幽閉の青
浮遊都市の北部で、大爆発と崩落が起きる少し前。
エリクと共に地下へ降り、
それが都市を浮遊させているモノであると考え至ったマギルスは、鉄柵で作られた通路の上で笑みを浮かべながら、伴っている青馬を見ながら大鎌を構えた。
「――……ねぇねぇ。コレ壊したら、この街が落ちるんだっけ?」
「ブルッ」
「壊しちゃダメ? コレを壊すのが目的なんでしょ?」
「ブルゥ」
「だって、通信機はさっきから使えないし、上はあの黒くて硬いのだし」
「ヒヒィン」
「じゃあ壊した後に、僕が脱出できないだろう? ……あっ、そっか」
青馬と話していたマギルスは、自分の状況を思い出して大鎌を僅かに引かせる。
上下が
逃げられないマギルスは、そのまま都市の落下に巻き込まれてしまう可能性がある。
そしてクロエの予言を聞いていたマギルスは、目を閉じて少し考えながらどうするかを決めた。
「――……よし、出口を探してから壊そうか!」
「ブルルッ」
決断したマギルスは大鎌を背中の長筒に収め直し、青馬を伴いながらその場から離れる。
周囲を見回しながら通路を歩き、機械や魔導器が散らばるように置かれた施設を徘徊した。
そして徘徊してから一時間後、マギルスは僅かな明かりしかない暗闇の施設の通路内で見事に迷っていた。
「――……ここ、どこ?」
「……」
「なんだよ! お前がこっちに来ようって言ったんじゃん!」
「ブルゥ……」
「僕、方向音痴じゃないやい! この分かり難い場所が悪いだけだもんね!」
「……ブフッ」
青馬は呆れた様子を見せながら首を横に振り、マギルスは頬を膨らませながら先へ進む。
一度は我慢できずに壁を斬り裂いて進もうとしたマギルスだったが、壁の奥にはあの
仕方なく道なりに進み出口を見つけるしかないマギルスは、苛立ちを抱えながら通路を歩き続けた。
そうした中で、マギルスと青馬は施設内が揺れている事を感じ取る。
それは内部で起きた衝撃で揺れている様子は無く、マギルスは天井を見上げながら呟いた。
「……なんか、揺れてるね?」
「ブルッ」
「向こうの人達が爆弾を使ったから? じゃあ、何か壊したのかな。……うーん、僕も外に出たい!」
「……ブルル」
「あっ、お前が居ないと明るくないんだから、先に行くな!」
地団駄を踏むマギルスの様子に青馬は再び呆れ、先に通路の方を歩き出す。
青馬が放つ青い魔力の発光が周囲を照らしている現在、マギルスは暗闇の道に対する光源を青馬しか持たない。
魔力を目に集めて凝らせば暗い道でも見えるには見えるのが、それもかなりの労力が必要の為にマギルスはしない。
その理由は面倒だからというのもマギルスにはあったが、先の戦いで
「……あーあ。まだ身体に、上手く力が入らないや」
「ブルル」
「しょうがないじゃん! まだ調整が出来ないんだからさ」
「……ブルッ」
「はいはい、僕が未熟だからって言うんだろ。その通りだけどさ」
「ブルゥ……」
「威力は凄いけど、すごい魔力を喰うからなぁ。お前と僕の
そう
マギルスの内在魔力量は魔人の中では多い方だが、赤鬼化したエリクの総量に比べれば微々たるモノ。
その赤鬼エリク以上の放出量で繰り出す魔力斬撃や、それ以上の攻撃を防ぎ切る大盾を数秒でも維持する膨大な魔力は、マギルスの魔力を枯渇寸前にまで追い込んでいる。
それでもクロエとの訓練で一日で数回の使用が出来るようになり、マギルスは
「……まさか、こんな場所で二回も使わされるなんてなぁ」
「ブルルッ」
余裕そうに見えた
単調な攻撃だったが、瞬間的な強さは間違いなく赤鬼化したエリクを彷彿とさせた
それが数百単位で襲い掛かり、更に収束させた魔弾や魔力光線の一発一発が威力は、普通の人間であれば跡形も無く肉片すら消失していただろう。
それ程に余裕の無い戦いで
一時間の休憩で内在魔力をある程度までは戻し、手を開いて閉じてを繰り返しながら練り上げた青い魔力を滾らせ始めた。
「――……!」
そんな時、マギルスは進む道の先で奇妙な気配を感じ取る。
同時に青馬も姿を消して透明化し、マギルスは足音を立てずに慎重に歩み始めた。
その先に在ったのは、直径で五十メートル程の広さがある部屋。
周囲と同じように機械や魔導器が備わり、赤い
そんな変わり映えのしない風景にマギルスは興味は無く、その部屋の先に設置されたある設備に興味を抱いていた。
「……誰か、入ってる」
マギルスは目を凝らし、それを見る。
その部屋の奥に、
しかし中に満たされているのは赤い
マギルスは
その瞬間、暗かった部屋全体に青い光が灯る。
それに反応したマギルスは立ち止まり、大鎌を振り回しながら構えた。
「なに? また
『――……誰か、そこに
「!」
警戒するマギルスの耳に、部屋全体に響く男の声が届く。
周囲を一度だけ見渡した後、マギルスは部屋の奥に在る青い
「もしかして、そこの人が喋ってる?」
『……おぉ……。おぉお……!』
「?」
『……やっと、やっと来たのか……』
「え……?」
『儂を、儂を解放してくれ……。頼む……』
「……誰なの?」
マギルスは訝し気な表情を浮かべながら、容器へ近付く。
そして容器の中が見えるガラス窓越しに、マギルスは遠目ながら中身を確認した。
「……人間?」
『頼む、誰でもいい……。ここから、儂を
「さっきから言ってるじゃん。誰なの?」
『……儂に、名は無い。……だが儂を知る者は、こう呼ぶ……』
「?」
『青の、
「え……!?」
マギルスはその言葉を聞き、思わず表情を強張らせる。
自分を『青』の
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