第4話

 夏休み6日目。

 いつも、決まった時間に起きているせいか、今日もいつもの時間に起きてしまった。

 ポットにコーヒーを淹れ、自分のマグカップにそそぐ。

 現在時刻は午前6時半。

 エミリーが起きてくるのは、あと2時間ほどだろう。

 それまで暇なので、俺は近所の散歩に出かけた。




 散歩から帰ってくると、部屋から出てきたエミリーと、ちょうど出くわした。

「んー……、おはよう、ゆきや」

 寝ぼけた目をこすりながら、エミリーがそう言ってくる。

 今日も俺の彼女は、最高にかわいい。

「おはよう、エミリー。今、朝ごはんを作るから、ちょっと待ってて」

「うん……」

 エミリーはそういって、ダイニングテーブルについた。




「電気屋さんに行かない?」

 朝ごはんを食べた後、エミリーがそう聞いてきた。

「いいけど、何か買うの?」

「実はねー、新しいゲームソフトを買うの」

「また? 先週も買ってなかった?」

「なんか、新しいのが出るから。それを買いに行くわ」

 エミリーは、大のゲーム好きだ。

 平日、俺が学校に行っている間は、大体ゲームをしている。

 この前の、俺が宿題をやっている間、エミリーは部屋でずっとゲームをやっていたらしい。

「わかった。じゃあ、準備しようか」

「うん」

 とはいっても、俺は先ほどまで外に出ていたので、いつもみたいにエミリーの着替えを待つことになった。




「おまたせー」

 エミリーがリビングの扉を開けて入ってきた。

 今日のエミリーは、この前よりもいくらかラフな格好だった。

 黒のデニムパンツに、オーバーサイズの白Tシャツ、黒のショルダーバックを肩から下げていた。

「かわいいな」

「あ、ありがと。じゃあ、いこっか」

「おう」

 俺は、ソファーから立ち上がった。




 電気屋についたのは、午前十一時ほどだった。

 エミリーは、意気揚々として、電気屋のエレベーターに乗り込んだ。


 ここは、全国的に有名な家電量販店。

 最寄駅から、四駅ほどのところにあるので、俺たちはここをよく利用していた。


 エレベーターに乗り込むと、エミリーは、迷わず、7階。ゲーム・おもちゃ売り場のボタンを押した。

 7階につくと、エミリーは少し早足になりながら、ゲームソフトが並ぶ棚へ向かった。

 エミリーの後を追いかけると、【新作!】と書かれた棚を、とても真剣な表情で見つめるエミリーがいた。

「なぁ、エミリー。何のゲームを買うつもりなんだ?」

「……」

 どうやら、エミリーに俺の声が、聞こえていないようだった。

「おーい、エミリーさーん」

「……」

 エミリーは、ただ黙々と、モニターに流れるゲームのPVをずっと見つめている。

 なんだか、邪魔できない空気になってきたので、俺は一歩引いて、エミリーがゲームを決めるまで、待つことにした。




 あれから、大体1時間ほど経った。

「よしっ!」

 エミリーはそう言うと、3本のゲームソフトを手に取った。

「決まった?」

「うん、お待たせ」

 エミリーは満足げに、ゲームソフトを抱えていた。

 レジで会計を済ませた後、俺たちは電気屋を出た。




「ふー、ただいまー」

「あっつー、お茶お茶」

 今日は日差しが強いせいか、気温がとても高かった。

 体を冷やすために、エアコンをかける。

「はい、麦茶」

 エミリーがキッチンから麦茶を持ってきてくれた。

「サンキュ」

 そう言って、受け取った麦茶を一気に飲み干す。

 うまい。

 俺は、ソファーに座り込んだ。




 俺がソファーに腰を掛けてくつろいでいると、いつの間にかゲーム機を起動したエミリーが、買ってきたばかりのソフトを入れていた。

「さぁ! 幸也! 今日は徹夜よ!」

 とても可愛いドヤ顔でこちらを向いたエミリーは、うきうきしていた。

 普段、俺は全く夜更かしをしないのだが。

「まぁ、たまにはいいか」

「やった! 待ってて、今コントローラーを持ってくるから!」

 そう言って、エミリーは自分の部屋に入った。

「今のうちに、夕飯を用意しておこうかなー」

 普段しない夜更かし、ワクワクしてきた。

「うしっ!」

 夏休みはまだまだ、始まったばかりだ。

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