第16話 挨拶週間なる校内行事に、俺も陽キャ美少女も振り回される③
祝日を挟んだ翌々日、金曜日の朝。『朝の挨拶週間』最終日――。
俺は下手に策を練らずに二宮さんに挨拶をしようと決意。教室の扉を開いた。
すると火曜日の時のように、陽キャグループ女子たちが二宮さんの座る席を囲みながら楽しそうに談笑していた。
二宮さんと目が合った俺は一瞬躊躇したが、意を決して声を掛ける。
「み……みんな、おはよう」
陽キャグループの女子も集まっているのに、二宮さんにだけ挨拶をするのもおかしな話なので、コミュ障歴=年齢の俺としては一世一代の気合で挨拶をした。
極度の緊張により顔が熱いような胸とお腹の辺りが寒いような、心臓に悪い状態だが、俺からの挨拶を聞いた二宮さんが、いの一番に挨拶を返してくれた。
「ヨッシーにはよう!」
「お、おう? には……じゃなくて、おはよう」
遅れて二宮さんと談笑していた陽キャグループの女子たちも「よしやんおはー」と軽く挨拶してくれたので、徐々に緊張が解けていくのを感じながら、自分の席に着いた。
暫くすると二宮さんが俺の席にやって来たので、気になったことを尋ねる。
「さっき『にはよう』って、おはようと
「噛んじゃいました! ヨッシーの動向が気になって、緊張してたので!」
「俺も緊張してたよ。だから『にはよう』って言われて、少し狼狽えてしまった」
「日中友好の挨拶誕生ということで、良いじゃないかヨッシー」
「うん。『にはよう』って良い響きかもしれないな。お互い朝からお疲れさま」
こうしてコミュ障殺しの『朝の挨拶週間』は何とか乗り越えられたが、一時間目の授業が始まる前に、二宮さんが少し言うのを躊躇いながらも質問してきた。
「ヨッシーってさっきの挨拶を見る限り、女子慣れしてないと思うんだけど、委員長とは普通に話せてるよね~? 気になる女の子には意外と積極的になれちゃうのかな?」
二宮さんが何だか悪い笑みを浮かべながら、着席中の俺を肘でつついてくる。
恐らく委員長もそうだが、二宮さんも恋愛絡みの話は大好物らしい。
「その理屈で言うと、俺は二宮さんも気になっているということにならないか」
「た、確かに!? ヨッシーって私とも普通に話せるし……これはもしかして!?」
「いや、二宮さんはコミュ力高いから、俺でも気負いせずに話せるだけだぞ」
「ちょっと待って。ヨッシーの顔赤くなってない? さては動揺してるのかな?」
「これはさっきの挨拶で、あがり症の癖が出ちゃってるだけなんだが……」
「うむうむ、そういうことにしておこう♪」
すぐには顔の熱さが引いてくれないほど緊張する場面だったという証だが、二宮さんは言葉通りに受け取ってくれず、何故か嬉しそうに微笑むのであった。
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・この日の裏アカ【おしゃべり好きな宮姫@76danshi_UraakaJoshi】の呟き
いつもマイペースな男子が、赤面するのを目撃!
私の顔も赤くなかったか心配~。
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「こういう誤解をきちんと解けないのも、まさしくコミュ障って感じだな俺」
二宮さんの顔は赤くなかったはずだが『にはよう』が恥ずかしかったのだろう。
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