必殺の活路
アズマ国に所属し、五百年以上前から
彼が伝え広めた『
鍛錬し様々な動きを可能としながら武器を用いる基本の型を『表』、その基本を一定水準まで極めると『気術』を用いた型として『裏』を教えられ、五百年間に渡ってその技術は衰えるどころか進化した形でアズマ国の技術となっていた。
そして『当理流』には、『奥義』と称される技も存在している。
『気術』と呼ばれる技法は、基本的に
しかしその反面、魔法や魔術と呼ばれる技術とは異なり、距離の開いた相手や広範囲の敵に対しては射程距離と殲滅力が低く、人間同士の戦争では魔法や魔導兵器に一歩遅れると外部の者達は印象を抱いていた。
故にアズマ国の当理流は他国では印象が弱く、広く魔法を伝えるホルツヴァーグ魔導国やフラムブルグ宗教国、そして機械技術が優れた旧ルクソード皇国では知名度が低い。
それに対して『茶』のナニガシも過去の大戦や天変地異での戦いを経験し、それを克服する為の『奥義』を編み出した。
それが『
空に浮かぶ『日』『月』『星』『雲』『雨』の五つを当理流術の型として振り分け、それを五人の弟子に伝えた『茶』のナニガシはそれぞれに流派を設けさせた。
それが長い年月を懸けて精練され、それぞれの流派で独自の技を生み出し昇華される。
拾われたケイルが師匠から学んだのは、『月』の流派。
刀身から放たれる
しかしその威力に比例するように膨大な
故に『奥義』は、
聖人に進化する前のケイルもその類に漏れず、奥義である『月の型』を習いながらも極力の使用は避けていた。
そうして自らを縛っていたケイルが、『月の型』の使用に踏み切る。
硬い装甲と結界に覆われる
「――……トーリ流術、月の型。『
左腰から再び魔剣を抜刀したケイルは、
剣から放たれる
その斬撃は結界を突破し、頭部の装甲に強い衝撃と傷を与える。
叩き潰された
ケイルは再び身を翻しながら屋根に着地し、叩き付けた
しかし
「……チッ。やっぱ
ケイルは舌打ちをしながらも、息を僅かに乱して額に汗を浮かべる。
それを推察しているケイルは、更に強い奥義を使う事を考える。
しかしそれは威力と比例する膨大な
「……仕方ない。
諦め混じりの嘆息を漏らすケイルは、右手に持つ魔剣を再び鞘に収めて体内の
そして立ち上がる最中だった
「!」
『――……』
突撃して来る
周囲の建物は
離れた建物に
そして舞い散る破片や瓦礫を空中で跳び避け、更に踏み台にしながらケイルは離れた地面へ着地に成功した。
しかしその下では
周囲を囲むように
ケイルは飛び掛かる
走りながら前方を塞ぎ追い付く
しかしその意図を察したのか、
その光景に舌打ちするケイルは、背後の振動で
「ウザってぇな……!!」
しかしそちら側も破壊され、ケイルは目の前を阻む
「――……どっか一辺に、奴等を集めて叩ければ……」
そう考えながらも、それを実行できる方法をケイルは思い付かない。
この都市はケイルにとって未知な部分が多く、地理に詳しくなかった。
地形を利用しようにも利用できる場所すら分からず、ケイルはただ目の前に立つ
そうした状況の中で、ケイルはある出来事を思い出していた。
それはアズマ国に渡り、修練を受けていた頃。
十歳になったケイルが『表』の修練を終え『裏』の修練に入る時、師匠となった男にこんな話をされた。
『――……
『え? ……そんなの、こう……じゃないですか?』
『ふむ。両手で掴み、上から振り下ろす。それが強いと思うか?』
『違うんですか?』
『確かに、そう振られる剣は強い。例え兜を身に着けていたとしても、脳天を叩き割れば兜は完全に割れずとも、
『だったら……』
『だが、その振り方は大振り過ぎて隙が出来る。もしお前が儂に対してそう振れば、その隙を逃さずに儂は斬り返すだろう』
『いや、だって。師匠は
『そういう話をしておるのではない』
『じゃあ、強い剣の振り方ってどうやるんですか?』
『すぐ答えを求めたがるのは、お前の悪い癖だ。自分で考えてみろ』
『……』
『……しょうがない。
ケイルの師匠は目の前で、強い剣の振り方を教える。
それを見た幼い頃のケイルは、眉を顰めて怪訝そうな表情を浮かべた。
過去の記憶を思い出したケイルは、横から狙い撃ってくる
瓦礫を飛び越えながら射線を外したケイルは、今いる場所の近くにある物を思い出した。
「――……そうか。確か、この近くだったな……」
ケイルは何かを閃き、視線を向けた先へ走り出す。
それを追う
そして周囲に残り地面へ突き刺さっている鉄骨を利用し、ケイルはそれを踏み台にして跳ぶ。
それと同時に後ろを振り返ると、
それを中空で見たケイルは、口元を微笑ませながら左腰に戻している魔剣の柄に右手を運び、技を瓦礫の地面へ放つ。
「――……トーリ流術、裏の型。『
『――……!』
ケイルは
四つの刃が瓦礫を菱形に大きく斬ると、足を踏み入れた
その崩落に巻き込まれ足を踏み外し落下した
その場所は地下施設の入り口があった場所であり、
『――……』
その視線の先には、中空から落下したケイルが右手に魔剣を持ったまま落下していた。
それを見た
それを防ぐようにケイルは小剣を左手で引き抜き、奥義で弾いた。
「――……トーリ流術、月の型。『
赤い小剣も夥しい量の
その勢いで落下速度が速まった
そしてケイルは落下しながら両手に大小の剣を持ち、
両方の剣は
更に自身の体重と落下速度を利用し威力を強めたケイルの切っ先は、装甲の更に深くまで突き刺さった。
『――……!!』
「……師匠の言う通りだった。最も強い剣の振り方は、『
ケイルは深く突き刺さった
すると深く突き入れられた
「――……トーリ流術、月の型。『
ケイルは身を翻しながら着地し、瓦礫の上に立つ。
そしてバラバラにした
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