自分との対峙
エリクは分断され孤立した塔内部で、
互いに同じ色の黒い大剣を使い、黒い外套を羽織り、黒い服と鎧を身に纏う。
更には体格や大剣の構え方も似ており、その攻め方や独特な攻撃方法は対峙する黒騎士にエリクは自分自身の影を感じ取った。
そして
目の前にいる黒騎士が、
『――……ハァアッ!!』
「ぐっ!!」
互いの大剣は火花を散らし、白い空間内に刃が衝突する音が鳴り響く。
エリクと類似した黒騎士はまるでエリクの手の内を知るかのように、掻い潜ろうとするエリクの大剣を受け止め弾いた。
同時に黒騎士は大剣の刃を切り返し、まるで軽い武器を振るかのように凄まじい速度の剣戟をエリクに放つ。
それにエリクも合わせて大剣を振りながら迎撃し、返せない剣戟は屈み避けながら足元を叩き潰そうと右腕と大剣を白い床を這わせながら走らせた。
しかし黒騎士はそれを跳び避け、同時に大剣を頭上に振り被らせながらエリクの頭を狙い振る。
それを感じ取ったエリクは転がるように横へ跳び避け、両手を地面に這わせながら黒騎士が白い床に大剣を叩き付ける姿を睨んだ。
そして黒騎士は大剣を即座に構え直し、這っていたエリクも身を起こしてすぐに構える。
再び対峙し見合う互いに対して、
『――……
「だから、俺と似た戦い方をするわけか」
『しかも全身、余す事なく
「そうか……」
『エリクを真似た
更に『青』のガンダルフが様子を窺っていたマシラ共和国やルクソード皇国の戦いで、エリクの戦い方は情報という形で盗み撮られ、それを作った黒騎士に
その二つの点から
「!」
『――……ォオオッ!!』
そんな推察がされる中で、黒騎士は大きく踏み込むと同時に凄まじい速度でエリクに斬り込む。
機械的な声ながらも雄叫びを響かせた黒騎士の大剣は黒い魔力を帯び、まだ距離が離れているエリクに振り薙いだ。
黒騎士の行動に目を見開いたエリクは、自身の勘に従い横へ大きく跳び避ける。
その勘は正しく、エリクが居た場所に膨大な威力で放たれた巨大な
「俺の技か……!」
『エリク!』
黒騎士に自分の技を模倣された事を悟ったエリクは、黒く染まる視界を横目にしながら歯を食い縛る。
更に
そこには既に黒騎士が滞空し、黒い大剣を振り翳してエリクに攻撃を加えようとしている姿がある。
再び互いの大剣が衝突した瞬間、防いだと思われた黒騎士の大剣から膨大な黒い魔力が宿っていた。
「!」
『……ォオオッ!!』
エリクは黒騎士が何を行うかを悟ったが、それは避ける間も無く実行される。
黒騎士の大剣から再び黒い
そして自身の視界が全て黒に染まったエリクは、その斬撃に飲み込まれる。
黒い
その中から跳び退いて出て来た黒騎士は、着地すると同時に爆発の中心部を見た。
『――……!』
「……それは、俺もやった事が無かった」
黒騎士は両眼の赤い輝きを強め、まるで驚いた様子を見せる。
黒く四散する魔力の中からその声が届くと同時に、エリクがその姿を晒した。
エリクは全身に
強力で膨大な黒い
『――……軽傷なのは、クロエがくれた服のおかげね。素材のミスリルが、あの
「そうなのか」
『ミスリルと
「なら、向こうにも限界があるということか」
『そうよ。……でも、その限界値が違い過ぎる。普通の手段じゃ、あの
「……普通ではない手段なら、出来るのか?」
『ええ』
「どうやる?」
『
「……そ、そうか」
『今は理解はしなくてもいいから。……だからあの
「それを、どうやって壊す?」
『やり方は三つ。一つは、超新星爆発並の衝撃で砕く方法。でもこれは、例え
「他には?」
『昔、伝説の鍛冶師と言われたドワーフが作った勇者の聖剣。聖剣は魔力を含んだあらゆる物質を破壊する事が出来ると云われていて、それなら
「もう一つは?」
『
「なら、それを破壊しかないか」
『問題は、奴の装甲が硬すぎること。内部に在ったら攻撃できる方法が無いわ』
「ある」
『!』
そうした会話を二人は行う中で、黒い魔力の霧が完全に無くなる。
そして互いに遮るモノも無い白い空間で再び対峙し、黒騎士は大剣に再び膨大な魔力を溜め込んだ。
『――……
「……」
『彼女ヲ守レルノハ、俺ダケダ』
「……俺も、そう思っていた。だが逆に、守られていた事を知った」
『……』
「お前は、昔の俺だ。……守れていると思っていた、何も知らない俺だ」
『――……オォオオッ!!』
エリクは自分の瞳に悲しみを宿し、黒騎士に対してそう語る。
それに反発するように黒騎士は飛び出し、再び黒い魔力を帯びた大剣を振り翳した。
それと相対するように、エリクも大剣を身構え全身を纏う
そして互いに大剣を振り、黒騎士の黒い魔力とエリクの白い
過去の自分を模倣して作られた黒騎士と、新たな力で立ち向かうエリク。
同じ人物を思う同じ意思が、交わり反発しながら戦いを繰り広げた。
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