Post-Quantum 狂想曲 前夜

某 匿名

第1話 ハードルが高い準備

 昔話をしよう.


 これは量子コンピュータが実用化されて,既存の暗号が危殆化しそうだといって,皆がどたばたしていた頃, 後に「ポスト・クァンタム狂想曲」と言われた時代のもう少し前の話じゃ. 米国NISTが耐量子計算暗号の標準化を発表し,日本では,政府推奨暗号の選定が終わり,各社の対応は遅々として進まず,そんな時代じゃった.

 量子計算オレオレ詐欺とか,暗号化資産の乱高下とか,ヘリウムの高騰とか,それに伴う酸化物高温超伝導素子の再評価とか,騒がしい時代じゃったのぅ.

 最近は光子系のマシンもずいぶん進化した.光格子型イオントラップも開発が進んでいるようじゃ.そういえば,日本の後藤先生から連綿と受け継がれた伝統技術の超伝導量子パラメトロン系も有望じゃ.

  最近は,個人用の量子計算機キットが通販で買えるらしい.8Qbitで酸化物高温超伝導素子で液体窒素生成装置付き. 運転を始めたら,ずっと冷やし続けないといかんらしい.冷却が切れると素子が昇天するそうじゃ.

 光集積回路のキットもあるらしい.太古のTK80キットみたいなもんじゃな.

 中国のジャンク屋では,量子コンピュータの試作品の基板が売れれているかもしれん.

 高性能のペルチェ素子とヘリウム冷却機とちょっと高温で動く素子ができれば,普及も早くなるじゃろう. 冷却機が要らない光集積回路の方が,有利化もしれん.


 ワシの口調が「のじゃ」だからといって,幼女では無いぞ. 正真正銘の棺おけに片足を突っ込んだ年寄りじゃ. 

 はて,何の話をしようとしていたのか・・・・・・

 そうじゃ,因数分解の話じゃった.歳を取ると,話が発散して困ったもんじゃ.


 この話を楽しむには,色々な条件がある. 注文の多いラノベじゃな. 条件を満たさないと,読むなというのじゃないんじゃが,たぶん,面白くないと思うんじゃよ. 自分でできないなら,PCや数学が得意な友達や,先輩や知り合いにやってもらうのでもいい.


 条件1.

 まず,宿題として, 次の更新までに,aRisaを読んでおくこと.

 これは,内閣セキュリティセンターやらJNSAがKakuyomuとコラボしたコンテストに投稿された作品じゃ. この程度が理解できないなら,あきらめたほうが無難じゃな.


 条件2.

 そこそこ大容量のメインメモリを備えた高性能のPCかワークステーションを使える環境にあること. Xeonとは言わんが,まぁ,最低限,8 core程度のCPUと最低32Gbyte程度のメインメモリは必要じゃろうな. 欲を言えば,メモリーは誤り訂正機能付きの方がいいじゃろう.

 数式処理系に対応したスパコンが使えれば理想的なんじゃが. スマホとか表計算なんぞは論外じゃぞ.


 条件3.

 中学卒業程度以上のの数学の知識があること.


 条件4.

 数式処理系をインストールしておくこと.  数式処理系上で,簡単なプログラミングができること.  いちいち使い方は説明したりせんから,HELPをよく読んで予習しておくことじゃな. なぁに,四則演算と積分変換とグラフ表示くらいしか使わんから,心配は無用じゃ.


 MapleとかMathematicaとかMaximaとかRとか色々あるじゃろう.

 多倍長の浮動小数計算で数十桁同士の四則演算ができて,結果をグラフに表示できれば十分なはずじゃ.

 使用期限付きの無料体験版とか,フリーのRとか,探せば,手に入るはずじゃ. アカデミック版は比較的安いし,大学の研究室のマシンにインストールしてあるかもしれない. Wikipedia(日本語)で探してみるとええじゃろう.

 数式処理系は,数学が苦手とか計算が面倒とか数学は難しいとかいう障害を,一気に取り払ってしまう環境じゃ. 超高級電卓という見方もあるのじゃ. 何しろ,式のままで,微分,積分,微分方程式が解けたり,信号処理ができたり,相対性理論が式のままで扱えたり,ブラックショールズ方程式を扱えたり. 数学を教えている先生(小,中,高)の天敵のようなソフトなのじゃ. なにしろ,理解していなくても,短時間で数学の宿題が解けるのじゃから.


 条件5.

 そして,短気で心が狭い人には,お勧めしないぞぃ.


 これだけ読者に制限をつけて,読む人はおるんじゃろうか?


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 ※ 製品名等は,各社の登録商標じゃ.

 ※ aRiSA https://kakuyomu.jp/works/1177354054886114301


 参考文献じゃ 読めとは言わんから安心せい

 1). Arto Salomaa(足立暁生 訳), 公開鍵暗号系 東京電機大出版局, 1992年

 2). 和田秀雄【改訂版】コンピュータと素因数分解, 遊星社 1999年

 3). 木田祐司, 牧野潔夫, UBASICによるコンピュータ整数論, 日本評論社, 1994年

 4). 岡本栄司, 暗号理論入門(第2版), 共立出版, 2002年, pp. 106

 5). S. C. Coutnho, (林彬 訳), 暗号の数学的基礎, シュプリンガーフェアラーク東京,   2001年, pp.231

 6). 森山大輔, 西巻陵, 岡本龍明, 公開鍵暗号の数理, 共立出版, 2011年

 7). 結城浩, 新版 暗号技術入門, ソフトバンククリエイティブ, 2008年

 8). Kazumaro Aoki et al, "GNFS Factoring Statistics of RSA-100, 110, . . .,1501" ,Cryptology ePrint, https://eprint.iacr.org/2004/095, 2004

 素因数分解技術の進展-RSA-768 の分解達成への道のり-

 https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=70175&file_id=1&file_no=1

 9) 光成滋生, クラウドを支えるこれからの暗号技術, 秀和システム, 2015

 10)cryptrec http://www.cryptrec.go.jp/ 報告書 多数

 11)https://csrc.nist.gov/projects/post-quantum-cryptography/post-quantum-cryptography-standardization

 12) 後 保範 (Ushiro Yasunori) http://ushiro.jp/

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