武を極める為に
月夜の下で酒を飲み交わす師弟の中で、ケイルは自身の本音を吐露させながら眠りに落ちる。
そんなケイルを見守るように膝で寝かせる
すると新たな酒瓶と盃を持って戻って来た
それに対して何か述べるわけでもなく、静かに腰を下ろした
「……すまんな。相手をさせて」
「いいえ。こういう役目は、親方様には不向きでしょうから」
「……儂が言えることではないが、
「そうですね。惚れた男の為に世を救おうなどと、度を越した不器用としか言い様がありません」
そして酒を飲み交わす二人は寝ているケイルの顔を見つめた後、視線を上げて互いの顔を見ながら口を同時に開いた。
「親方様」
「
「……どうやら、考えている事は一緒ですか」
「そのようだ。……明日、また
「分かりました」
「……身と心を
「はい。親方様」
二人はそう話し合い、夜空を見上げながら互いに酒を注いだ盃に口を付ける。
こうしてその日の夜は終わり、ケイルは目覚めると部屋の布団に戻されていた。
そして
それから着替え昨夜の事を謝ろうと
「――……起きたか?」
「あっ、はい。……昨晩は、すいませんでした」
「それはいい。それより、お前も支度を整えろ」
「え?」
「また
「え? は、はい。分かりました」
脱力からの技法に行き詰まっていたケイルは、再びナニガシと
その際、屋敷に
そして屋敷の外門を潜った後、
「――……師匠。千代さんと巴さんは?」
「野暮用を頼んでおる」
「そうですか。……それで、今日は何用で?」
「親父殿に頼みがあってな。お前にも関わることだ」
「アタシにも……?」
「付いて来れば分かる。……ちと、雨が降りそうだ。走るぞ」
「あっ、はい!」
そして凄まじい加速を見せながら走り始める
それから一時間にも満たぬ時間で、二人は
そして再び後宮の門を潜ると、ナニガシが暮らしている屋敷の一室に訪れた。
「――……なんじゃ? また来たのか、お主等」
小雨が降り始めている庭を眺めながら酒瓶を傍に置き盃を口に傾けるナニガシが、
それに対して
「……親父殿、頼みがある」
「?」
「
「え……!?」
「ほぉ?」
武玄が突如として頼んだ言葉に、後ろに控えていたケイルは驚きを浮かべる。
逆にナニガシは興味深そうな声を漏らし、顔を振り向かせ
「儂が、お主の弟子に修練を施せと。そう頼んどるのか?」
「そうだ」
「修練ならば、お主が施してやれば良い。それでも足りんなら、他の流派師範にでも頼むと良かろう。……それでもか?」
「俺や他の師範では、
「……カッカッカッカッ!!」
そして身体を向きを変えながら改めて二人に向かい合い、胡坐の姿勢を見せながら告げた。
「……
「!」
「だが儂は、国の守護と各流派の指南役以上の役割を持たず、今後は直弟子を持たんと公言しとる。その言を破る気は無い。……だが、
「感謝する。親父殿」
「……しかし、『赤』が儂の
唐突な状況にケイルは困惑染みた表情を浮かべていたが、師である
「……以前に見せて頂いた技法を学ぶ機会が得られるのであれば、是非とも御願いします」
「うむ。……では対等な『赤』ではなく、改めて
「ありがとうございます!」
ケイル自身もナニガシから技法を学ぶ為、従者として傍に置かれる事を望む。
それに応じる形で、ナニガシは改めてケイルを従者として傍に仕えさせる事を認めた。
『赤』の
それはケイルが望む大きな力を得られる
同時に、ケイルの行動がアズマ国の強者達を動かす。
未来に起こるだろう出来事に対して、アズマ国の強者達もまた備える動きを見せ始めていた。
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