再び希望は空へ
真の『聖人』へ覚醒に至った帝国皇子ユグナリスは、圧倒的な
そこに乱入したバンデラスによってトドメを阻まれながらも、ユグナリスは『生命の火』によって『悪魔の種』と瘴気だけを燃やし尽くした。
そしてマギルスに首を刈り取られたザルツヘルムは、ようやく正常な死を迎えるに至る。
しかしザルツヘルムを逃すという事態は、リエスティアが死んだという情報を聞かされたユグナリスに荒々しい感情を浮き彫りにさせた。
更に事態は、次の段階である同盟都市の浮遊にまで至ろうとしている。
そうした状況になった頃、同盟都市付近まで赴いていたエリクも強い揺れを感じ取る。
押し寄せる
「――……まさか、
マギルスと同様に未来の出来事を知るエリクは、黒い塔の生える
しかし迫る
地面を覆う程に
着実に一歩ずつしか進めないエリクは焦りを浮かべ、同盟都市への進行を速めた。
一方その頃 地盤ごと引き抜かれるような同盟都市の浮遊現象は、ガルミッシュ帝国の帝都にも突如として発生する地面の振動で伝わる。
フォウル国の救援によって押し寄せる
「――……じ、地面が……!」
「今度は何なの……!?」
「た、建物が崩れる……!!」
「
凄まじい揺れが起きる帝都の貴族街では、民が動揺を広げながら再び恐怖に飲まれようとする。
それでも冷静さを保つ者達によって、落下物の危険がある室内や崩れそうな建物から避難が促され、全員が室内から外に避難を始めた。
また前回の襲撃によって各所が崩壊している帝城でも、損壊している城全体が軋みを上げる音が響く。
その帝城の中で亡くなった帝国皇帝ゴルディオスの遺体が収められた棺の傍には、孫であるシエスティナをしっかりと抱えた皇后クレアが寄り添っていた。
「――……皇后様、急ぎ避難を!」
「ここは
「シエスティナ様と共に、こちらへっ!!」
棺の傍に座るクレアに対して、護衛の騎士達は焦りを浮かべながら避難を促す。
天井から微細な瓦礫が僅かに降り注ぎ、壁に立て掛けられている照明や装飾品が大きく揺れながら落下する状況は、帝城が安全ではない事を十分に示していた。
「……しかし……」
この状況ながらも、
それを察した騎士達は、幾人かでゴルディオスの
「陛下の
「クレア様、御急ぎをっ!!」
「……分かりました。――……ユグナリス、リエスティアさん。どうかこの子の為にも、無事に戻ってきて……っ」
騎士達の真摯な行動によって避難を決意したクレアは、シエスティナを自ら抱えて外への避難を受け入れる。
そして眠るシエスティナを優しくも力強く抱き締めながら、その両親が無事である事を祈った。
更に強い揺れが継続する最中、押し寄せる
その傍には
「――……また、大地が揺れているぞ……!」
「これは……以前の
セルジアスやパールは、この地震がどのような影響で起きているかを把握できない。
その可能性として『
するとパールは、そんなセルジアスに怒鳴るような声で問い掛ける。
「どうすればいいっ!?」
「……パール殿は、
「分かった!」
パールの問い掛けでこの異変で自分がやるべき事を見出したセルジアスは、改めてその行動を起こす。
周囲の兵士や騎士達に建物からの避難指示を送り、この地震で被害を拡大させないように宰相としての務めを果たした。
パールも飛竜に再び騎乗し、押し寄せる
更に救援に来ているフォウル国側でも、押し寄せる
そして十二支達を束ねる各
「――……始まったか!」
「巫女姫様の言う通りになったね」
「……シン、タマモ。頼む」
『
そして同じく救援の為に赴いていた妖狐族クビアは、扇子を広げながら崩れる内壁から逃げる者達を魔符術で補助しつつ、この事態に関してこう述べた。
「……上手くいくとぉ、良いんだけどねぇ……」
希望的な干支衆達とは対照的に一抹の不安を抱くクビアは、その後も兵士達の
地震の影響で建物や壁などに亀裂や崩落などが幾つか発生しながらも、幸いながらセルジアス達や騎士達の指揮系統、そして魔人達の戦線維持力によって市民や兵士達の中から死者が出ていない。
逆に揺れる地面や建物の崩落に対処できていないのは、闇雲に押し寄せている
闇夜の夜空を飛んで周囲を索敵する
しかし次の瞬間、
「――……ガァ……!!」
「どうした。――……向こうに、何か居るのか?」
魔獣としての本能が飛竜に何かを気付かせ、パールもその察知した何かに視線を送る。
そして互いに思いを重ねるように何かが在る
「何か居るなら、それを撃てっ!」
「ガァ。――……ガァアアアッ!!」
パールは飛竜だけが感じ取る何かを暗闇の中でも目を凝らして見つめ、放たれた火炎弾がどうなるかを見届けた。
すると次の瞬間、放たれた火炎弾が何かに命中するかのように炎を散らせながら爆発する。
それを目撃したパールは驚愕しながらも、
「
「ガァアッ!!」
「視えない敵……下の
パールは上空に見えない存在が居る事を察し、
するとそこには結界らしき
「もう一度だ!」
「ガァアアッ!!」
その視えない相手を敵と判断するパールは、飛竜に再び火炎弾を放たせようとする。
しかしその前に、パール達が見る夜空が揺らぐような光景が視界に入った。
そして何も無かった夜空に、ある巨大な物体が揺らぎの中から視えるように現れる。
パールと飛竜はそれを見ながら、息を呑みながら呟いた。
「な、なんだ……アレは……!?」
「……ガァ……」
パールと
突如として現れた何かの造形は幅百メートル以上から全長二百メートル以上を超え、高さは六十メートルを超えた巨大な物体。
一方で地上に居るセルジアスや他の兵士達も、上空に突如として現れた物体に気付きながら驚愕を示す。
誰もが見た事がないその物体は、それぞれに新たな脅威が現れたことを認識させた。
「な、なんだ……アレ……!?」
「空に、変なのが……」
「いつの間にっ!?」
「……アレも、敵だというのか……ッ」
揺れに耐えながら上空を見る者達は、再び現れる異変に不安と怯懦の表情を漏らす。
流石のセルジアスも
そうして上空に浮かぶ何かが緩やかに降下し続けている事に気付き、パールはそれを防ぐ為に飛竜に現れた
しかし次弾が放たれる前に、その
「
『――……おぉい! 撃つな撃つな!』
「!?」
『俺達は敵じゃねぇ。そのドラゴンっぽいの、もう撃つんじゃねぇぞ! 操縦してる
「な、なんだ……!?」
突如として
そして真下にも響くその声は、貴族街に居るセルジアス達にも困惑を広めた。
その男の声は、続けるようにこうした大声を響かせる。
『俺達は、
「救援……!?」
『……ん? ……あっ、そっか。えっと、今の俺達って何だったっけな?』
『――……第一騎士団及び、皇王陛下直属の独立兵団ですよ。隊長』
『おお、そうだったそうだった。――……俺達は、ルクソード皇国で新設された独立兵団所属。皇王シルエスカ様の命令で
「!?」
『まだ騎士爵になったばっかでな、言葉遣いが成ってないのは気にせんでくれ。――……この
「皇国からの救援……!?」
「……アレが、
上空から降下して来る物体からグラドや名乗る男や僅かに他の男の声が響き、貴族街に居る者達やパールは唖然とした表情を強める。
そして改めて降りて来る巨大な物体が船だと言われ、一同は信じ難い様相を浮かべるしかなかった。
その船は、現代では誰も知らない『空』という大海を泳げる存在。
しかし別の未来においては人間大陸を救う為に作られ、『
その
『
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます