第126話 王の危機。止めれなかった王の暴走(ルック視点)
<プディの想い猫 ルック視点>
王様の力がどんどん、どんどん、小さくなっていく。
俺は全ての方達のパワーの量、感情の揺れが把握できる。
だから王様の状態がどんなに深刻か離れていても把握できた。
だけど、俺、一匹が駆けつけても、俺だけでは何もできない。
何もできないんだ。
パワーがあると言ったって肝心な時は何もできない。
閉じ込められていると思われているその部屋で、椅子に管でグルグル巻きにされたまま、自分の無力さに黒い長毛な身体を震わせていた。
『ルック』
その時プディちゃんが呟く声が聞こえてきた。
来た、プディちゃんがやっと到着したんだ。
ごめん。
俺はプディちゃんから想われていたのを、ずっと、ずっと知っていた。
そしてその気持ちを利用した。
何故か。
それは俺には幼い時から、ずっと好きな方がいたからだ。
******************
ホロロ姉ちゃんとの二匹暮らし。
俺達は貧しけど幸せだった。
その幸せが、目の前から取り上げられたのは俺がまだ幼く、そして、俺には他のモノ達にはない、とてつもないパワーがあったからだ。
ホロロ姉ちゃんの元から連れ去られて俺はある部屋で、管でグルグル巻きにされ椅子に括りつけられた。
俺はこれから、ずっとココに閉じ込められたままこの星の方達の感情の変化を見守り、反応以上のモノが居たらそれを伝えると言う仕事をさせられるらしい。
本当は俺のパワーを使えば。
この部屋から抜け出す事は簡単だった。
何故、それをしなかったか......。
今日もある時間に俺の部屋のドアは開かれる。
プディちゃんが来た時間の数時間後だ。
『う、うん。ル、ルック。入っても良いか?』
入って来たのは俺がココに囚われる事になった原因でもある王だった。
皆の前では横暴そのものである王。
だけど、王はずっと悩んでいた。
王は全てのモノに感情を出さない様に命じた。
それは何故か?
自分の力が少なかったからだ。
だけど王は争いを好んでいたわけではない。
自分の支配できる力の中で平和にこの国を治めようと考えたのだ。
俺も始めは王が恐かった。
昔は、王も俺に会う時も顔はこわばっており口調もきつかった。
だから、そう、気づくまで時間がかかった。
俺は少しずつ、少しずつ本当の王様の事を知っていったのだ。
本当は星の皆達の事を誰よりも考えている事を。
ただ不器用なだけだと言う事を......。
『王様、どうぞ』
俺の声を聞き、キョロキョロと周りを見渡す王様。
『王様、心配しなくても誰もいません』
王様が安心した様に俺の側に近寄ってきた。
俺が逃げ出せるのに逃げ出さない理由。
王様はこんな風に、俺の前だけ、弱い部分を見せる。
だから、皆が思うほど、この王様が悪い方ではないと俺は知っていた。
そして、ずっと緊迫した中で、星の平和を守ろうと、この方なりに考え、一匹で戦っている。
この方の唯一、表情を緩ませる事ができるのは俺の前だけだと言う事も俺は分かっていた。
自分の娘にも辛く当たってしまうのは、将来、自分の後を継ぐ為には強い心が必要だと思ったからだ。
****************
俺は自分の身体に巻きつけられていた管を引きちぎり、ずっと閉じ込められていたその部屋から走り出した。
地下室を目指して。
王様はパワーを集めていた。
直ぐに力を発揮でき、強力な力を持つ、『マイナスな感情』の力のパワーを。
俺は王様を止める事は出来なかった。
ずっと座っていた俺の足は上手く動かす事が出来ない。
少しずつパワーをつかいながら、ヨレヨレと階段の手すりにぶつかりながらも階段を下りる。
パワーの調節が難しい。
一歩下りるたび、手すりや階段そのものが壊れそうな程きしんだ。
なんとか階段を下りて俺は進むスピードを上げた。
俺が走る(少し浮いている)と同時に強風が吹く。
城の住猫達がそんな俺を見て表情には出さないが驚いていたのが俺には分かった。
早く、早く行かなければ!
王がマイナスのパワーを集める事には代償があった。
マイナスの感情は、マイナスの感情のパワーは身体を
そう、集めて、その集まったパワーを使えば使うほど、身体は
気づいた時にはもう遅かった。
王の身体を
そして、俺の声まで届かなくなった。
だけど俺は、俺だけは本当の王様を知っている。
あの王様に戻って欲しい。
その為にはプラスの感情。
温かい感情のパワーが必要だった。
プディを地球に行かせたのは、プディは俺を救う為だと思っている。
だけど本当は俺の好きな人。
プディちゃんの父親でもある。
王様の為だった。
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