門前の攻防戦
不時着した
その位置に構える
それを防ごうと飛び出たアルフレッドに対して、アズマ国の
しかしアルフレッドの首を斬り飛ばす事は叶わなかったが、謎に包まれていたアルフレッドの正体を明らかにさせた。
ウォーリスの親友であり第一の側近として称されていた、アルフレッド=リスタル。
彼は人間の『魂』と機械の身体を組み合わされた、
その事を知ったエリク達から、視点は神殿へ向かうアルトリアとウォーリスに視点は移る。
そこでウォーリスから語られていたのは、アルフレッドが
「――……アルフレッド。彼は三百年前に私が見つけた、生まれながらにして『聖人』の少年だった」
「……!」
「生まれながらの『聖人』は、常人よりも肉体的な成長が遅い。それ故に
「……それを、アンタが拾ったわけね」
「そうだ。生まれながらの『聖人』は、極めて稀だ。成長すれば、長く使える手駒に出来る。……だが、アルフレッドには重大な欠陥があった」
「欠陥……?」
「彼は生まれながらに『聖人』だったが、その肉体はある
「……
「そう、彼は遺伝子に恵まれなかった。生後十年も経たずに染色体に異変が起き、幼い身体にも関わらず異常な老化現象に見舞われた。『聖人』であるが故に、その見た目は幼くも老人にすら見える状態に陥ってしまっていた。……だから彼は、肉親にも気味悪がられながら捨てられた」
「……ッ」
「そこで私は、第一次人魔大戦時代の技術を用いて、彼に病に蝕まれる事の無い身体を与えた。……機械の『
階段を緩やかに登りながらそう話すウォーリスは、アルフレッドが
それを聞きながら先導しているアルトリアは、苦々しい面持ちを強めながら問い掛けた。
「……その恩で、アイツはアンタに従ってるってわけ?」
「勿論、それもあるだろう。……だがそれ以上に、彼も世界の変革を求めている」
「!」
「彼は生まれながらに、自分に課せられた不平等を呪った。『聖人』として生まれながらも、その肉体は次なる進化を出来ぬ程に衰弱していく。……自分の意思ではどうにもならない不平等を、彼は最も憎んでいるのだ」
「……ッ!!」
「その不平等を失くす為に、彼は私に尽力してくれている。……私が
「そんな事が、本気で出来ると思ってるわけ……!?」
「やってみなければ分からないさ。……さぁ、もうすぐ階段も終わるようだ。足を止めずに、歩きたまえ」
「……ッ」
アルフレッドついて語り終えたウォーリスは、足を止めて問い掛けたアルトリアの背中を軽く押す。
僅かによろめきながらも踏み止まったアルトリアは、渋々ながら足を動かし始めた。
そんなウォーリス達から、再び視点はアルフレッドと対峙するエリク達に戻る。
左顔の人工皮膚が剥がれ、黒い金属に覆われた機械の顔を露にしているアルフレッドは、自身が
その聞き慣れない言葉とアルフレッドの姿に驚きを浮かべていたエリク達だったが、同じような動揺を見せない
「――……"さいぼーぐ"が何かは知らぬが、
「ええ、私は貴方達の敵です。――……だが、貴方達の相手は私ではない」
「!」
アルフレッドは左顔から剥がれ垂れている人工皮膚を自身の左手で剥ぎ取ると、両目を赤く光らせる。
すると黒い塔から再び黒い人形達が生み出され始め、更にマギルスに吹き飛ばされていた人形達も起き上がりながらその場に集まった四人を囲み始めた。
そうした人形達の包囲網が築かれながら、アルフレッドは改めて声を向ける。
「貴方達の相手は、
「!」
アルフレッドはそう語り、人形達に指示を飛ばしながら一斉に襲い掛からせる。
それに相対しようと武器の柄を握ったエリクとケイルだったが、それを許さぬように前に立つ
「
「――……『
「!?」
それと同時に四方に散らばった
影分身だけで百体以上の黒い人形の侵攻を退けると、アルフレッドは即座に自身の両手を握り合わせる。
そして前に突き出すように
「燃え尽きろっ!!」
「月の型、『
次の瞬間、相対するアルフレッドと
するとアルフレッドの両腕が赤い光を灯らせた後、両腕から多くの射出口が開かれ、そこから巨大な
それを迎撃するように放たれた
互いの攻撃が衝突し威力を相殺させながら凄まじい衝撃を生み出した後、アルフレッドと
「ッ!!」
「チッ!!」
交差する刀と機械の右腕が火花を散らし、互いの身体を別方向に弾き飛ばしながら着地する。
そして右腕を伸ばしながら右手を向けたアルフレッドは、手の平から球体状の核を出現させて巨大な雷撃を放った。
それを迎撃するように、再び
「月の型、『
その
「ク――……ッ!!」
アルフレッドは両手を前に
しかしその前に、受け止められたかに見えた球体状の
すると次の瞬間、アルフレッドを包んだ
それを確認した
しかし、その途中でアルフレッドの周囲に異変が起こる。
そこに電撃のような球体状の
その内部では両腕を横に広げたアルフレッドが立ち、ボロボロになった衣服と身体の各箇所の人工肌が剥がれ消えた様子が窺える。
しかしそれ以外の被害は何も無く、機械の
それを見た
「……なるほど。奴の身体も、
「……ここまで
互いに相手の脅威を認識しながら距離を保ち、向き合うように身構える。
そして
「
「!」
「お
「……分かりました。エリク、行くぞ!」
それに追従するように走るエリクに、
「エリクとやら!」
「!」
「儂等の
「……ああ」
そう告げる
しかしそれを見逃すつもりの無いアルフレッドは、走るケイルに左手を向けた。
「そうはさせ――……ッ!!」
「
ケイルに意識が逸れた瞬間を狙ったように、
それを弾くように右腕で顔を守ったアルフレッドに対して、
「クッ!!」
腹部に蹴りを浴びたアルフレッドは、
そして白い地面を擦るように両足で踏み留まりながらも、既に入り口の門を通り抜けたケイルとエリクは追撃するのが難しい位置になっていた。
人形達は
アルフレッド自身も
「……ウォーリス様、申し訳ありません。――……奴等をすぐ始末し、あの三人も排除させて頂きます」
「
「はい」
自身の失態を受け入れるアルフレッドは、目の前に立ちはだかる二人の敵を見据える。
そして自身の
しかし動揺や怯みを見せない二人は、落ち着いた面持ちでを見せる。
そして機械の
「……ッ!!」
すると次の瞬間、金属部分が露になっているアルフレッドの左顔に拳が直撃する。
そのまま拳の勢いに負けて吹き飛ばされたアルフレッドだったが、背中の噴射口が開きながら吹き飛んだ勢いを相殺し、両足で地面を噛み締めるように踏み止まった。
そして顔を上げたアルフレッドに、新たに現れた者達の姿が映る。
それは右拳を握り構える魔人ゴズヴァールと、黒い人形達を退けながら現れた元
「――……遅くなった」
「あの姿、奴も人間ではなさそうだな……」
「エリク殿達は、先に向かったようですね」
「……次から次へと……!」
新たに現れた三名の敵に、アルフレッドは苛立ちに似た声を向ける。
そして強者と言える五名と相対しながらも、それを排除する為に数百体の黒い人形達を操作しながら襲い掛かった。
こうして
そして側近アルフレッドの相手を彼等に任せ、ウォーリス達が歩んだ道を二人は走り続けた。
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