救済の剣
新年を祝っていたはずのガルミッシュ帝国の帝都は、今まさに地獄のような惨状が続いている。
帝都の南側は崩壊しながら東西にも広がり、悪魔化した合成魔獣達が流民街の住民達を喰らいながら市民街の区壁まで到達していた。
そして貴族街では使役される
まさに混沌と化している帝都の中で、それでも希望の光は消えていない。
それは絶望の中でも、必死に生き残ろうとする者達の姿があったからだった。
「――……早く、こっちに避難をっ!!」
「地下の避難所は駄目だっ!! 化物共が狙って来るっ!!」
「魔法師部隊は、火力を集中させて応戦するんだっ!!」
南側に展開していた帝国兵団の七割以上が
更に外壁で指揮していた兵団長や幹部達も
そして市民街には魔法学園があり、そこに居る学生達も緊急事態に基いて臨時戦力として掻き集められ、避難援護の為に当用される。。
いずれも実力と経験の乏しい十代が多く、ま緊急時の為に数の纏まりが欠けながらも当用するしかない状況は、防衛網が既に成り立たない程の窮地になっている事を知らせていた。
襲撃して来る
槍や剣、そして弓矢といった対人武器に関しては言うまでもなく、砲弾の負傷すらも瞬く間に修復してしまう情報は魔道具越しに伝えられ、もはや魔法以外に対抗手段が残されていなかった。
しかし魔法と言えど、万能ではない。
特に今回の
「――……こ、攻撃魔法が効かないっ!!」
「魔法を、吸収している……!?」
魔法師達はそれぞれの属性で成した攻撃魔法を一体の
しかし黒い泥をその身体から溢れさせる
ゲルガルドと同じく魔力を得た
「ガァアアアアアッ!!」
「うわぁああっ!!」
「た、助け――……ぎゃあっ!!」
ただ飢えを凌ぐ為の
精鋭とも言うべき帝国の魔法師団は瞬く間に狙い喰われ、逃げようとする魔法師達は追われながら
それでも辛うじて、悪魔化した
それは魔法学園に一万人以上の市民街の避難民を集まっていた、学園長を始めとしたホルツヴァーグ魔導国出身の魔法師達だった。
「――……
「おうっ!!」
学園長を筆頭とした教師の魔法師達は円形状の塔内に備わる魔導施設に入り、それぞれの術式と大きな魔石を組み込んだ魔導器を起動させている。
そして学園全体に引いた結界を十層にも重ねて敷いた結界の一つ一つは、帝都全体を覆っていた結界よりも範囲は狭いが、強固に展開している厚い防壁となって
しかし魔力を好む合成魔獣達は、展開される結界の魔力を吸収しようと集まって来る。
侵入こそ阻む事は出来ていた結界だったが、急速に集まって来る合成魔獣達の黒い泥が纏わり付き、徐々に結界を削り吸っていた。
「……学園長っ、第一層の結界が……!!」
「結界を張り直し、持ち堪えろっ!! 本国の、『青』の
「は、はい……!」
「迎撃用の
「うむ!」
結界の維持しながら指揮する学園長は、教師達の応答に応えて指示を飛ばす。
そして学園内の壁際に設けられた木製や岩で作り上げた
小さな
そして結界の魔力と同調させている
『――……いっけぇっ!!』
術者を介する
小型の
それでも
木製で出来た
「こ、これは……!」
「怪物達が、
「なにぃ!?」
「……魔力を吸収する魔獣など、人間大陸に居るはず……。……まさか、
「!!」
「学園長っ、結界の修復が間に合いません……! 第二層、突破されましたっ!!」
「く……っ!!」
魔道具越しに届いた情報を伝える教師の言葉で、学園長は襲撃して来る異形の魔獣達が
しかし魔力を好んで学園に押し寄せる
そして十層まで築いた重厚な結界も、九層まで吸収されながら維持できずに破壊されてしまった。
「学園長っ!!」
「……
学園長から漏れる苦々しい言葉を聞いた教師の魔法師達も、それに呼応するように悔やむ様子を見せる。
本国から離れた
ただ
そしてついに、残り十層目の結界にも吸収されながら削り取られ、修復も間に合わずに亀裂を生じさせる。
残る学生の魔法師達は
外に居る避難民達もその光景を見ながら、怯えと絶望を抱き身を
しかしその時、結界越しに見える
「な、なんだ……っ!?」
「……化物達が……?」
突如として起きた白い閃光を見た学生の魔法師達は、何が起こったのか分からず動揺を浮かべる。
しかし閃光が治まった瞬間に見えたのは、結界に迫っていたはずの
更に結界を浸蝕し続ける他の
その光景を魔導器に映る映像越しに確認していた学園長や教師達も、驚愕を見せながら言葉を発した。
「な、何が起こった……!?」
「アレは、魔法の光ではない……?」
「この並々ならぬ力は、
「だがアレほど巨大な
「ほ、本国からの救援っ!?」
「いや、それでも早過ぎる。……いったい、誰が……?」
学園長を含む全員が安堵よりも驚愕を浮かべ、自分達を救ってくれている者の異常な
そして
「……
「し、死霊術……!? 実在するのですかっ!?」
「ああ、『負』で成される
「!」
「今の内に、結界を修復させる! そして結界の構築式を一部追加し、
「わ、分かりましたっ!!」
「他の避難民達や兵士達にも、
そうした間に結界の層も修復させ、学園の外に集まっていた百匹以上の
「……名も知らぬ者よ。感謝する」
一方的な感謝を呟く学園長の意思や言葉だったが、礼を言われた者は気付くことなく地獄を広げる帝都の中を跳び進む。
そして悪魔化し死霊術で操られる
「――……三百は倒したはずだが、まだいるのか」
そして破壊される建物から広がる炎で姿が照らされると、そこに立つのが黒い衣服を纏った黒剣を持つエリクである事が確認できた。
しかしエリクが浮かべる焦りは、逃げ惑う人々や多すぎる
それは帝城の上空に微かに見える、
「……早く
エリクは苦々しい面持ちを見せながらも、アルトリアに頼まれた事を果たす為に動く。
そして生きる者達を助けながら
こうして窮地に駆け付けたエリクは、悪魔化している
しかし
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