苛烈な迎撃
影内部に広がる異空間に侵入したアルトリアは、そこで
しかし異空間内の瘴気により魔力と生命力を吸収され、何の抵抗も出来ずに拘束されてしまう。
一方でアルトリアを追う為に
しかし二人の視界には、完全に崩壊している流民街の光景が映る。
悪魔化した
「――……これは……っ」
「……ッ」
パールは表情を歪めながら、下の状況に苦々しい様子を浮かべる。
同じ景色を見るエリクも表情を強張らせ、未来で襲撃を受けていた港都市や皇都の状況が重なり合うように脳裏に浮かんだ。
点在する場所からは火が燃え広がりながらも、人の気配は感じられず、また人の声も聞こえない。
少し前までは新年の祝杯で人々が賑わっていた南地区の流民街に、生存者は誰もいなかった。
そうした光景を目の当たりにしながらも、エリクは南下する影に視線を戻す。
そして外壁を越えようとする影の膨らみに気付き、パールに呼び掛けた。
「影が外に出る。追いつけそうか?」
「……ああ」
「……パール。影の上まで行けたら、お前は戻れ」
「!?」
「あの
「……私も行く」
「駄目だ」
「何故だ?」
「お前には、お前がやれる事がある。この
「……私だけでは、
「そうだ」
パールの問い掛けに、エリクは躊躇いも無く即答する。
それを聞いたパールは表情を強張らせながらも、会場で見ていた
しかしエリクは、襲って来た
同じ四年という月日で圧倒的な実力差が自分達の間に生じている事を、パールは既に察している。
だからこそ悔しさが滲み出る表情を見せるパールは、エリクを睨みながら声を向けた。
「……分かった」
「ああ」
「だが、必ずアリスを連れ戻してくれ。……でなければ、私はアリスの友として……今の自分を許せない」
「……ああ」
自身の無力さを痛感するパールの言葉に、エリクは応じるように頷く。
そして外壁を越えた影を追う
外壁を越えて広がる大地に映る不自然な影に、ようやく
ようやく影に追い付いた二人は、互いに下を見据えながら声だけを向け合った。
「もう少し前だ!」
「分かっている! あと、少しで……っ!!」
「……パール、避けろっ!!」
「!?」
すると飛竜が真下に在る影の表面に、突如として鋭い黒棘が生み出され始めた。
その棘が全て
しかしパールが命じる前に飛翔する
すると影の表面から発射される黒い棘が、飛竜の飛んでいた位置と高さを越えて放たれる。
凄まじい速度で通過する黒い棘の発射は止まらず、避ける
「グッ!!」
「パール! 一旦、
「くそっ、あと少しだったのに……!!」
影から放たれる
そして
しかし南下を続ける影自体は止まらず、
目論見通りに行かぬ状況に焦りと苛立ちを含む表情を見せながら、パールは再び
「もう一度、あの影の上へ!」
「駄目だ。
「だが、このままでは――……!?」
「ッ!!」
再び影の上に向かおうとするパールを制止したエリクは、どうするべきか考えようとする。
しかしその思考する時間すら許さず、二人の視界に眩い程の極光が放たれた。
パールは思わず目を閉じながら顔を手で覆い、
すると飛竜が動揺しながら身体を揺らし、飛翔速度を落としながら一気に急降下した。
しかし次の瞬間、エリクは右手で背負う黒い大剣を引き出し、更に前へ翳しながら大剣を腹を盾のように構える。
そして叫ぶ声を見せると、大剣の柄に取り付けられた赤い装飾玉が赤い光を放った。
「吸えっ!!」
『――……!!』
エリクがそう叫ぶと同時に、大剣の腹部分が開くように形が変形する。
すると大剣の内部に魔石を加工した宝玉が埋め込まれており、その周囲には構築式と思しき紋様が刻まれていた。
そして目の前に広がる極光が粒子状に変化しながら大きな渦上となり、大剣の宝玉に吸い込まれる。
それと同時に凄まじい風圧が
「グ……ッ!!」
「な、なんだ……この光は……!?」
「……これは、アリアと同じ……!!」
必死に角を掴みながら振り落とされぬようにするパールに対して、エリクは極光の正体に気付く。
それはアルトリアが放つ
そして十数秒以上も続く魔力砲撃の照射を、エリクは大剣の宝玉で吸収し続ける。
すると極光は無くなり、高度を落としながら飛行を続ける
「……ウォーリス」
「――……もう、貴様に邪魔はさせないぞ。エリク」
エリクの視界の先には、中空に浮かぶウォーリスの姿がある。
一方でウォーリスもエリクを睨み、互いに敵意を見せながら顔を向け合っていた。
こうしてエリク達の前に、あのウォーリスが立ちはだかる。
アルトリアを魔法技量で遥かに凌駕し、圧倒的な実力差を見せつけた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます