陽キャ美少女の裏アカを知ってしまったが、何故か俺の事ばかり呟いている
江戸夏日星
第一章 友人の間柄?
第1話 俺への距離感が近い陽キャ美少女の裏アカを偶然知ってしまう①
大人に「青春時代はいつ?」と尋ねれば、大方「高校生の頃」と答えるだろう。
何なら現役高校生に訊いても「青春? そんなの今っしょw」と返しそうだ。
……ただしクラスカースト上位層のリア充であれば、の話だが。
俺は
ノリが良いだの悪いだのというリア充たちの独自基準も理解できない。
先述のように「青春時代はいつ?」などと問われたところで「なにそれおいしいの」と即答してしまうような恋愛沙汰と無縁な男、それが俺だ。
休み時間はスマホ片手に、自分の好きななろう作家の更新作品を読んでダラダラ時間を潰すのが中学時代から慣れ親しんだ学校生活。これは高校入学後も変わらない――。
――そう思っていたのだが、高校生活では少しばかり変わってしまった。
今日も自分の席でなろうを読む俺に、一人の同級生があだ名で声を掛けてくる。
「ヨッシー前を見て! ほら、イイ女が立ってるよ~」
「うわ、びっくりした! 二宮さんか!」
自分のことをイイ女と言い切る陽キャな言動をした女子、彼女の名は
ぶっちぎりでクラスカーストの最上位に君臨する陽キャ美少女で、あまり校則が厳しくない高校とはいえ、生活指導員の指摘をどう言い逃れしているのか疑問な明るい亜麻色の髪に、部分パーマまで当てた超絶リア充JK――それが二宮さんだ。
どこのモデルだと言いたくなるような美貌に加えスタイルも良い二宮さんだが、実際に読者モデルをやっているらしいので、文句なしの外見レベルカンスト女子でもある。
二宮さんを見ていると『こんな美少女、現実にも居るんだな』と毎度感心してしまう。
「授業が終わったばかりなのに、二宮さんテンション高いね」
「そういうヨッシーはテンション低いなあ。ふっふっふ、いつものヨッシーだ♪」
二宮さんは俺をあだ名で呼びながら、小さく折り畳まれたノートの切れ端を机にそっと置いて、至近距離まで顔を近づけて囁いてくる。
「今日のブツは掘り出し物ですぜ、旦那」
ともすればキスが脳裏にちらつく距離感だが、この陽キャ美少女の常なので俺は特に動揺することなく、ノートの切れ端に書かれていた作品タイトルを呟いた。
「えっと……。なろう作品『所持金チート』?」
「なろうランキング上位しか目を通さないミーハーなヨッシーにかわって、私が仕入れたオススメの作品! 絶対に読んでね~」
「おお、読む読む。真面目にいつも助かるよ。ありがとう」
「お代はタダとは言わねえ、次に会う時に感想を用意しておく事だ……。じゃあね!」
そう言うと二宮さんは慌ただしく去っていき、クラスカースト上位層の女子グループの輪に交じっていった。
「さすがはコミュ力カンスト女子。俺みたいなコミュ障相手でもハイテンショントークで絡んでくるもんな」
真のリア充は案外アンテナの感度が良いと言うか、面白そうと思ったものなら何にでも突撃する癖があるらしく、高校入学当初はオタ知識皆無だった二宮さんも、今ではなろうラノベトークできるレベルになっているのだから、その吸収力たるや恐ろしいものだ。
「……まぁ、そんなリア充だから、俺みたいなヤツにも絡んでこれるんだろうな」
陽キャ美少女の二宮さんから教えてもらった『所持金チート』なる作品を検索しながら俺は再びスマホでなろうにアクセスする。
これがクラスカースト下位層たる俺の高校生活。コミュ障で地味男の生活だ。
二宮さんとの交流が途絶えるどころか深まるとは、この頃は思いもしなかった。
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