魔王の警告
狼獣族エアハルトと帝国皇子ユグナリスに合流したマギルスは、新たな
その目的は
そして『
下に広がるのは地面を這う
「――……アレが全部、死体なのっ!?」
「ああ。この辺り一帯は、死の腐臭ばかりが漂っている。それに奴等からは、
「僕、まだ
「えっ?」
マギルスは
それに気付いたユグナリスは自覚の無い様子を見せ、エアハルトは舌打ちを漏らした。
「この男に、その自覚は無いぞ」
「そうなの? ふーん。じゃあ、まだエリクおじさんには程遠いかな!」
「!」
「……エリクだと?」
マギルスは比較対象としてエリクの名を聞かせると、二人は驚くような表情と声を漏らす。
その様子に気付いたマギルスは、何かを思い出しながらエアハルトに声を向けた。
「そういえばエアハルトお兄さん、エリクおじさんに負けたんだっけ!」
「ッ!!」
「僕はあの時のおじさんだったら、楽勝だったもんね! もう今だと、勝てるか怪しいけど!」
「……あの男も、強くなっているのか」
「凄くね! 僕とおじさん、ずっとフォウル国で修行してたんだよ!」
「修行……?」
「エリクおじさんは、ずっと巫女姫って人に修行させられててね。『死』の境界を超えられるようになったんだって!」
「……なんだそれは」
「死の境界って……?」
「僕もそれ、よく分かんないけど――……おっと!」
マギルスの言葉に聞いていた二人は、疑問の表情を深める。
そして再び襲い来る
それを収めた後、マギルスの視界が何かを捉える。
「――……なんか見えたよ!」
「!」
マギルスが青く輝く瞳を見開き、前方に見える景色を教える。
それに応じるように二人も
しかし二人が見たのは、建設中だったはずの同盟都市ではない。
その遥か上空まで伸びる、奇妙で巨大な黒い塔の姿だった。
「……なんだ、アレは……!?」
「あんなの、明るい時でも見えませんでしたよ……!」
「……嘘。なんであの塔が、こんな所にあるのさ……っ!?」
「!」
二人は暗闇の中で不気味に
しかしマギルスだけは、見える塔の形状に見覚えのある様子を見せた。
それを知ったエアハルトは、訝し気な表情と声で問い掛ける。
「あの塔を知っているのか?」
「うん! でもアレは、
「さっきからなんだっ!?」
「この大陸にもあったんだ! 魔導国と同じ、五百年前の遺物――……空から落ちて来た、
「テンカイ……!?」
「元々は、神様が住んでた場所なんだって! それが五百年前に落ちて大陸にもなってたって、クロエが言ってた!」
「!?」
「ここにも、魔導国と同じ遺跡があったんだ。……でもまさか、そこが拠点になってるなんて……こんなの聞いてないよっ!!」
マギルスは未来で見た魔導国の中央に存在した黒い塔と同じモノがある事を察し、この大陸にも同じ遺跡が埋まっていた事を察する。
それを裏付けるかのように、ユグナリスも思い出しながらマギルスの言葉を結び付けた。
「……この大陸の各地には、古い遺跡が多いとは聞いてました。でもまさか、あんな巨大な塔の遺跡が地中に……!? でも、いったい誰がアレを……!?」
「ウォーリスという奴だろう。奴が拠点にしているのだから、そう考えるのが妥当だ」
「でも、どうやって……!? 帝国側でも遺跡については色々と調べられていたはずです。でも、あんな機能があるなんて報告や発表は無かった……」
「
ユグナリスは納得し難い表情を見せながらも、エアハルトの端的な結論を述べる。
その話を聞いていたマギルスは、思考にある可能性を浮かばせながら呟いた。
「……もしあの遺跡が、魔導国に在るのと同じだとしたら……。うわっ、マズいかもっ!!」
「!?」
「魔導国の遺跡は、都市ごと空を飛べたんだ! それも物凄い高く! もし向こうの遺跡も、同じくらい空高く飛べるとしたら……!」
「……誰もあの場所に、行けなくなる……!?」
「この
「だったら、さっさと行けっ!!」
「うん!」
未来で魔導国の都市に赴く際、クロエを知識で建造した
だからこそ同じ遺跡が空に飛ぶ事を察したマギルスは、エアハルトの声に応じながら
更に加速する
しかし次の瞬間、思いもよらぬ方角から巨大な
「ッ!!」
「
「マギルスッ!!」
同時に気付いた三人は気配も匂いも無いまま放たれた熱線に驚愕し、それぞれに声を荒げる。
そしてマギルスは
沈ませた車体は角度が下がり、更に加速しながら突き進む。
そして命中寸前だった
「……!」
「アレは……っ!!」
右側を向いた
そこで全員が視界に捉えたのは、暗闇に浮かぶ黒い布を纏った人物、少し前にセルジアスを助けた【魔王】と称する者だった。
【魔王】は左手を翳し向けたまま、苛立ちの籠る口調でこう呟く。
「――……アンタ達も、こっちの予定を狂わせてくれるわ」
「アレは、誰だ……?」
「……人の匂いがしない。かといって、他の生物の匂いも……。なんだアレは……!?」
「……あれ。あの魂、どっかで見た事が……」
『ブルルッ』
「……確かに、そう視えるけど……。でも、それって――……っ!?」
ユグナリスとエアハルトは互いに初めて見る【魔王】の姿で、その正体を探れずにいる。
逆に
しかしそれを確かめる間も無く、【魔王】は左腕から更なる
マギルスは
「ちょっと、ここで待っててね!」
「なっ!?」
「よっと――……『
更に次の瞬間、マギルスが両手を
そして座席に立ち上がりながら両手で大鎌を構え持つと、
それから
音速すら超える速度で飛び出したマギルスだったが、自身の肉体を覆う魔力が防壁となり、音の壁を超えながらも無傷の姿を僅かに晒した。
そして【魔王】の目の前まで瞬時に迫ったマギルスは、その首を狙いながら躊躇せずに大鎌を振り抜く。
しかし大鎌の刃は【魔王】の姿を覆う外套を僅かに一閃しながらも、首を跳ねる事には失敗した。
それでもマギルスは、すれ違い様に隠された【魔王】の顔を覗き見る。
するとマギルスは口元を微笑ませ、作り出した
そして互いに顔を向けながらも、【魔王】とマギルスは意味深ながらも短い会話を行う。
「なんだ、元気そうじゃん!」
「……クロエのせいでね」
「あれ? ……あっ、そういう事か!」
「この先に行くのは止めときなさい。明らかに罠よ」
「だから止めたの? でもあそこに、クロエのお母さんと生きてるアリアお姉さんもいるんでしょ?」
「多分ね」
「じゃあ、僕は行く!」
「……死んでも知らないわよ」
笑いながらそう告げるマギルスに、【魔王】は呆れた口調でそうした声を漏らす。
すると次の瞬間、その場に居たはずの【魔王】は
それを見届けたマギルスは微笑みを浮かべ、向かって来る
すると足場にした
そんな行動に出ていたマギルスに対して、エアハルトとユグナリスは抗議するように怒鳴る。
「――……貴様、落ちたらどうする!」
「そうですよ! というか、さっきの奴はいったい……!?」
「うーん。……多分、味方かな!」
「味方が攻撃して来るわけないですよねっ!?」
「まさか奴は、フォウル国の魔人か?」
「へへぇ、秘密!」
「……?」
二人は襲って来た【
まるで【
そして車体の正面は暗闇に映える黒い塔に向き直り、再び進み始める。
こうしてマギルスは【魔王】と出会い、相手の正体を察する。
そして警告を受けながらも、クロエとの約束を果たす為にエアハルトとユグナリスと共に同盟都市建設予定地へと乗り込んだ。
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