互いの理想
マナの大樹内部にて、再び邂逅したウォーリスとアリアは精神体での激闘を始める。
本来ならば圧倒的な戦闘経験と実力を誇るウォーリスだったが、生身ではない精神体での戦闘経験は皆無に等しい。
一方で現世と未来の
精神力の強さが最も影響する精神体の戦闘において、アリアは優位に立ちながら圧倒し始める。
しかし一秒毎にそれに対応するウォーリスの動きが、徐々に良くなり始めている事にアリアは気付いた。
「――……ッ!!」
「……なるほど。
蹴り飛ばし殴り掛かろうとしたアリアに対して、ウォーリスは初めてそれを防御しながら白い床に足を噛ませる。
そして自らも最も強い
瘴気と相反する
そして追い撃ちを掛けようと跳び蹴りを放ったアリアを剣で薙ぎ、鋭い足刀を迎撃して見せた。
「チィ……ッ!!」
その戦闘技術は圧倒的にアリアを上回り、その喉元に矛先を突き付けるまで十秒にも満たなかった。
「ッ!!」
「
ウォーリスは容赦なくアリアの喉元に矛先を突き入れ、アリアの精神体に
生身とは異なりながらも確かな衝撃と痛みを実感するアリアは、吹き飛ばされた後に床へ跪きながら呼吸を乱して吐血した。
「ガハッ、ゲフ……ッ!!」
「敗北を認めろ、アルトリア=ユースシス=フォン=ローゼン。……そしてお前も、幸福な
見下ろしながら右手に持つ
それに対して息を乱しながらも顔を上げたアリアは、口元を微笑ませながら嫌味ったらしく告げた。
「……
「!」
「家族や周りからは疎まれて、本音で話し合える相手なんか一人も居た事が無い。……オマケに婚約者や周りの連中は、馬鹿ばっかりだし。……だから私は、一人で静かに暮らしたいと思った」
「……ならば、その
「それは、もうやったのよ」
「なに?」
「実際にやってみたら、クソつまんない生活だったわ……。……毎日が変わらない、ただ生きるだけの日々。そんな刺激の無い理想なんて、もう私は求めちゃいないのよ」
「……ならば、貴様の理想とは何だ? こんな醜悪で理不尽に染まった世界の中で、お前は何を理想として見ている?」
そう問い掛けるウォーリスに対して、アリアは矛先を向けられたまま立ち上がる。
そして吐血する口元を微笑ませながら、鋭い眼光と共に挑発的な言葉を向けた。
「そんなの、決まってるじゃない。――……私が求めてるのは、そんなクソつまらない世界を抜け出させてくれる、刺激的な相手よ」
「……!」
「そんな
「……ッ」
「私の
そう告げながら鋭い憎悪を向けるアリアの青い瞳を、ウォーリスの青い瞳が見つめ返す。
するとアリアは右手を真横に動かしながら扇状に動かし、ある
それを見た時、落ち着き払っていたはずのウォーリスが劇的に表情を変化させる。
アリアはそれを確認しながら影のある笑みを浮かべ、ウォーリスに挑発染みた言葉を向けた。
「これが、アンタが大事にしていた
「……お前が、どうしてそれを……!?」
「アンタがリエスティアを帝国に送り出したのは、
「……!!」
「私はね、アンタのそういう
「……まさか……っ!!」
表情を強張らせ始めるウォーリスに対して、アリアは深みのある笑みを強める。
そして
そこに映し出されていたのは、現『緑』の
その隣に後ろ手に拘束された状態で立つのは、今までリエスティアに付き従っていた
「……貴様……ッ」
「アンタが
「まさか……。ログウェルが、彼女の重要性に気付いているはずが……!!」
「あったのよね、それが。私が
「!?」
「
「……ッ!!」
そう言いながら右手の人差し指を向けるアリアは、嫌味の強い微笑みを向ける。
逆にウォーリスは追い詰められた表情を浮かべ、歯を食い縛りながら睨み返した。
そうして相対する二人の心情的な形勢は逆転し、アリアは
「アンタの大事な
「……馬鹿な。敵意の無い人間を殺せば
「それなら、既に承諾済みみたいよ。その合図が、
「なっ!?」
「アンタ達がゲルガルドの扇動に従うフリをして帝国を奇襲した時点で、
「……ッ!!」
「本当は、こんな
向けているはずの
一方でアリアは自ら首元に矛先を近付けながら、人差し指を向けたままウォーリスの胸に突き付けた。
こうして圧倒的な優位に立つウォーリスは、自らの理想であり居場所でもある
そしてこの状況を予め想定し企てていたアリアは、ウォーリスの弱点となる
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます