5それぞれの体育祭と文化祭①~双子の場合~(1)

「どうして体育祭と文化祭が秋じゃなくて、入学早々の一学期にやろうとするのか謎だよね。これじゃあ、会って早々のイベント過ぎて、唐突感が否めないよ。まあ、体育祭と文化祭が一緒くたに行われるのも、なんとも言えないけど」


「仕方ないよ。うちは進学校だから、とにかく大学進学率が第一の高校だからね。とはいっても、同じ進学校でも、隣の高校は秋に文化祭も体育祭もやって、大いに盛り上がるらしいけど。体育祭と文化祭が一緒なのは、私もどうかと思うけど、現実問題、一緒にするしかないから、それは妥協する」


「本当の頭いい奴らは、いくらイベントごとに盛り上がろうとも、勉強に支障は出ないんだとよ。ほんと、頭のいい奴らがうらやましい。ああ、私も二つの行事が一緒なのはあきらめているよ」




「私は別にどっちでもいいけど。むしろ、面倒なイベントごとが一緒くたでいいと思うし、それが先に終わって楽だとおも」


『何言ってるの!』


 私たちはいつものように四人でお弁当を食べていた。話題は目前に迫っている体育祭と文化祭についてだった。陽咲と仲良くなった麗華は、私たちと一緒にはお昼を食べないらしい。まあ、彼女は目の前の三人に比べるとオタク度は低いので、話が合わないとかだろう。深く考えることはしなかった。


 通常、体育祭と文化祭は、高校生の一大イベントとされている。秋に行われることが多いイベントだが、私の高校は初夏の六月に行われることになっていた。なんでも、数年前までは秋に行われていたのだが、進学率上昇のため、初夏に移動になったらしい。それを嘆いているのが、目の前でお弁当を食べている三人組だった。そして、私の発言は彼女たちにとって、許しがたいものだったようだ。猛反発をくらってしまった。




「喜咲は、イベントごとの重要性をわかっていない。こんな六月のムシムシした時にやったら、せっかく盛り上がった恋人同士が可哀想でしょう。それに、出会いが早すぎる。もっと学校に慣れた時点でのイベントでないと、盛り上がりに欠ける!」


 陽咲がよくわからない理由で攻めたてる。


「わかってるねえ。ひさきっち。そうそう、これは大事なイベント。高校生活を彩る重要なイベント。それがこんな夏の暑い時期に行われてはならない!秋の涼しくなってきたころに、哀愁漂う感じで行われた方が、気分が盛り上がること必至!」


 すると、こなでが鼻息荒く陽咲を援護する。さらに意味がわからなくなってきたと思えば。


「まあまあ、落ち着きなよ。喜咲が困っているでしょう。あなたたち二人の気持ちはよくわかる。でも、だからと言って、喜咲を困らせても仕方ないでしょ」


「芳子……」


 芳子がこの意味不明な二人の暴走を止めてくれるかと期待した。しかし、彼女も腐った人間だった。


「二人が、体育祭と文化祭を一学期のこの時期に行うことが、いかに高校生活にマイナスなのかを説明していないことがいけないの。それがわかれば、喜咲も、先ほどの発言を取り消すでしょう」


『なるほど』


「いや、それは別にどうでもいいから、そろそろ別の話題にしよう。こんな不毛なことを話しているのは」




「わかった。私が喜咲の妹として、しっかりと説明して見せる!」


 芳子の発言により、体育祭と文化祭が一学期に行われてはいけない理由を聞く羽目になってしまった。すでにうちの高校は一学期の六月にやると決まっていて、覆すには、生徒の署名活動などの面倒な作業が必要なので、無理だということがわからないのだろうか。


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