諦めたり投げ出したりしたら、アンタは深い苦しみの中で死ぬでしょうね」
「!」
「その『制約』を条件として、
「……はい」
「そう。――……じゃあ、ちょっとそこ
「!?」
カリーナにそうした『制約』を施したアルトリアは、その対価としてウォーリスを治すと告げる。
すると周囲の者達は驚きを浮かべ、真っ先にそれを止めようとしたのは皇国皇王であるシルエスカだった。
「待て、アルトリアッ!! そのような勝手が許されると――……」
「うるさいわよ、役立たずその
「ッ!?」
「ウォーリスをここまで追い詰めたのは、エリクと私よ。コイツ等をどうしようと、私達の勝手じゃない」
「だ、だがっ!! コイツ等がお前の課した『制約』を守る保証が――……」
「守らなかったら、一人の女が苦しみながら死ぬだけよ。私達にはどうでもいい、たった一人の女がね」
「!!」
「コイツ等が
「……ッ!!」
「コイツ等はね、たった一人の
異論があるだろう者達に鋭く冷たい青い眼光を向けるアルトリアは、有無を許さない豪語を放つ。
それを受けたシルエスカを始めとした者達は表情を強張らせ、アルフレッドとザルツヘルム、そしてウォーリスを改めて見つめた。
「……この男も、
そんなアルトリアの話を聞いていたエリクは、ここに来て初めて対峙していたウォーリスの目的が目の前にいる
互いに命を削り合う激闘を交えたエリクは、それを目的としていたウォーリスに僅かな共感を抱いた。
そして倒れるウォーリスに歩み寄ったアルトリアは、屈みながらボロボロの肉体に右手を触れさせる。
すると周囲と地面を覆うような魔法陣が突如として展開され、周囲の者達が驚く様子を無視しながら肉体の修復を開始した。
「『
「……!!」
まだ微かに残る『
そして修復を終えて魔法陣が消え去ると、アルトリアはその場で再び立ち上がる。
時間にすれば数秒も経たないウォーリスの治療は、その場に居る全員を驚かせるに十分だった。
しかしそんなアルトリアから、その場に居る全員に警告が向けられる。
「あぁ、そうそう。言い忘れてたけど……もうすぐ、
「なっ!?」
「
「ッ!!」
唐突に告げられるアルトリアの警告に、その場の全員が表情を強張らせる。
それは誰もが止められたと考えていた
こうしてウォーリスは死を逃れながらも、世界の危機は再び舞い降り始める。
それは巨大な
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