赤の輝き
悪魔ヴェルフェゴールとの契約を破棄したウォーリスは、自身の魂を代償として奪われようとする。
それを止めようとする帝国皇子ユグナリスは、彼自身が知らぬ間に自分の
そこで初代『赤』の
そしてウォーリスに浄化作用のある『生命の火』を受けさせ、彼を救出する試みを実行しようとしていた。
「――……それで、俺はどうすればいいんだっ!?」
『落ち着け。まずお前には、
「えっ!?」
『今の
「で、でも……どうやって……!?」
『まずは目を閉じて深呼吸し、自分の
「……すぅ……はぁ……っ」
内側から伝わる
そして魔法師としての基礎である自分自身の中に存在する魂を感じ取り、意識を深く集中させた。
すると
『集中できているな。……なら次は、お前にとって大事な者達を思い出せ』
「……?」
『お前の家族、そして家族を支え続けた国の人々。……そして、お前が愛している
「……分かった」
言われるがまま自分の記憶を呼び起こすユグナリスは、自分が愛する大事な者達の姿を思い出す。
それを確認した
『お前は今、思い浮かべている大事な人達を守りたいと思えるか?』
「……ああ、勿論だ」
『その為なら、自分の命を賭けられるか?』
「当然だ」
『その想いを
「想いを、力に……?」
『そうすれば、お前も
「……っ!!」
助言を受けたユグナリスは、思い浮かべる大事な者達を守りたいと強く念じ始める。
その為に自分自身に
すると次の瞬間、ユグナリスの身体に『生命の火』が灯るように纏い始める。
感情任せではなく自分自身の意思で『生命の火』を出したユグナリスに、
『よし、とりあえずは合格だ。……次は目を開けて、炎が灯った身体で目の前の武器を掴んでみろ』
「……ああ」
瞼を開けたユグナリスは自身の身体に『生命の火』が静かに揺らいで灯っている事を自覚しながら、目の前にあるシルエスカの赤い槍を掴む。
そして槍にも伝わるように『生命の火』が移り燃えると、次の助言を
『今度は、掴んだ
「えっ!?」
『ルクソードの武器は、全て精霊の
「い、いきなりそんな事を言われても……」
『だから、そのやり方を教えているだろ。やってみるんだ』
「……っ!!」
無茶振りのような助言にユグナリスは思わず表情を歪めたが、それに素直に従いながら掴んでいる赤槍を自分の炎に溶かして取り込む
するとユグナリスの
それを見て驚きを浮かべたユグナリスは、そのまま握っている柄も消失した赤槍が『生命の火』に取り込まれ終えるのを確認する。
すると
『それと同じ事を、残る武器にも』
「え? で、でも……この武器が全て、必要なモノなんだろ?」
『そうだ。そして全ての武器を取り込んで、再構成する』
「再構成……!?」
『四つの
「そ、そんなこと出来るのか……!?」
『お前が出来ると思えなければ、出来るモノも出来ない。……それとも、奴が……ウォーリスがこのまま終わってもいいのか?』
「……!!」
そう問い掛ける
既に大量のエネルギーを放出しているウォーリスの身体が亀裂だらけであり、更にエリクが与えた深い傷のある左腕と左半身は徐々に崩壊し始めていた。
それを見たユグナリスはウォーリスを救い出せる時間があまり残されていない事を理解し、今度はセルジアスの持っていた赤槍を掴む。
すると先程と同じように『生命の火』に赤槍を粒子状に吸収させると、今度は地面に刺さる二つの剣を両手に握り締めた。
『二つ同時にやる気かっ!?』
「もう時間が無いっ!! それに出来ないと思わなければ、出来るんだろっ!?」
『……ああ、そうだな。やってみろっ!!』
「おぉおおお――……っ!!」
ユグナリスは自分の体に纏わせている『生命の火』を更に強め、両手に握る剣を炎に吸収させ始める。
すると両方の剣が同時に赤い粒子となって炎に取り込まれ、握り締めていた手から透けるように消失した。
そうして四つの武器を『生命の火』に取り込んだユグナリスは、言われた通りに自分が考えられる最強の武器を
「強固な壁を、壊せる武器……。……は、
『もう時間が無いぞ!』
「わ、分かってるっ!! ――……あっ!」
『!』
「そうだ、これなら――……っ!!」
ユグナリスは自分が経験した過去の記憶から、今まで戦った者達が握る武器で最も手強くこの状況に適した武器を思い浮かべる。
するとある一つの武器が思い浮かび、それに呼応するように両手を真上に掲げながら取り込んだ武器達の粒子を集結させ始めた。
『生命の火』と共に形作られる赤と白の粒子が、一つの姿に形作られる。
それは特級傭兵スネイクが使っていた
そしてスネイクを真似るように
するとそんな彼に対して、
『これが、最後の助言だ。――……リエスティアと
「……そんなの、当たり前だっ!!」
そして
するとウォーリスを覆うエネルギーの壁に赤い弾丸が衝突し、それを突破するように砕き割る。
更にウォーリスの胸に赤い弾丸が命中し、荒狂うような『生命の火』がその身体を覆い始めた。
それを見た者達が、それぞれに驚愕の表情と声を浮かべる。
「なんだっ!?」
「あの皇子、やったのか……っ!?」
逆側に居るユグナリスをエネルギーの波で見失っていたドルフやスネイクは、『生命の火』で燃えるウォーリスを見て事態を理解する。
そしてエリク達と共に居たアルトリアも、それを見ながら口元を微笑ませた。
「これだから、あの
そうしたユグナリスへの嫉妬染みた想いを零すアルトリアは、何が起こっているかを察したように呟く。
すると『生命の火』に包まれたウォーリスの精神世界に視点は移り、その中で魂を得ようとしている悪魔ヴェルフェゴールは
「おや、これはこれは――……
「――……悪魔! お前の好き勝手には、させないぞっ!!」
魂を掴んでいたヴェルフェゴールが精神世界の
そして激突するようにウォーリスの魂まで迫ると、魂から手を離して避けたヴェルフェゴールは正面に立つ人物の姿を見た。
それは
すると聖剣ガラハットを持つ『赤』の聖紋を右手に宿している未来のユグナリスは、悪魔ヴェルフェゴールと対峙した。
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