【完結】虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました

逃亡編

逃亡編 序章：出会い

プロローグ

　とある国に、【虐殺者（スレイヤー）】の汚名を付けられた戦士がいた。

　齢は三十を超え、二メートル近い逞しい体格に恵まれた男。

　生まれは平民であり貧民。数字の計算は農民より出来ず、文字すら書く事が出来ず、背負う大剣と恵まれた肉体で戦う知識しか持てなかった。

　そんな男が【虐殺者】の汚名を着せられた。

　雇われた国から罪に問われ、男は逃げるように追跡者の手から逃れて国境を超えた。

　男の名はエリク。

　【虐殺者（スレイヤー）】という不名誉な称号を得た戦士だった。

*

　とある国に、【才姫（プリンセス）】と呼ばれた公爵令嬢がいた。

　齢はまだ成人を迎えた十六歳。

　華奢な体躯ながら国にいる誰よりも頭脳明晰であり、勉学や雑学含む、一定の知識は国の誰よりも高い少女。

　公爵家の長女として生まれ、公表された属性魔法を全て扱える才能もあり、帝国皇子と婚約を結び、将来は優秀な皇后となり、国を支える事を誰からも願われた。

　そんな【才姫（プリンセス）】と呼ばれた公爵令嬢は、自らの家と立場を捨て、国から逃げ出した。

　身に纏うのは旅装束、持つのは旅に必要な金銭のみ。

　少女の名はアリア。

　【才姫（プリンセス）】と呼ばれていた元公爵令嬢だった。

*

　そんな二人が国を境とする森で出会い、互いの事を話し、アリアはこう告げた。

「――……傭兵エリク。私の護衛として一生の間、雇われてくださらない？　護衛の御代は、出世払いでお願いしますわ」

　こうして出会ったエリクとアリアは、互いに安住の地を探す為に世界を巡る。

　この物語は、国に追放された戦士エリクと、国を見捨てた元公爵令嬢アリアが、共に世界を旅する中で互いの居場所を見つける物語。