第74話 いつもの男子を気になり始めたキッカケを思い返してみた②
期末テスト期間も終わり、全教科の答案も返却された終業式前日――。
何度考え直しても、やっぱりヨッシーに告白する決意は全く揺らがなかった。
テスト期間中は立ち寄らなかった校舎裏のベンチで今日は、お昼のたまごマヨぱんを食べてから、ヨッシーと雑談の真っ最中だ。
委員長も居るけど、校舎裏の野良猫たちをスマホで動画撮影している。
私は全教科の答案用紙を持ち寄って、いつものノリでヨッシーに絡んだ。
「ふっふっふ。中間テストの合計点では私の僅差で勝ちだったっけ?」
「確かそうだね、俺が負けてたはず。……といっても学年トップの委員長と違い、どんぐりの背比べって感じではあった気がする」
「あはは、中の中って感じだったもんね~。でも期末テストはお互いどうだろ? ここは一つ賭けをしようよ~。合計点で負けた方が隠し事を一つ白状するとか!」
ヨッシーの性格なら、絶対この面倒臭い提案にも乗ってくれるはず。
このくらいの予想が外れるくらいなら、それこそ告白することを諦めても良い。
「それは別に良いけど……二宮さん、何だか凄い自信だね?」
「いやあ、委員長の予習ノートには助けられたからね~。私は勝つ自信があるし、負けたら負けたで、ヨッシーに一つ伝えても良いことがあるんだ~」
予想通りヨッシーは提案に乗ってくれたし、合計点も私が勝ってるはず。
ベンチに座ったまま答案用紙を見せ合いっこして、お互いに点数を確かめる。
「やっぱり委員長の予習ノートの効果は凄いな。俺たち二人とも、中の上レベルの点数を取れちゃってるね。そんなに勉強した訳じゃないんだけどな」
「委員長、恐るべしだよね~。全教科、平均点を上回るなんて私の人生初だもん。え~っと、合計点は……」
暗算で合計点を考えるのは難しいと思っていたところに、野良猫を撮影し終えた委員長が、ベンチの上に広げられた答案用紙を一瞥した。
「二宮さんの勝ちね。本当に僅差、一点差で二宮さんが勝ってるわ」
「え……マジか、委員長。ぱっと見で暗算したの? 神業すぎないか?」
「ぱっと見と言うほどではないけど、何秒かあれば頭の中でね」
委員長の早業にヨッシーが唖然としてるけど、私は全く違う理由で茫然となる。
チャイム五分前に誤答に気付けたからこそ、ギリギリ一点差で勝ったんだ。
『告白相手を隠さず白状してね』とか言おうって回転させていた思考も停止した。
私から告白したら成功する――そんな前触れのように感じてしまったからだ。
落ち着くんだ私。それはただの自分の願望に過ぎないはずだから。
「一点差で俺の負けか……。終業式の後まで、隠し事は保留ってのはダメかな?」
「……うん。保留だね、良い……んだけど、あれ? 終業式の後??」
「ほら……その、二宮さん、終業式の日って放課後まで残ってくれるよね?」
ヨッシーからそう質問された瞬間「もしかして、私に告白してくれる?」という願望により近しい希望が、私の胸の奥でくすぶり始めてしまった。
「もちろんヨッシーと一緒に放課後は残るつもり~。すぐ帰ったりしないから」
嬉しい予感に決意が鈍ってしまう。違うぞ私。私から告白しないと後がないよ!
様子を見ていた委員長が、最後の最後にこんなことを口にした。
「ねえ二宮さん。私も明日の放課後は、どこか一人で時間潰ししておくから、何か報告したいことがあったら、RINEで連絡してちょうだい」
私は『慰めて貰うために呼んじゃうかも』と思いつつ、黙って笑みを返した。
こうして帰宅した私は、テストの合計点でもし負けてたら、あの場で言うつもりだった隠し事を、十中八九ヨッシーに知られていなさそうな裏アカで呟いた。
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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き
夏休みになったら家族全員で海外に行くから、
音信不通気味になるかもしれない~。
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