第54話 俺から陽キャ美少女に話しかけるとか難易度高過ぎないか③

「ちょっと真面目に質問したいんですけど、今してる発言って告白……かな?」


 コミュ障の俺でも分かる、決して冗談で答えるべきではない雰囲気が漂う。


 これまで一方通行で俺の意思表示が足りなかった。

 今こそ本心を言うべき時だろう。


「ああ、告白だ。今後もお話しさせて下さいという滅茶苦茶恥ずかしい告白だ」

「……ふっふふっ。残念、やっぱり好きって意味の告白じゃなかったか~」

「いや? 好きって意味だけど。二宮さん――」


 ――と話すの、楽しくて好きだから止めたくないんだ。


 そう言葉を続けるつもりだったが、座っていたはずの図書当番の女子が、いつの間にか本棚の影に隠れながら聞き耳を立てているのを見つけてしまい、思わず口が止まった。


 話半ばで俺の言葉は途切れてしまったが、立ち聞きしていた女子も二宮さんも、何故か頬が朱色に染まったままだ。


「だからこれからも、一緒に楽しく過ごしたいと思ってる。お願いできるかな?」

「えっ!? そのですね、思考が追いつかないけど……こ、こ、こちらこそ!」


 ……おかしい。何だか二宮さんとの会話が噛み合っていない気がする。


 視線の先からして、どうやら相方の図書当番の女子が聞き耳を立てていたと二宮さんも気づいたようだ。

 図書当番を長々とサボっている姿を見られて動揺したのかな。


 俺は立ち聞きしていた女子を手招きで呼び寄せ、当番サボりの口止めを試みる。


「今のやり取り、内緒にして貰えないかな。特に教師陣にバレると困るんだ」

「そ、そうですよね! 気になったとはいえ盗み聞きしてごめんなさい!」

「こちらこそ二宮さんを端に連れ込んで、色々と話し込んでしまって申し訳ない」


 図書当番の女子がぺこぺこと頭を下げながら、受付席へと戻っていったのを確認した二宮さんが、今までになく真剣な表情で俺に質問してきた。


「お互い思い違いがあったらいけないし……もう一回だけ確認しても良いかな? ヨッシーは確かに好きって意味で発言した。それで間違いないよね?」

「うん、間違いない。二宮さんと話すの、毎回楽しくて好きだぞ」

「……ぁぁっ」


 俺の回答を聞いた二宮さんは、逆転満塁ホームランを打たれてしまった投手さながらの絶望感に包まれた表情となり、そのまま膝から崩れ落ちる。


「うぅうぅう~……。も、もちろん嬉しいんですけど、そうじゃないぃ~!」


 本当に九回裏ツーアウトでサヨナラホームランを打たれたレベルで涙目の二宮さんだが、俺はというと明日以降も交流を続けられる喜びで、柄にもなく大きな笑みを零した。


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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き

 いつもの男子の奮闘ぶりが凄く嬉しかった!

 私も話すの楽しい! やっぱり好き!

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「二宮さんらしい呟きだ。本当に人と話すのが好きなんだな」

 個人的にはコミュ障がジタバタ足掻いただけという印象だが、二宮さんとしては行動で示されたのが嬉しかったようだ。

 俺も二宮さんと話すのは、やっぱり好きだ。

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