彼女の答え
アリアの精神を代価としながらも、
しかしアリアを失い
そんな彼等に対して、
それは
この
鬼神フォウルはその答えの意味を即座に理解したのか、周囲から響く『黒』に怒鳴るように問い質した。
「――……この
『そうだね、鬼神フォウル』
「ケッ。……どうも、どっかで聞いた声だと思ったんだ。テメェ、俺が
『そういえば、君とも五百年前に会っているね。……君と彼女が出会ったおかげで、
「……あの村で、俺とあの嬢ちゃんが会ったのも、テメェが仕組んだ事か」
『あの出来事も、
「ってことは、やっぱりあの聖剣を持った野郎と機械野郎はテメェの仕込みじゃねぇか。……だとしたら、俺はテメェに容赦はしねぇぞ」
フォウルは自身の
そして
しかしそのフォウルを止めるように、その場で耐えている未来のユグナリスが叫び止める。
「待ってくれっ!!」
「ア?」
「リエスティア! 頼む、俺の言葉にも答えてくれっ!!」
フォウルの攻撃意思を止めた未来のユグナリスは、周囲から響いていた『黒』の意思に問い掛ける。
それに応えるように、『黒』は未来のユグナリスに語り掛けた。
『ユグナリス。……いいえ、ユーリ』
「その呼び方……やっぱり、俺の知ってるリエスティア……!」
『
「それは、知れて良かったのかもしれないけれど。……でも、これは駄目だよ。リエスティア」
『……』
「君を犠牲にして、世界を救うなんて……。……そんなのは、俺が許せない……っ!!」
ユグナリスは渋るような表情を強め、そう言い放つ。
一度は失った
しかしそんなユグナリスの意思を否定するように、鼻で笑うような声がその場に響く。
それは憤怒によって『黒』の犠牲を容認した、鬼神フォウルだった。
「今更何を言うかと思えば、甘っちろい小僧の戯言か」
「な……!?」
「犠牲が嫌だって言うなら、既に俺達は払っちまってるんだよ。あのアリアって嬢ちゃんの、
「……!!」
「あの嬢ちゃんが、何の
「……あの、アルトリアが……」
「世界を救う為の
「……ッ」
呆れに近い憤りの言葉を向けるフォウルに、未来のユグナリスは言葉を返せない。
ここに辿り着くまでに犠牲となった多くの者達、そして自分達がこの場に居る為に全てを投じたアリア。
既に多くの犠牲を支払った結果としてこの状況がある事を知っているフォウルは、ユグナリスの言葉を強い口調で否定した。
そんな二人の会話を傍らで聞いていたケイルは、表情を強張らせながらある方角を向く。
そこには
「……アリア……ッ」
ケイルは一度は世界を滅ぼそうとしたアリアを忌み嫌っていたが、そんな彼女が最後に残そうとした
そして
「……お前を殺せば、
「!!」
『はい』
「その
『やってくれますか?』
「やるしかないだろ。……アタシは、アイツに託されたんだ。世界の事も、アイツの事も」
決意を見せたケイルは、『黒』を殺めて
この場において鬼神フォウルとケイルの二名が賛同する形となり、対立していた
それでも抗おうとする未来のユグナリスは、叫ぶように再び『黒』へ問い掛けた。
「他に、他に何か方法は無いのかっ!?」
『……他の方法を用いた、幾つかの未来はあります。しかしどの方法も、世界の破壊を食い止められなかった』
「!!」
『可能性があるのは、私が未来を視られなくなる状況の未来。つまり、
「そんな……。……そんなの……っ!!」
『ありがとう。貴方のくれた愛情によって、
「……ッ!!」
諭すように話す『黒』の言葉に、未来のユグナリスも言葉を詰まらせながら顔を俯かせる。
そして歯を食い縛りるような表情で瞼を閉じ、反対を示す言葉をこれ以上は口にしなくなった。
「……話は決まったな」
「ああ。……『黒』、アンタの消し方を教えてくれ」
『はい。
「――……なに、私抜きで……話を進めてんのよ……」
「!?」
「……お前……!!」
不本意な無言の同意を示した未来のユグナリスを見て、フォウルとケイルは再び口を開いて『黒』の消し方を問い質そうとする。
すると彼等とは異なる者の声がその場に響き、その場に居た全員を振り向かせた。
そこに居たのは、先程まで会話に加われずに意識の無かった人物。
「……アンタ達、好き勝手に喋って……。……私にも、話も聞きなさいよ……」
「アリア、お前……動いて平気なのかよ!」
「そんなこと、どうでもいいのよ……!」
「!」
立ち上がり歩み始めるアルトリアに対して、ケイルが歩み寄りながら揺れる
しかしそれを拒否するようにアルトリアは右手を上げ、ケイルを制止させながらユグナリスへ苛立ちの顔を向けた。
「アンタ、何また……諦めようとしてんのよ……!」
「ア、アルトリア……?」
「前に、言ったでしょ……。……アンタが馬鹿だから、本当に仕方なく、口だけは貸してやるわよ……!」
「……!!」
そう話を向けるアルトリアの言葉に、未来のユグナリスは困惑を浮かべる。
それは別の未来を経験した
しかしそんなユグナリスすら無視するように、アルトリアは改めて周囲の空間に存在する『黒』と対話を始める。
「リエスティア。……いいえ、敢えてアンタのことは、クロエと言うわ」
『!』
「クロエ。アンタは自分や
「……!」
堂々とした面持ちと揺るぎの無い態度でそう述べるアルトリアに対して、その場の全員が唖然とした様子を浮かべる。
誰に対しても毅然とした対応は、まさに彼等の記憶に存在する女性の姿そのものだった。
こうして『黒』を抹消する事で取り纏めようとした場を、波乱の一凛が吹き荒れる。
それは自分の存在を賭して
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